表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】追放されたおっさん鍛冶師、なぜか伝説の大名工になる〜昔おもちゃの武器を造ってあげた子供たちが全員英雄になっていた〜  作者: 青空あかな
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/38

第15話:……弟子?(Side:シーニョン③)

「おい、離せ! 僕を誰だと思っている! 僕の人脈を駆使すれば、貴様らなんか一瞬で牢屋行きだぞ!」

「お前の人脈なんか知らねえよ! さっさと歩け!」


 リーテンで馬車に押し込められた僕は王宮に来ていた。

 今はセンジたちに抱えられるようにして歩いている。

 どうやら、このまま女王陛下の元へ連れていくらしい。


「いいか!? 僕をこんな目に遭わせてタダで済むと思うな! ネゴシエーションに応じない貴様らはゴミだ!」

「だから、何言ってんのかわかんねえよ!」


 このクソどものせいで、僕の服はしわくちゃになってしまった。

 覚えてろ、あとで訴えてやるからな。

 そのうち、重厚な扉の前に着いた。

 ふーん、ここが“陛下の間”か。

 ズズズ……と扉が開かれる。

 ケッ、女王陛下がなんだ。

 僕はリーテンの偉大なるギルドマスターだぞ。

 むしろ、僕の方が偉いと言っても過言ではない。


「女王陛下、失礼いたしますっ!」

「待ちくたびれたぞ、センジ。……ん? その男は誰だ?」

「リーテンの鍛冶ギルド、シーニョンでございます。おらっ! 前に出ろ!」


 押し出されるように玉座の前に連れて行かれる。

 この僕にこんな扱いをするなんて……後でぶちのめしてやる。

 だが、まずは女王陛下だ。

 ギルドマスターの威厳に跪け。

 怒鳴りつけようと女王陛下を見た瞬間、僕は固まってしまった。


 ――な……なんと美しいお方だ……。


 長い白銀の髪は幻想的に輝き、同じく銀色の瞳は見る者を引き込んでしまう。

 そのお顔だって、一度見たら忘れないくらいだ。

 まさしく、僕の運命の人……。

 赤い糸で結ばれている人と出会ったら、呼吸が荒くなるってホントだな。


「はぁ……はぁ……」

「……センジ。この気色悪い男を連れてきた理由を申せ。理由によっては貴様を処罰せねばならん」

「はっ! デレ―ト殿を探しにリーテンへ向かったところ、この男に【アマツルギ】を折られてしまいました!」


 ……は?

 おい、使者。

 お前は何を言っているんだ?

 だから、あれは事故だろ!

 そんな言い方をしたら僕が悪者に聞こえるじゃないか。

 センジは予期せぬ事故により折れてしまった【アマツルギ】を差し出す。

 それを見ると、女王陛下は恐ろしい顔になった。


「……詳しく話せ」


 ほら、女王陛下も怒っているだろ!

 そりゃそうだ。

 自分の伴侶となるべき男が悪く言われたのだから。

 さ、きっちり弁明してもらおうか。


「リーテンにデレ―ト殿はおらず、私は混乱しました。そこで現れたのが、このシーニョンです。ギルドマスターだからすぐに直せる……という、この男の甘言に騙されてしまいました。誠に申し訳ございません」


 センジはうなだれながら告げる。

 おいおいおい、何言ってるんだ。


「聞いた話だと、30年ギルドに勤めながら一度も槌を持ったことすらないとか。無能を見抜けなかった私の責任でございます……」


 だ、だから、それは言うなよ!

 護衛たちに抑え込まれているとき、つい口を滑らして言ってしまったのだ。


「ふむ……センジよ。貴様は有能だが、今回の件に限っては無能だったな」

「申し訳ございません、女王陛下。覚悟はできております」


 女王陛下は別の使用人から何かを受け取る。

 鞭だ。

 そして、センジは四つん這いになる。

 な、なんだ?


「わらわは無能が嫌いだと知っているだろう!」

「ああああ!」


 パァン! とセンジは鞭で叩かれた。

 そのまま、ズパパパパ! と尻を重点的に叩かれる。

 な、なにが起きているんだ。

 そして、センジはなぜか嬉しそうだ。

 こ、この男はいったい何者……。


「さて、シーニョン。貴様のようなホラ吹きは見たこともない」


 女王陛下はすぅぅ……と僕を見る。

 先程までの美しいという感情は消え去り、もはや恐怖しかなかった。


「国宝の剣を折るギルドマスターなど聞いたこともないわ! このたわけ!」

「ああああ!」


 鞭で全身を叩かれる。

 激しい痛みでおかしくなりそうだ。

 な、なぜ、こんなことになった……。

 いくら考えてもわからん。


「タイミングの良いことに、今日はデレ―トを呼んでいる。もうじき、この場に来るだろう」

「デ、デレ―トが……?」


 息も絶え絶えに呟く。

 なんであの無能が。

 まるで信じられん。


「つい先日、デレ―トを国軍の専属鍛冶師に任命した。このレベルの武器を造れる者はそうそういないからな」

「…………え?」


 女王陛下の口から、ありえない言葉が出てきた。

 国軍の専属鍛冶師なんて言ったら、国内最高峰の地位だ。

 リーテンのギルドマスターなど足元にも及ばない……。


「そして、貴様はリーテンのギルドマスターを解任する。己の無力さを反省しろ」


 さらに告げられたのはクビ宣言。

 ギルドマスターを解任……?

 あんなに根回しを頑張って出世したのに?

 おじゃんになった?

 一番大切な地位を奪われて、精神に大きなヒビが入る。


「なんでええええ!」

「おい、この大馬鹿者を静かにしろ!」

「「こらっ! 女王陛下の前だぞ!」」

「ぐああああ!」


 すぐさま屈強な護衛たちがのしかかってきて動きを封じられた。

 肺が圧迫される。

 く、苦しいだろうがよ。


「ちょうどデレ―トが来たようだ。このたわけは部屋の隅に置いておけ」


 女王陛下の一言で、ズルズルと引きずられていく。

 クソッ、クソッ!

 怒りの矛先をどこに向ければいいのかわからず、悪態を吐くしかなかった。

 精神がぐちゃぐちゃになっていると、デレ―トが入って来た。


「よく来たな、ミリタル。そして、デレ―ト。わらわもそなたたちに出会えて喜ばしい」

「はっ! 陛下もお変わりないようで!」

「デ、デレ―トでございますっ!」


 おい、誰だよ、その美人は!

 デレ―トは若くてキレイな女性を連れている。

 さらさらのブロンドヘアにサファイヤみたいな蒼い瞳、スラリとした肢体は目が釘付けになる。

 そんな美人見たことないぞ。

 片や、俺の隣にいるのはむさ苦しい男たち。

 この差はなんだ!


「デレ―ト、そなたの造った【カミナ】は誠に素晴らしい。わらわも深い感動を抱いた。わらわが認める、そなたは国一番の鍛冶師だ」

「あ、ありがたき幸せっ」


 はぁ!?

 デレ―トが国一番の鍛冶師!?

 ふざけんな!

 見下していたヤツが目の前で褒められ、猛烈な怒りが湧き上がってくる。

 僕のときとは打って変わって、女王陛下はすこぶる優しい。

 あまりの反応の違いに、体中の血が沸騰するかと思った。

 その後もデレ―トは褒められ、僕は罵倒される。

 しかも、妖精みたいな美人の前で、だ。

 これほどまでに屈辱的な気持ちになったことはない。


「この者をそなたの弟子としてくれないか?」

「……え? シーニョンを弟子に……?」


 そして告げられた女王陛下の言葉に、僕はとうとう気絶しそうになった。


 ――こ、この僕が……デレ―トの弟子だと……? しかも女王陛下の命で?


 ふざけるな!

 それだけは認めてなるものか!


「お待ちください、女王陛下! こんな無能にイニシアチブを与えないでください! 僕のコンセンサスは取れていません……ああああ!」

「黙れ! 無能はお前だ! まずはその話し方を直せ! 意味が分からんわ!」


 鞭でめった打ちにされ、心も体もズタズタになる。


 ――ずっと見下していた男の下で修行する……。


 ものすごい屈辱感で頭が割れそうだ。

 だが、鞭で叩かれることを考えると、恐ろしくて何も言えない。

 脳がぐちゃぐちゃになるほどの怒りを、僕は必死になって抑え込むしかなかった。

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


少しでも

・面白い!

・楽しい!

・早く続きが読みたい!

と思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!


評価は広告下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にタップしていただけると本当に嬉しいです!

ブックマークもポチッと押すだけで超簡単にできます。


何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i000000
― 新着の感想 ―
なんでゴミの面倒まで見なきゃならんねん
[一言] 自意識が過剰過ぎませんか? 一国のトップとたかがギルドのトップ、どっちが上かなんて子供でもわかるでし分かるでしょ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ