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第16話:ひとまず宿へ

「では、デレ―ト。今後の活躍に期待しているぞ」

「あ、ありがとうございました。失礼いたします」


 謁見が終わり、“陛下の間”から出てきた。

 俺の隣にいるのは、ミリタルとセンジさんとシーニョン。

 始めここに来たときよりメンバーが増えていた。


「じゃあ、俺はそろそろ宿に戻るとするかな。シーニョンはもう宿決まってるのか?」

「決まってるわけないだろ! ノーティスもなしに連れて来られたんだから!」


 シーニョンはさっきからずっと、ぶすーっとしている。

 そんなに顔に出すなよ。

 もう40なんだからさ。

 そして、ミリタルは眼中にないと言った様子で、俺の隣に控えている。


「おい、デレ―ト殿に向かって、その口の聞き方はなんだ! というか、ノーティスって意味わかんねえ! ちゃんと話せよ!」

「こ、こらっ、やめないか!」


 センジさんはシーニョンを思いっきりはたく。

 丁寧そうな人に見えたけど、めっちゃ厳しい人のようだ。

 と、思いきや、俺にはすごく優しそうな顔を向けてくれた。


「デレ―ト殿はどちらにお泊まりで?」

「下町に宿をとってます」

「なるほど、では途中までお供いたします」


 王宮から出て少し歩き、テルさんの宿に着いた。

 相変わらず、俺はここにお世話になっている。

 ミリタルが「シーニョンの視線がキモい」と言うので、シーニョンは先頭を歩かされていた。


「じゃあ、俺はここで失礼します」

「私も今日はこちらへ泊まることにする」

「承知いたしました。お休みなさいませ」


 ミリタルは今日も同じ宿か。

 彼女はたまにここで寝泊まりしていた。

 また一緒の部屋で寝かされるのかな。

 誓って言うが、断じて何もしていない。


「あっ、デレ―トさん! お帰りなさーい! 遅いじゃないですかぁ、心配しましたよぉ」

「ごめんごめん、ちょっと色々あってね」


 ガチャッとドアを開けたら、テルさんが出てきた。

 笑顔で俺の手をぐいぐい引いていく。

 嬉しそうなのはありがたいのだけど、とりあえず胸を押し付けないでほしいな。

 色々誤解されそうだから。

 ミリタルも不機嫌になるし。

 ……ん?

 後ろからギリギリギリ……という変な音が聞こえてくるような。

 なんだろうと振り向いたら、シーニョンがひたすらに悔しそうな顔で歯ぎしりしていた。


「なんでお前だけ美人と一緒にいるんだよおおおお!」

「は、はぁ? いきなりどうした」


 突然シーニョンがキレた。

 血管が切れそうなほど青筋が浮き出ている。

 お、おい、落ち着けって。


「僕もここに泊めろ!」

「え……いや、しかしだな……」

「こんな良い宿に泊まれるわけないだろ! お前の宿は川向うの馬小屋だよ!」

「ウチもお客さんみたいな汚いオジサンはお断りでーす」


 俺が何か言う前に、センジさんとテルさんが全力否定した。

 それを聞いて、シーニョンはなおもキレまくる。


「馬小屋だと!? ふざけるな! 僕はギルドマスターだぞ!」

「元、だろうが! 嘘吐いてんじゃねえ! さっさと歩け! 手間をかけさせるな!」

「だ、だから、叩くんじゃない!」


 シーニョンはセンジさんに連行されていく。

 連れて行かれる間にも、なんかずっとキレていた。


「宿泊料はフリーに決まってるだろな!」

「有料に決まってんだろ、クソ野郎! 一晩、銀貨一枚だよ!」


 我らがギルドマスター(元)は、センジさんに叩かれながらジャブジャブと川を渡らされていった。



◆◆◆(Side:シーニョン④)


「おらぁっ! ここがお前の宿だ、クソ野郎!」

「ぐあああ!」


 センジに蹴られ、思いっきり地面に転んだ。

 臭いし濡れてるし、膝はすりむくし最悪極まりない。


「せいぜい、馬たちに仲良くしてもらうんだな。早く宿泊料出せや、こら」

「ま、待て。ほんとに金を取るのか? こんな狭くて汚い馬小屋だぞ」


 当たり前だが、人が泊まるような場所じゃない。

 周りには馬だけだ。

 獣と糞尿の臭いでむせ返る。

 デレ―トの宿が心の底から羨ましかった。


「金が払えないなら、“タモンの森”に連れて行けと命じられている。モンスターどもに可愛がってもらうか?」

「わ、わかった! 金は払うから、それはやめろ!」


 モンスターがうようよいる森なんかより、こっちの方がまだマシだ。

 なけなしの銀貨を払う。


「お前が逃げないか一晩中見張っているからな」


 吐き捨てるように言うと、センジは馬小屋から出て行った。

 僕は一人ポツンと取り残される。

 こんな臭くて汚いところで寝られるわけないだろ。

 周りの馬どもは、心底迷惑そうな顔をしている。

 お前たちまで僕を馬鹿にするのか……許さんぞ。

 人間と動物の格の違いを見せてやる。


「おい! 貴様ら、もっと向こうに行け! 僕は偉いんだぞ!」


 怒鳴りつけてやったが、馬たちは微動だにしない。

 そして、次の瞬間には糞を蹴ってきた。


「うわっ! きたな! お、おいやめろ!」


 狭い室内では逃げ場もなく、あっという間に馬糞まみれになる。

 デレ―トは一つ屋根の下で美女(しかも2人)と朝までイチャイチャ。

 片や僕は糞まみれ。

 …………。


「なんで僕だけこうなんだよおおおおおおおおおおおお!!!」

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