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第10話:惨めに逃げ返りな、オッサン(Side:ナナヒカリ①)

「ったくよぉ! なんてことをしてくれたんだ! クソオッサンが! ……おい、腕の状態はどうなっている!」

「で、ですから、ジッとしていてくださいと……」

「ぁあ!?」

「な、なんでもございません。申し訳ございません」


 屋敷に着いた俺は、すぐに専属の医術師の治療を受けていた。

 無論、デレ―トとかいうクソオッサンに折られそうになった腕だ。

 俺でなきゃ死んでたね。

 あいつのせいで赤くなった腕も、俺の身体の類まれなる治癒力によってどうにか元通りになっている。


「やはり……お怪我はされていませんね。骨はもちろんのこと、筋肉にも皮ふにも問題はありません。至って健康そのものでございます」

「だから、何度も言わせるな! あいつを訴える証拠を見つけろって言ってんだよ!」

「そ、そんな無茶な……」


 俺を殺そうとしたあいつは絶対に許せない。

 何が何でも復讐してやるつもりだ。 

 しかし、この無能の医術師は証拠がない、などと抜かしている。


「証拠が見つからないのなら、お前を先に訴えるぞ!」

「も、申し訳ございませんでした、ナナヒカリ様! どうかそれだけは……がはっ! ひいい、お助けを……!」


 飾ってあった棍棒のレプリカで医術師を殴りつける。

 チッ、本物じゃないのが残念だぜ。

 ボロボロになった医術師は脱兎のごとく逃げて行った。


「さーって、さっそく始めるかぁ」


 医術師が消えたら、パチン! と指を鳴らして召使いどもを呼ぶ。


「「お呼びでしょうか、ナナヒカリ様」」

「おい、国内大手の鍛冶ギルドに一流の剣を造らせろ。屋敷にあるSランク素材を使ってな」

「「承知しました。直ちに手配いたします」」


 命じると使用人どもは慌ただしく動き始める。

 フェルグラウンド家の跡取りである俺が剣など造るわけない。

 槌なんか握るものか。

 国宝級の腕が汚れるだろ。

 だから外注するのだ。

 とはいえ……まぁ、素材くらいは選んでやるか。


「ちょっと待て。素材は一度ここに持ってこい。俺が厳選してやる」


 使用人どもは、フェルグラウンド家の貴重な品々を持ってくる。

 どれもこれも王宮の金庫に保管されていてもおかしくないアイテムだ。

 その中でも特に、選りすぐりの素材を選び抜いた。



【フルメタル】

ランク:S

属性:無

説明:最高純度の頑強な鉄を含んだ鉱石。これが採れる鉱山は世界中で3箇所しかない。



【雷神石】

ランク:S

属性:雷

説明:砕くと落雷のような音が聞こえるほど、豊富な雷属性の魔力が込められている。



【アースドラゴンの逆鱗】

ランク:S

属性:土

説明:大地の主と言われるアースドラゴンの逆鱗。これが混ぜ合わされた得物は、あらゆる防具を一閃の元に斬り伏せる。



【プラチナ剛】

ランク:S

属性:無

説明:魔族領との国境にある酸の海に1週間沈めても溶けない金属。世界一の耐腐食性を持つ。



【永炎煌石】

ランク:S

属性:炎

説明:この石同士を叩き合わせてつけた火は、千年間消えなかった逸話を持つ。



 よし、こんなもんでいいだろう。

 これだけあれば最高品質の武器が出来上がるはずだ。


「「ナナヒカリ様、こちらでよろしいでしょうか……?」」

「さっさと手配しろってんだよ! Sランクの剣を造らせろ!」

「「しょ、承知いたしました、ナナヒカリ様」」


 使用人どもを怒鳴りつけると、ようやく素材を運び出した。

 やれやれ、使えないヤツらだ。

 しかし、デレ―トとか言うクソジジイに負ける気はしないね。

 あいつが使えるのはDランク以下の素材だけ。

 片や、こっちは全てSランク。

 俺が勝つのは決定事項だな。


 ――勝負は始まる前から勝敗をつけておくもの。


 まったく、自分の策士っぷりが怖いぜ。

 っと、そうだ。


「おい、エージェン!」

「お呼びですか、ナナヒカリ様」


 呼んだのはエージェン。

 つい最近、屋敷に入ってきたメイドだ。

 黒髪を後ろで団子のようにまとめ、カラスのように黒い瞳をしている。

 美人なことは美人なのだが、どんなときも感情が見えない。

 そう、まるで人形のように。

 その薄気味悪さから、俺は深く関わらないようにしていた。

 まぁ、有能なので便利ではある。


「このことは父上と母上には言うなよ」

「もちろんでございます」


 父上と母上は、ちょうど屋敷にいない。

 素材を使ったことがバレるとまずいので、念のため口止めしておく。

 これでもう安心だ。

 その後、鍛冶ギルドから何かの手紙が送られてきたが、面倒なので読まずに捨てた。



□□□



 10日後、造らせた剣が届いた。

 頼んだのはグロッサ王国でも1,2を争う鍛冶ギルドだ。

 きっと、世界一の名剣ができているだろう。

 律儀なことに、ギルドマスターが運んできた。

 まぁ、あれだけ高価な素材を渡してやったからな。

 当然の対応とも言える。


「おい、ギリギリまで待ってやったんだ。良い剣ができているだろうな?」

「え、ええ、それはもう……」


 だが、予想に反してギルドマスターは歯切れが悪い。

 なんだ?


「さっさと見せろ」

「は、はい……」


 ギルドマスターは震える手で箱を開けた。

 中から現れたのは国宝に認定されてもおかしくないほどの大名刀。



【ソリッドソード】

ランク:A

属性:無

能力:頑丈な剣。一般的なモンスターなら力負けしない。



 ではなかった。


「……は? なんだよ、これ……」


 箱から出されたのはAランクの剣。

 何の属性すらない。

 下手したら、そこら辺の店で売っているような代物だ。


「なんでAランクの剣なんだ! 属性すら無いじゃねえか!」

「期間が足らず、これで精一杯でした……」

「精一杯でした、じゃねえよ! ふざけんな!」

「す、すみませんっ! Sランクの素材は加工も難しく……すぐにお手紙をお出ししたと思いますが……」


 手紙?

 ああ、俺が破り捨てたヤツか。


「知るかそんなの! やれと言ったらやりやがれ!」

「ぐああああっ!」


 蹴って殴って滅多打ちにする。

 ボロボロになったギルドマスターは、惨めに横たわっていた。


「チッ、さっさと出て行け。無能がよ」

「お、お待ちください」


 自室に戻ろうとしたら、ギルドマスターが俺の足首を掴んできやがった。

 なんだこいつは。


「離せよ、汚ねぇだろうが。まだ痛い目に遭いたいのか?」

「ナ、ナナヒカリ様……お代の方をいただいていないのですが……」

「お代……? なんだそれ」

「え……あ、あの、もちろん【ソリッドソード】の代金のことでして……」


 ギルドマスターはおずおずと口にする。

 代金……?

 調子に乗るんじゃねえぞ。


「依頼を達成してないのに払うわけないだろ! そんなに金が欲しいならお前の命で払ってやるよ!」

「うわぁっ! なんて危ない人だ! も、もう二度と依頼を受けないぞ!」


 【ソリッドソード】を振り回していると、ギルドマスターは大慌てで逃げて行った。

 ったく、苦労をかけさせるんじゃねえよ。

 だが……まぁ、いい。

 どうせあいつはDランク以下の素材しか使えないんだ。

 ろくな剣が造れるはずがない。

 勝利が決定している勝負なんて、楽しくて仕方ないなぁ、ひゃははは。

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


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