表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/39

3.今までの彼ら

兎の獣皮を持っていける限りカバンに詰め道具屋へ持ち込んだところで、夕飯のアジフライ定食(この世界でも味噌汁とライスがついて八〇〇円程度だという)一人前にありつけるだけの金になるかも怪しい。

そう考えた二人は依頼クエストを受注するための酒場でこれらの引き取り手を探しに来たのだが、


「依頼者もとんだケチだな。なんだというのだ。一人一回きりの納品制限付きとは……」

「まあ良しとしましょうよ。普通に売るよりは多少マシになりましたし……」


二人分を合わせて六〇〇円。それから残りを道具屋に売ってようやくアジフライ定食一人前。

がっくりと肩を落とすキリシマに掛けるバーレッドの言葉も笑顔もぎこちない。


「しかし、これでは我々の(ハウス)奪還までいくら掛かるのか予測もできんぞ。なあ、バーレッド」


そうして得た資金を握りしめ定食屋には行かずに二人は木製の丸テーブルを囲んだ。

注文を取りに来た店員に店内で二番目に安い炭酸麦酒を二杯と一人前のフィッシュアンドチップスを頼みながらキリシマがぼやき、


「そう、ですね……」


バーレッドは彼を宥めるでもなく相槌をうった。

彼がキリシマに敬語を使っているのに対しキリシマは少し偉そうな態度でいるこのコンビ。彼らに明確な階級があるわけではない。

立場で話し方を変えているというよりも、そういった性格という設定ロールの名残が働いているだけである。

魔術師のキリシマは二人が所属する組織ギルド、翼蛇の杖の創設者でありギルドマスターの地位にあった。

一方でバーレッドのほうはというと、設立から数年、間に何人か介して加入した後入りだった。

バーレッドもゲーム自体は長年遊んでいるし、ギルド内でも古参のほうではあるがキリシマのような特別な役職は持たない。

ただ、キリシマが勝手に彼を「参謀」と呼び二つ名を与えているだけあって組織内では一番共にログインしている時間が多かった。

だが、今となってはその関係も無意味な話で思い出では腹が膨れないを体現するだけである。

ゲームの中の登場人物(プレイヤー)だった頃の話で、今の二人には自分たちが考えたキャラクターの設定に忠実に振る舞う必要などなかった。

それでもロールプレイを続けたがる頑固なキリシマに、彼が何を考えているのか問いただすのも諦めバーレッドも合わせて話しているだけなのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ