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【連載してます】最恐の邪竜に転生しました〜人々から恐れられてますが、人間の勇者に一目惚れしてしまいました!?〜

作者: 藤井春樹

連載版もあります!

竜撃魔法ドラゴニックマジック竜の伊吹(ドラグブレス)!!!」


 たった今、1つの人間の国を魔法1撃で消し炭にした怪物、邪竜『ファフニール』。

 ファフニールは、全長が100mを優に越す始原竜だ。

 ファフニールは誕生してからの5000年間に渡り、人間の国、エルフの国、魔族の国、時には同族である竜の集落までも消し飛ばしてきた。

 様々な種族の集落を消し炭にしてきた理由は様々だ。

 喧嘩をふっかけられたから、自分の思うようにならないから、ストレス発散などなど。


 ファフニールは300年周期で大きな睡眠を取る。

 それ故に、睡眠中のファフニールには絶対に手を出してはならないというのが、この世界の常識だった。

 もし寝ているファフニールに手を出そうものなら、ファフニールの怒りを買い、その者の国、集落もろとも消し炭にされるからだ。

 故にファフニールは天災、邪竜と恐れられてきた。




◇◆◇




 ファフニールは全世界の敵だ。

 そんなファフニールを討つべくして行動に移したのは人間だった。

 もはやこの世界の者ではファフニールを倒す事は不可能。

 そう考えた人間達は、異世界から人間を召喚するという方法を選んだ。

 人間達は、約1000人の国民を生贄にし、異世界、日本から5人の人間を召喚する事に成功した。

 1発で成功させる事ができたのは奇跡に等しかった。

 

「ああ、異世界より舞い降りし勇者達よ。我らの世界を救いたまえ!」


 異世界召喚をしたリントラージ帝国皇帝、ルイドラスは泣き崩れながら勇者達5人に懇願した。

 当然、異世界から召喚された勇者達が瞬時に物事を理解できるはずもなくーー


「ち、ちょっと待ってください!い、いくらなんでも、状況がいきなりすぎます!もっと詳しい説明をしてください!」


 勇者達の中の、日本では学級委員をしていて、いつもクラスの中心にいる上村俊介うえむらしゅんすけが意見を口にした。

 この状況下で、咄嗟に質問をする事が出来るあたり、流石は学級委員とでも言うべきなのだろう。


「あ、ああ。確かにそうだな。ここは、其方達からすると異世界に該当する。名をレイオットという。そして、この地はリントラージ帝国という。そして私が皇帝、ドルドティス・リントラージである。この世界にはファフニールという、魔法一撃で国を容易く消し飛ばし、海を消滅させ、大陸を消滅させ、天変地異までもを操る世にも恐ろしい邪竜がいる。もはやこの世界の理にハマっている我々では奴を討つ事はできない。そこでだ。この世の理から外れた存在。つまりは異世界人。つまりは其方達の力で奴を滅ぼしてほしいのだ。身勝手なのは重々承知だ。頼む、この通りだ。その力でこの世界を救ってくれ」


 皇帝ルイドラスは勇者達に対して深々と頭を下げた。


「俺は嫌だぞ!勝手に異世界なんざに連れてこられた上に、勝手に命賭けろって言われてどこの馬鹿が頷くんだ?そもそも高一の俺らに何ができるってんだ?」


 と反対の意見を口にしたのがクラスの荒くれ者、安藤隆之介あんどうりゅうのすけだ。


「僕は、僕はこの世界での自分の力に賭けて、ファフニールと戦い、この世界を救いたい!」


 と、隆之介とは正反対の意見を口にしたのはさっきも発言していた俊介だ。


「し、俊介君がやるなら、わ、私もやります!」


 と、俊介の意見に合わせるように発言したのが宮坂鈴音みやさかすずねだ。


「俺は反対。シンプルに命が惜しい」


 と、至極真っ当な意見を述べたのが影山健かげやまたけるだ。


 そして、残った1人の名前は星野優里ほしのゆうりだ。

 クラスでは決して目立つ立場ではなかったが、その顔の良さから男子から一定の人気を誇っていた。

 が、本人はその男子達には一切の興味を示さず、完全スルーしていた。

 そんな態度が余計に男子からの人気を得てしまっていたりする。

 

 そして、そんな優里が述べた意見はこうだ。


「私はこの世界で私の好きにさせてもらう。誰1人として付いてくるな」


 他の者達は皆開いた口が塞がらなかった。

 誰が想像できただろうか。

 一見何の力も無さそうな少女が、迷わずに異世界で1人で生きていくと言い出す事を。


「し、正気かい?星野さん」

「うん、正気」


 俊介の問いにあっさりとした答えで返す優里。


 確かに、何も知らない人からしたら、優里の言動は意味不明だ。

 しかし、優里の視点から考えると、その言動は至極当たり前のことだった。


 優里には、このレイオットでの前世の記憶がある。

 所謂転生者だ。

 優里の死因は、ファフニールだった。

 ファフニールに優里の住んでいた国もろとも消し飛ばされたのだ。

 当時優里は世界随一の魔法使いだった。

 そんな優里ですら、抵抗することさえ許されない程の絶大な力。

 そこで優里は、ファフニールに恨みを抱くのではなく、恋心を抱いた。

 ファフニールのその絶大な力を目にして美しいと感じた。

 そしてその容姿もまた、美しいと感じたのだ。


 そして今、ファフニールに再会するチャンスが訪れた。

 

 そう、優里はファフニールを口説こうとしているのだ。

 こんな事を誰にも伝えることが出来るはずがない。

 だから優里は誰にも付いてくるなと言ったのだ。


 それに、優里は前世や時よりも力が増している事に気づいていた。

 皇帝は異世界人はこの世の理から外れていると言った。

 その言葉が偽りではないと、優里ら確信していた。

 自分の内から、あり得ないほどの魔力、エネルギーを感じるのだ。


 そして、これならばファフニールと対話をする事が許されると確信していた。


 そして、もうこれ以上この地に留まっていても仕方がないと思った優里はとっととこの帝国を出て行こうとした。


 しかし、その行動を皇帝が見過ごすわけもなくーー


「悪いが、この危険な地に少女を1人で行かすことはできん。捕らえろ!」


 皇帝が部屋の周りを囲っている兵達に指示を出す。


 しかし、そんな兵ごときに優里が負けるはずもなくーー


「久しぶりにやってみるか。重力増加プラスグラビティー••••••ま、こんなもんか」


 優里の重力魔法によって兵達はなす術もなく地に這いつくばることになった。


「なっ!?馬鹿な!?その者達は内の精鋭だぞ!何故この世界に来たばかりの其方が」

「さあね、自分で考えな。じゃあ、私は行くから」


 優里は全員が口をぽかーんと開けてしまうほどあっさりと別れを告げた。

 

 そして優里は冒険者ギルドへと足を運んだ。

 

 

 


 ◇◆◇




 優里が転生者のように、ファフニールもまた転生者だった。


 ファフニールは元々、平凡なゲーム好きの日本の高校生だった。

 しかし、ある日突然、歩道を歩いていたところに暴走したトラックが突っ込んできたのだ。

 

 通常、死者は『転生の間』と呼ばれる場所に魂だけを召喚され、そこで閻魔によりその後を決定される。


 しかしファフニールは違った。


 この世界の宇宙、惑星、動物、植物、そして神々をも創り出した創造主、ゼウスのいる天界の庭園に呼び出された。


 そして、ゼウスからの願いはこうだ。


「お主には、其方のいた世界とは別の世界、所謂異世界に邪竜ファフニールとして転生してもらいたい」


 当然、いきなりそんな事を言われて理解できるはずもなくーー


「ま、待ってください。ここはどこですか。あなたは誰なんですか!?」

「ふむ、混乱するのも無理はないか••••••よかろう。全てを説明してやろう。まず、お主には異世界に邪竜に転生してもらいたい。ここまでは分かるな?」

「は、はい。でも何で邪竜なんですか?」

「これからお主に向かってもらう世界には魔法が存在する。その魔法を駆使し、そのまま文明が発展すると、その力を制御しきれず、人類は自らの力で滅亡してしまうのだ。そこで其方には、発展しすぎた国、集落を滅亡させるために邪竜に転生してもらいたいのだ」

「な、なるほど。でも、発展しすぎた文明とかってどうやって見分ければいいんですか?」

「安心したまえ。その時は、私から連絡をしてやる」

「そ、それなら安心ですね。で、何で俺なんですか?」

「まず、お主には発展しすぎた文明を滅ぼすために、絶大な力と、その力の使い方を授ける。しかし、この絶大な力と情報量を抑え切れる者は現地にはおらん。しかし、異世界から転生し、この世の理から外れた、所謂異世界人になら絶大な力を得ることが可能だ。しかし、その情報量に耐えれる頭脳を持つ者は、異世界人の中にもそうおらん。しかし、お主なら、それが可能だ。その証拠に、お主、記憶力とか計算力がずば抜けておるだろう?」

「な、なるほど。理解しました」

「で、転生をしてくれるか?」

「••••••はい!で、結局あなたは誰なんですか?」

「私は全てを創造し、全能を司る神、創造神ゼウスだ。では、転生を始める」

「分かりました」

「向こうの世界ではファフニールと名乗るがいい」


 そしてファフニールは無事、転生を果たした。


 まあ転生と言っても、ファフニールの転生の仕方は特別だ。


 まず、このレイオットには神山と呼ばれる、標高10000mを超える山があり、そこにゼウスが己の権限によって世界に卵を生み出させた。

 ある意味ゼウスが親と言える。

 それがファフニールだ。

 卵と言っても、その中から出てくるファフニールはその時点で10m級の大きさ。

 その世界に元々いる竜の中でも最上級の大きさを誇っていた。


 ちなみに、ファフニールの種族、始原竜とは、ゼウスに直接創られた竜のことを指す。

 過去にも3体いたが、全員ファフニールが生み出される前に死に絶えていた。

 故に、ファフニールは世界で唯一の始原竜なのだ。




 それから4500年後、流石のファフニールもこの生活に飽きていた。

 そこでファフニールは思いついた。


(人間に擬態してゼウスから指示が出るまで人間の国を楽しもう!)


 と。


 人化の魔法。

 それは一部の竜にしか使えない秘術だ。

 この事が人間達に知られれば、混乱は避けられない。

 だから秘術なのだ。


 ファフニールも、人化の魔法を獲得したのは最近だ。

 魔法の使い方を探し出すのに500年も掛かってしまったからだ。


 そしてファフニールが誕生してから5000年の現在。

 ファフニールが人化を成功させた。


「さてと、人化の魔法も無事成功したな」


 ファフニールは人化の魔法を成功させ、身長180cmで黒髪、その紅い瞳を輝かる17歳くらいの非常に美形な少年の姿になっていた。

 そんなファフニールは自分の住んでいる洞窟にある鉄を鏡にして自分の姿を見た。

 そんなファフニールの自己評価はーー


「おお!前世よりもイケメンだな!!」


 であった。


 そして今から人間の国に向かおうとしていたがーー


「どの国にいこうかな?」


 ファフニールは実に無計画だった。

 

 300年周期で睡眠を取るなんて言われているが、実際はただぐうたら寝ているだけであった。

 300年というのは、文明が発展する速度に過ぎないのだ。


 この事を人間達が知ったら皆口を揃えてファフニールを駄竜と呼び始めるだろう。

 

 こんな駄竜には勿体ない容姿である。


 しかし、ここでやっと流石の駄竜ことファフニールも思い至った。

 すなわち、(行き先決めてなかった••••••)と。

 しかし、ファフニールはここで実に邪竜らしい決め方を思いついた。


(そうだ!盗賊に襲われている人を助けて、その盗賊から金品を奪い取ってそこから1番近い国に行こう)


 と。

 まあやる事は善行と言えるが、その思考回路は邪竜(駄竜)その物であった。


「そうと決まれば早速行動に移そう!」


 この行動力はファフニールの()()長所なのかもしれない。


「竜眼!」


 竜眼とは、その名の通り、竜にのみ使える能力で、どんなに遠くの場所でもどんな障害物があろうとも見たい場所を見る事ができるという優れものだ。


「お!いい感じの盗賊発見!見たところ襲われてるのはお姫様?って感じだな。よし、ここにしよう。そうと決まれば、転移テレポーテーション!」


 転移テレポーテーションとは、その名の通り、見える場所、行った事がある場所に自在に瞬間移動できる魔法だ。


「よし、到着!」


 ファフニールは狙い通りにお姫様を盗賊から庇うように転移した。


 お姫様が乗っている馬車を20人程の盗賊が襲っていた。

 そして、馬車の護衛と思われる人が5人程地面に倒れていた。

 そして、馬を操っていたと思われる人も盗賊に刺されていた。

 馬車に残っているのはお姫様ただ1人だった。

 ファフニールが回復魔法を掛ければ治せるだろうが、ファフニールにそんな意志は存在しないため、もう助からないだろう。


「な、なんだお前は!?どこから来やがった!?」

「か、構うな!そいつごと姫も殺せ!!!」

「悪いけど、噛ませ犬は君達だよ」

「か、かませいぬ?何訳わからねー事をーーグハッ」


 盗賊の1人が何かを言おうとしている途中だったが、ファフニールは容赦なく腹にデコピンを食らわせた。

 人化しているとはいえ、元は100mを超える邪竜。

 殴ったり蹴ったりすると遥か彼方まで飛んでいってしまうと思ったファフニールはあえてデコピンを選んだ。

 しかし、やはりデコピンでも強すぎたのか、食らった盗賊は15m程吹き飛ばされ絶命した。


「あらら、やり過ぎたか。なら次はもっと弱くしなきゃだな」

「お、おいてめぇ。い、一体何しやがった!?」

「何ってただのデコピンだけど」

「そ、そんな訳あってたまるか!!!」

「ま、君が理解する必要は無いよ」


 それからファフニールはあっさりと盗賊半分を殺し、そこからは手加減を覚え、もう半分を気絶させた。

 そしてちゃっかり盗賊から金品を奪い取っていた。

 こういう所を見るとやはり駄竜である。


「あ、あの!」

「ん?」


 お姫様が馬車から降り、ファフニールに声を掛けた。


「私はリントラージ帝国の第二皇女、アレクシア・リントラージと申します。まずは助けていただき、ありがとうございました。あなたが来てくださらなければ、私は死んでいたでしょう」

「あー、まあ、無事みたいで良かったよ。それじゃあ俺はこれで」

 

 ファフニールが面倒事はごめんだと言わんばかりに別れを告げようとするがーー


「お待ちください!!!何か、何か礼をしなければ私のこの気持ちは治りません!!!」

「え、ええ••••••」


 アレクシアはファフニールに目を輝かせ、まるで神でも見ているかのような表情で懇願した。

 その態度を見ると、アレクシアを守るために逝った部下達が哀れに思えてしまう。


(なんか嫌な予感がする••••••)


 その予感通り、物事は面倒な方向に進んでいた。


 そう。アレクシアは、ファフニールに惚れていたのだ。

 というか、それはもはや信仰に近いのかもしれない。


「と、とりあえず移動してから話をしよう」

「はっ!た、大変申し訳ございません!このような場所にあなた様を長居させようとしてしまうとは!」

「お、おう。まあなんだ。1回落ち着こうぜ」

「そうですね!!!」


(なんというか、随分とお転婆なお姫様だな••••••)


「まず、君はどこに向かおうとしてたんだ?」

「はい!私は諸事情により、サルティエス王国まで向かうところでした。しかし、この様な状況で王国に向かう訳にもまいりません。なので1度帝国まで戻ろうと考えております」

「なるほど。でももう馬車は使えないだろう?」

「はい、ですから、少し時間は掛かりますが徒歩での移動となってしまいます。あなた様のお手を煩わせるような事になってしまい、大変申し訳ございません!!!」

「え!?あ、謝らなくていいよ!そうだな••••••帝国の近くまで転移してくか?」

「てんい?ですか?」

「ああ。転移テレポーテーションっていう魔法の一種で、行きたい所まで瞬間移動できるんだ。この魔法を使ってここまで駆けつけたんだよ」

「おお!流石はあなた様ですね!!!はっ!そういえば、まだお名前をお聞きしてませんでしたね。教えてくださいませんか?」

「あ、そうだな。俺は••••••」


 ファフニールは考えた。

 流石にファフニールと名乗るわけにはいかない。

 そこで、前世の名を名乗ることにした。


「俺はユウトだ。ただのユウトだ」

「おお!何という神々しいお名前でしょう!!!」

「え"!?」


(いや、前世じゃありふれた名前なんだが••••••)


「さ、さて。リントラージ帝国はどっちの方向だ?」

「はい!あちらでございます!」

「了解。よし、転移テレポーテーション!」


 ファフニールはアレクシアの指差す方向にある国の近くの目立たなさそうな場所に転移した。




「さてと、人化の魔法も無事成功したな」


 ファフニールは人化の魔法を成功させ、身長180cmで黒髪、その紅い瞳を輝かる17歳くらいの非常に美形な少年の姿になっていた。

 そんなファフニールは自分の住んでいる洞窟にある鉄を鏡にして自分の姿を見た。

 そんなファフニールの自己評価はーー


「おお!前世よりもイケメンだな!!」


 であった。


 そして今から人間の国に向かおうとしていたがーー


「どの国にいこうかな?」


 ファフニールは実に無計画だった。

 

 300年周期で睡眠を取るなんて言われているが、実際はただぐうたら寝ているだけであった。

 300年というのは、文明が発展する速度に過ぎないのだ。


 この事を人間達が知ったら皆口を揃えてファフニールを駄竜と呼び始めるだろう。

 

 こんな駄竜には勿体ない容姿である。


 しかし、ここでやっと流石の駄竜ことファフニールも思い至った。

 すなわち、(行き先決めてなかった••••••)と。

 しかし、ファフニールはここで実に邪竜らしい決め方を思いついた。


(そうだ!盗賊に襲われている人を助けて、その盗賊から金品を奪い取ってそこから1番近い国に行こう)


 と。

 まあやる事は善行と言えるが、その思考回路は邪竜(駄竜)その物であった。


「そうと決まれば早速行動に移そう!」


 この行動力はファフニールの()()長所なのかもしれない。


「竜眼!」


 竜眼とは、その名の通り、竜にのみ使える能力で、どんなに遠くの場所でもどんな障害物があろうとも見たい場所を見る事ができるという優れものだ。


「お!いい感じの盗賊発見!見たところ襲われてるのはお姫様?って感じだな。よし、ここにしよう。そうと決まれば、転移テレポーテーション!」


 転移テレポーテーションとは、その名の通り、見える場所、行った事がある場所に自在に瞬間移動できる魔法だ。


「よし、到着!」


 ファフニールは狙い通りにお姫様を盗賊から庇うように転移した。


 お姫様が乗っている馬車を20人程の盗賊が襲っていた。

 そして、馬車の護衛と思われる人が5人程地面に倒れていた。

 そして、馬を操っていたと思われる人も盗賊に刺されていた。

 馬車に残っているのはお姫様ただ1人だった。

 ファフニールが回復魔法を掛ければ治せるだろうが、ファフニールにそんな意志は存在しないため、もう助からないだろう。


「な、なんだお前は!?どこから来やがった!?」

「か、構うな!そいつごと姫も殺せ!!!」

「悪いけど、噛ませ犬は君達だよ」

「か、かませいぬ?何訳わからねー事をーーグハッ」


 盗賊の1人が何かを言おうとしている途中だったが、ファフニールは容赦なく腹にデコピンを食らわせた。

 人化しているとはいえ、元は100mを超える邪竜。

 殴ったり蹴ったりすると遥か彼方まで飛んでいってしまうと思ったファフニールはあえてデコピンを選んだ。

 しかし、やはりデコピンでも強すぎたのか、食らった盗賊は15m程吹き飛ばされ絶命した。


「あらら、やり過ぎたか。なら次はもっと弱くしなきゃだな」

「お、おいてめぇ。い、一体何しやがった!?」

「何ってただのデコピンだけど」

「そ、そんな訳あってたまるか!!!」

「ま、君が理解する必要は無いよ」


 それからファフニールはあっさりと盗賊半分を殺し、そこからは手加減を覚え、もう半分を気絶させた。

 そしてちゃっかり盗賊から金品を奪い取っていた。

 こういう所を見るとやはり駄竜である。


「あ、あの!」

「ん?」


 お姫様が馬車から降り、ファフニールに声を掛けた。


「私はリントラージ帝国の第二皇女、アレクシア・リントラージと申します。まずは助けていただき、ありがとうございました。あなたが来てくださらなければ、私は死んでいたでしょう」

「あー、まあ、無事みたいで良かったよ。それじゃあ俺はこれで」

 

 ファフニールが面倒事はごめんだと言わんばかりに別れを告げようとするがーー


「お待ちください!!!何か、何か礼をしなければ私のこの気持ちは治りません!!!」

「え、ええ••••••」


 アレクシアはファフニールに目を輝かせ、まるで神でも見ているかのような表情で懇願した。

 その態度を見ると、アレクシアを守るために逝った部下達が哀れに思えてしまう。


(なんか嫌な予感がする••••••)


 その予感通り、物事は面倒な方向に進んでいた。


 そう。アレクシアは、ファフニールに惚れていたのだ。

 というか、それはもはや信仰に近いのかもしれない。


「と、とりあえず移動してから話をしよう」

「はっ!た、大変申し訳ございません!このような場所にあなた様を長居させようとしてしまうとは!」

「お、おう。まあなんだ。1回落ち着こうぜ」

「そうですね!!!」


(なんというか、随分とお転婆なお姫様だな••••••)


「まず、君はどこに向かおうとしてたんだ?」

「はい!私は諸事情により、サルティエス王国まで向かうところでした。しかし、この様な状況で王国に向かう訳にもまいりません。なので1度帝国まで戻ろうと考えております」

「なるほど。でももう馬車は使えないだろう?」

「はい、ですから、少し時間は掛かりますが徒歩での移動となってしまいます。あなた様のお手を煩わせるような事になってしまい、大変申し訳ございません!!!」

「え!?あ、謝らなくていいよ!そうだな••••••帝国の近くまで転移してくか?」

「てんい?ですか?」

「ああ。転移テレポーテーションっていう魔法の一種で、行きたい所まで瞬間移動できるんだ。この魔法を使ってここまで駆けつけたんだよ」

「おお!流石はあなた様ですね!!!はっ!そういえば、まだお名前をお聞きしてませんでしたね。教えてくださいませんか?」

「あ、そうだな。俺は••••••」


 ファフニールは考えた。

 流石にファフニールと名乗るわけにはいかない。

 そこで、前世の名を名乗ることにした。


「俺はユウトだ。ただのユウトだ」

「おお!何という神々しいお名前でしょう!!!」

「え"!?」


(いや、前世じゃありふれた名前なんだが••••••)


「さ、さて。リントラージ帝国はどっちの方向だ?」

「はい!あちらでございます!」

「了解。よし、転移テレポーテーション!」


 ファフニールはアレクシアの指差す方向にある国の近くの目立たなさそうな場所に転移した。

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