24.手伝い屋
ゲームの世界に取り残されたプレイヤーを探し当てるのは困難だ。
それにバーレッドが懸念する通り、LSOでは回復職自体が限られた種族でしか取得できず、その種族自体が半年前から制限されてしまっている。
その限られた条件下でヴァロランドのテロに臆せず残った者、かつ制限されていなかった期間内に回復職でゲームを始めたプレイヤーなどという希少な存在が見つかるのだろうか。
そもそも、バーレッドとキリシマ以外に居残ったプレイヤーが存在しているのかもわからなく、そんな人物が極わずかな確率でいたとして二人とコミュニケーションがとれるとも協力的だとも限った話ではない。
第一、この市場の中心地、道によっては人混みの中でさえ二人を押し流さんほど大勢のNPCがおり、この中からプレイヤーのような少し目立つ存在を探そうとすれば何日がかりになるかもわからない。先に所持金が底をつく可能性のほうが高いかもしれない。
「そうだ。我が、買いつける物も帰還予定日も何も命令を出さずに市場に行けとだけ指示をした若い『手伝い屋』が三日ほど前からこの市場で迷子になっているに違いない」
「手伝い屋? ……って、それこそNPCじゃないですか?! というかそんな酷い設定で手伝い屋を送り出したんですか?!」
「左様だ」
手伝い屋とは、LSOにおける道具倉庫兼売り子・買い子の役割を持った各プレイヤー専属のNPCのことである。
特定のクエストをクリアすることで開放され、プレイヤーキャラクター同様にキャラクターメイキングを行ったうえで性格や特技などの詳細設定を決め、名前をつけて雇用することができる。
通常はプレイヤー一人につき手伝い屋も一人だが、現実の通貨で課金することによって複数雇用も可能な特別なNPCだ。
バーレッドもキリシマも数人ずつ雇っており、全員ギルドハウスに紐づけて使用人風の格好をさせていた。
彼らにあらかじめ指示を出しておくことで、プレイヤーがログアウト中でも近くの街などに買い出しにいったり不要なアイテムを売っておいてくれたりと何かと便利な存在で、複数の手伝い屋を屋敷に従事させていることは、上流の廃課金プレイヤーの証明でもあった。




