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36.敵の正体

***



シャーロッテ邸の最深部。宝箱と金庫の前に座り込む一同。思わぬ形で再開した二人と一人の男と、何が何だか解らずに会話についていこうと三者の会話にとんがり耳を傾けてうなずく一人の竜人の少年。彼らは輪を作って話し合っていた。


「……コホン。では、詳しく説明してもらおうか。ルージ。それに、バーレッド。貴様もいつからこやつに気付いていたのだ?」


戦闘終了後、話題を切り出したのは自ら彼らのリーダー的存在をかってでるしかなかったキリシマだった。さっきまで敵であった見知らぬ大男を前に怯えているルタを背中の後ろに隠しながら、スクルージとバーレッドを交互に見て問い詰める。


「えへへへ……。僕は『月蝕』の強化スキルを使って戦い始めた時からです。前衛で剣を交えると何となく感じることがあるんですけど、『あ、これ、太刀筋がスクルージさんっぽいな』ってなって『やっぱりそうだ!』って、何度かぶつかっているうちにわかったんですよね。ただ、もうその時にはスキルのキャンセルも出来なかったですし、それに……」

「それに?」

「一度戦ってみたかったんですよね、本気のスクルージさんと」

「そうそう。俺も! 俺もだぜ! 結局俺とバーレッドってPvPしないまま解散になっちゃったもんな~」

「貴様ら……」


戦闘終了の直後、二人はキリシマの顔色をうかがうように控えめな態度でいた。そうだと思えばすでにこの通り。詫びれていたはずの表情はどこへとんずらで、照れたように頭を掻きながらバーレッドが答えるとスクルージも調子の良さそうな声で笑った。反省の色はもう二人そろって無色透明なようだ。


「っていうかさあ。俺は目が覚めてログアウト出来ない事に気付いてからずっとここにいたの。下手に動いてもどうなるかわかんなかったし。それで、偶然お前らが来て……いや、最初はキリシマが俺に腰抜かして逃げたんだったな。それ以来、お前らがこのダンジョンに戻って来るのを待ってたってわけさ」

「我は腰など抜かしておらん。それにルージ、貴様はわざわざPvPを仕掛ける必要などなかっただろうが。そんな陰気で珍妙な格好までしおってからに」

「だから言っただろ? 本気のお前らとバトってみたかったって。……鎧のことはウルトラお洒落番長野郎のキリシマには言われたくねーな。気付いたらこの装備だったんだっての」

「まったく拍子抜けだ。悪ふざけも大概にすることだな」


がっくりと肩を落としてため息をつくキリシマ。シャーロッテ邸の地下で待ち構えていた未知の強敵は、あろうことかかつての仲間であり翼蛇の杖のメンバー。重装備の能天気な騎士号ことこの男、スクルージであった。

スクルージは呑気に笑いながら経緯を説明するが、一度敵前逃亡をして作戦を練り直し再戦に挑んだキリシマは彼からどう弁明を受けたところで納得がいかない。いくはずもないのである。



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