25.竜人の少年
「たしかに手伝い屋ならプレイヤーと違って新規登録の種族制限には引っかからなかったはずですけど……」
キリシマが広い市場で行き交う人々の中に探しているのは、そんな手伝い屋の中でも特に最近、LSO終了日の一週間ほど前……課金アイテム払い戻しの告知が出ているにも関わらず購入したド新人だという。
そしてその新人に、あろうことか何の目的も提示せず市場へ行ってくるように指示したのが今からちょうど三日前で、すっかり存在を忘れてしまっていたとまでキリシマは言ってのけた。
「かわいそうに……キリシマさんも残酷ですね。その子、こんな事態になってなければゲームの中で生涯一生迷子のまま消されてたんじゃないですか……」
「まぁ、今の状況はあやつにとっては幸運かもしれんな。ああ、おい。そこの貴様」
「ご、ごごっ、ごしゅじんさま?! ホンモノ? う、うわあああああん! ご主人さまぁ~~~~っ!」
その少年は声を掛けると同時に泣き出してしまった。
三日間あてもなく人の往来する中をもまれながらさまよい続けていたのだろう。ぼさぼさになってしまった豊かな金髪の下の短い眉はとれてしまいそうなくらい困った方向に曲がっている。
水以外の物を口にしていなかったから、というよりも目標もなしに歩き回って疲れたストレスのせいだろうか。食べ物を与えて話ができるようになるまで彼は年齢よりも一段老けて見えていた。
「コホン。では、紹介しよう。彼が竜人族の回復職、ルタだ」
キリシマが痩せ気味のほっそりとした少年の突進を阻止し、抱き留めながらバーレッドに紹介する。
「る……、ルタ・イィロソ。です。こんにちはご主人さまのご友人、さん……」
臆病な性格に設定しているとは言っていたが、何もしていないうちからかなりの警戒心だ。
十歳そこらにやっと届いたであろうかくらいの年齢のルタは、体の半分以上をキリシマの後ろに隠しながらバーレッドにお辞儀をした。市場の人混みから離れた裏道で膝を抱えて座り込み、ホームレスのようになっていた彼がキリシマが言っていた放置した新人手伝い屋のようだ。
LSOにおいて回復職の職業選択が可能であり、それ以外の職種につくことが出来ない特異な種族となっている二種族……有翼族と竜人族のうちの竜人にルタは相当する種族の少年だった。
身体的特徴としては白人系の綺麗な顔の横にいかつい角が生えていることと、小さいながらドラゴンの尾や翼を持っていること。寿命が他の種族と比べて若干だが長く、少年程度の体躯でも実年齢は二十歳相当で、大きくなるにつれて首や顔に鱗のような模様が色濃く出てくること。
その他にも性別や種族特有の命名規則などがLSOの公式ホームページに掲載されており、存在自体がストーリーモードの大きなネタバレとなる特別な種族だ。
「あのっ、あのっ、ご主人さま……迎えに来てくださりありがとうございます。自分、その、何をしたらいいかもいつお屋敷に帰ったらいいのかもわからなくって……。きっと、ジェイリー先輩たちだったら何も言われなくてもご主人さまの必要としている物がわかるのでしょうけれど、自分にはまだ見当もつかなくって、その……」
ルタなりにキリシマへ意見している……というよりも鼻をすすって泣きながら言っているので、「もうこんなことしないでください」と念を押しているような感じだ。
ルタの言うジェイリーという人物はキリシマが一番最古に雇った手伝い屋で、ギルドハウスのメイド長の役目を与えている人間だ。
なるほど、そういった古参や新人の上下関係のような設定も反映されるのだな。とキリシマは必至なルタの訴えを聞き流しながら考えていた。




