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34.魔法職

「ひいいっ! バーレッドさん、受け流して時間稼ぎをするんじゃなかったんですかぁ?!」

「くくくっ。ああ見えて奴は我が知る限り随一の戦闘狂バーサーカーだからな。妖刀・月蝕を媒介(スイッチ)に人格が入れ替わるとか……なんだとか。いう設定や噂があったろうか、だ」

「ええ~~っっ?!!! なんですかそれ! そういうことは先に言っておいてくださいよ!」


予想外の展開に泣きながら回復魔法をかけ続けるルタと、面白くなってきたぞと不敵に笑うキリシマ。


(まったく。他人を中二病呼ばわりするくせに、どっちがそうだかわかったもんじゃないな)


詠唱しながらキリシマは笑う。バーレッドの剣技に驚き、見惚れているルタを見てそう思っていると、突如として悪寒が走る感覚に視線を切り替える。キリシマは一瞬、しなる刀の銀色に映り込んだ黒鎧の一部から抜け出たように現れた敵の姿に息を飲んだ。


「いかん! ルタ! 下がれ!」


そして、すぐに声を張り上げた。


「下がれって?! ご主人さま、どうして……?!」

「大蝙蝠だ! こんなタイミングで復活しおって! ちいっ!」


彼らの視線の先。どうやらそのようで、どうにも運が悪い。知らない間に復活したらしい例の固定モンスターが登場し天井で牙を剥いて威嚇している。そろそろ戻っていなければおかしいと先ほどキリシマが思っていた魔物が現れた。

詠唱に集中し、周囲の警戒を疎かにしていたことを後悔する。本来は中間に位置取ったルタに処理を任せたい雑魚的ではあったが、色々と戦闘に不慣れな彼に頼るわけにもいかない。それに、回復に集中させなければバーレッドも倒れてしまう。


「くそ! 間に合え! 一か八かだが上手く巻き込めよ……!」


飛膜を拡げた巨大な魔物が闘争中の二者へと滑空していく様子に舌打ちする。打った舌先に乗せた呪文を高らかに叫ぶキリシマ。


降頻(そそ)げ……『爆雷』!」


通路の割れた壁に稲妻の音を響かせ、その場にいた者達の視界は真っ白な光に包まれる。まばゆく降り注ぐ幾重の雷が駆け回った。





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