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第14話:謁見と謎の再会

「準備はよろしいですか、先生?」

「あ、ああ。できれば、あと1年ほど気持ちを落ち着けたいところだが……」

「冗談を言わないでください」


 今、俺はめっちゃ威厳のある扉の前にいた。

 隣には虚空を睨んでいる兵士が二人。

 一目で“陛下の間”だとわかる。

 他の扉と明らかに違うからな。

 というか、女王陛下ってどんな人なんだ。

 ……ミリタルに聞いてみるか。

 事前情報は大事だぜ。


「ね、ねぇ、ミリタル。女王陛下ってどんな方なの?」

「そうですねぇ。一言でいいますと、“有能に優しく無能に厳しい”……です」

「……なるほど?」


 なんだよそれ、こえー!

 聞かなきゃ良かったわ。


「では、行きましょう、先生」

「は、はひっ」


 衛兵は眉一つ動かさず扉を開ける。

 今気づいたが、この人たちもめっちゃ怖い。

 め、目だけで俺を見ているぞ。

 ミリタルの後を歩き、玉座の前についたら緊張がマックスになった。

 女王陛下――セレナーデ・グロッサ様が座っている。

 いや、当たり前なんだが。


「よく来たな、ミリタル。そして、デレ―ト。わらわもそなたたちに出会えて喜ばしい」

「はっ! 陛下もお変わりないようで!」

「デ、デレ―トでございますっ!」


 女王陛下は初めて見たが、とんでもなく美しかった。

 透き通るような銀色の長い髪と眼は、それ自体が星のように輝いている。

 シュッとした鼻筋だって、まるで偉い精霊のようだ。

 座高も高くて、全身から威厳があふれ出ている。


「デレ―ト、そなたの造った【カミナ】は誠に素晴らしい。わらわも深い感動を抱いた。わらわが認める、そなたは国一番の鍛冶師だ」

「あ、ありがたき幸せっ」


 ま、まさか、女王陛下から褒められるとは。

 これはものすごいことだ……恐れ多さと嬉しさとで心がいっぱいになる。

 というか、俺の知らないところで、女王陛下は【カミナ】を見ていたってことだよな。

 なんて恐ろしいんだ。


「ナナヒカリの件もご苦労だったな。わらわも視察に出ており対応が遅れてしまったのだ」

「あ、いえ……俺は自分にできることをしただけでして……」


 しかし……これは、好印象なのか?

 ミリタルの“無能に厳しい”という言葉が脳裏にこびりついていて、少しも気が抜けない。


「そなたは【シンマ】の製作者でもあったのだな。こんな逸材を見つけられなかったとは、わらわの目も曇ったものだ」

「そ、そのようなことはないかと存じます。女王陛下のお瞳は、全く曇りない宝石のような眼でございます」


 失礼のないように……と意識し過ぎて、よくわからん返答になってしまった。

 い、今の発言で無能になっちまっただろうか。


「ふっ、そなたは鍛冶はできても、女性の扱いはそこまでではないようだな」

「あ、いや! それについては本当に申し訳なく思っておりまして!」


 女王陛下は笑うのだが、美しすぎて恐ろしい。


「さて、今日はそなたが造った【アマツルギ】について話がある」


 なんだそれは。


「ア、【アマツルギ】……ですか? 申し訳ありません、なんの話でしょうか」

「なんの話って、そなたが造った剣ではないか」

「申し訳ございません。本当に何もわからず……」

「まさか忘れたわけではあるまい。……まぁいい。お前たち、持ってきなさい」


 女王陛下が言うと、これまた聖女みたいな召使いの人たちが高そうな箱を持ってきた。

 静々と開けられ、見たこともない剣が出てきた。



【天使の宝剣:アマツルギ】

ランク:S

属性:聖

能力:天界の存在を降臨させ、その身に宿すことができる。現世と天界を繋ぐことができる至高の宝剣。



 なんだこれは。

 あまりの美しさに目が眩む。

 まるで聖女の祈りを具現化したような剣だ。

 天界から持ってきたと言われてもおかしくないんじゃ……。

 でも、真っ二つに折れてしまっている。


「訳あって破損しているが、これは国宝に認定されている。そなたが造った剣ではないか」

「え……」


 女王陛下から、この剣の経緯を聞いた。

 俺の造った剣が進化したぁ?

 えええ、またかよ。


「まさかそんなことが……」

「そなたは自覚もなしにこのような宝剣を造りおったのか! 面白い男だ! はっはっはっはっはっ!」


 女王陛下は顔を上げて高らかに笑う。

 しかし、次の瞬間にはおっかない真顔に戻った。


「話というのは他でもない。【アマツルギ】の破損の件だ」

「は、はぃ……」


 すぐ壊れる剣を造りやがったな、ってことだろうか。

 どうやって弁明すればいいんだ。

 

「おい、あいつを連れてこい」

「「承知しました」」


 しかし、予想に反して責められなかった。

 今度は筋骨隆々な人たちが、部屋の隅から誰かを抱えてやってくる。


「この愚か者が破壊したのだ。できもしないのに、ギルドマスターだからと無理やり修理を強要したようだ」

「え……? シーニョン?」


 連れられてきたのは、リーテンにいるはずの意識高い系ギルドマスターだった。

 いつもの意識の高さは鳴りを潜め、なんかぐったりしている。

 ど、どうした?

 というかシーニョンが破壊したって、何があったんだ。


「このたわけは国宝を直せると嘘を吐き、わらわの使者を騙したのだ。槌を握ったことすらないのにな」

「も、申し訳ございません……女王陛……ああああ!」

「謝るくらいなら初めからするな!」


 シーニョンはパァン! と鞭で叩かれる。

 女王陛下こえええ。

 そのまましばらくめった打ちにされ、シーニョンはボロボロになった。


「そこで、デレ―ト。そなたに頼みがある」

「はっ! 何でしょうか!」


 頼みと言われ、すぐさま女王陛下の前に膝まづいた。

 少しでも失礼な態度をとったら命はない。


「この者をそなたの弟子としてくれないか?」

「……え? シーニョンを弟子に……?」


 マジか。

 予想外も甚だしい頼みごとだった。


「いかに自分が愚かな人生を送ってきたか、鍛冶を通して知らしめることとした。……協力してくれるか?」

「わ、わかりました。私としましては何も問題はございません」


 やっぱり、シーニョンは仕事ができなかったんだ。


「お待ちください、女王陛下!」


 突然、ぐったりしていたシーニョンが叫ぶ。


「こんな無能にイニシアチブを与えないでください! 僕のコンセンサスは取れていません……ああああ!」

「黙れ! 無能はお前だ! まずはその話し方を直せ! 意味が分からんわ!」


 また鞭でめった打ちにされていた。

 考えなくてもわかるだろうに……。

 意識が高いシーニョンは、こんなときでも意識が高いらしい。

 いったい何をやっているんだ、こいつは。


「そして、シーニョンの監視役としてこの者をつかせる。わらわの部下、センジだ」

「センジでございます。どうぞよろしくお願いいたします」

「あっ、こちらこそよろしくお願いします」


 玉座の後ろからそっと出てきたのは、ザ・使者といった服装の男性だ。

 俺を見ると、丁寧にお辞儀してくれた。

 と思いきや、シーニョンをそれはそれはキツイ目で睨む。


「失礼なことがあったら私が躾ますので、どうぞご安心ください。デレ―ト殿には少しの迷惑もかけませんので」

「は、はい」


 ということで、我らがシーニョンは俺の下で修行することになった。

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