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28.レベル上げ

***



キリシマ、バーレッド、そして新しい仲間・ルタ。

手伝い屋だった竜人の少年をパーティへと引き入れた二人は三人一組となり早速実践を開始していた。

装備を上級者が持つ立派な物にしたからといって、ルタの戦闘力が急激に引き上げられるというわけではない。さらに言えば手伝い屋という役職のNPCは、本来プレイヤーたちと肩を並べて戦闘を行うための力を持ったキャラクターではない。


ゲームを始めたての初心者プレイヤーよりもまたずっと経験が浅く、とてもではないがキリシマたちが頼れる存在とは言えない脆弱さだ。

それでも今回、キリシマは彼を入れてパーティを結成したのだ。したからには彼を守りながら鍛える必要があった。例の黒鎧へリベンジするためには最低限、二人の側で回復魔法を唱えられるくらいに……ルタが実戦で立ち回れるように育ててやらなくてはならない。


とんとん。と、キリシマがかかとで合図をし、


「ゆくぞ! 貴様ら! 構えろ!」


草陰で眠っている大熊めがけて小石を投げつけた。

──命中ヒット。ダメージは微々。眠りの邪魔をされた大熊は目を覚ました途端怒りの咆哮を挙げ、立ち上がってこちらを睨んだ。

石を当てた張本人・キリシマはにやりと笑い、怯えているルタを熊の前へと放り出す。


「ちょ、ちょっとお! ご主人さまぁ?!」


突拍子のない主の行動に困惑し慌てふためくルタ。熊は極太の両腕を振り上げ容赦なく彼の頭へ食らいつかんととびかかってくる。


「ぎゃあああああ!」


涙目のルタの悲鳴が響く中、


閃光ショット! これは目くらましだ!」


真横に掲げた長杖から光の玉を撃ちだすキリシマ。続いてルタの前にひらりと割り込み降り立ったバーレッドが、剣の柄部で熊の顎を下から砕き上げる。


「ひええーー!」

「今だよ! ルタくん!」


咆哮が止み、がっちりと閉じられたあぎとから涎と血の混ざった体液を吐き出して苦しむ熊の魔獣。

振り撒かれる液体をルタはかわしながら身構え、


「ええい! 疾風です!」


と腕を大きく振る。木の棒のような短い杖から緑色に輝く風の音色が出、草を巻き上げるエフェクトが発現する。

そのひ弱に見える一撃がとどめになったらしい。大熊は腹を見せてドサアッと大袈裟に倒れたあと、一拍置いて金貨と毛皮のアイテムに変身した。


「や、やったぁ~~~~!」


これまた大袈裟な溜息を肩から吐き出すルタを見下ろしながら、キリシマは彼のステータス画面を分析して表示する。

ルタのレベルは最初に出会った8からすでに15に上がっていた。



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