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2.二人の所以

角付き兎の獣皮は通常、換金しても一つあたりたったの二円。

それもそのはず。兎達は駆け出しの冒険者らが最初に装備した剣の試し切りをしたり、標的にして魔法を当てる練習をするような相手。

街から出て初めて探検しに向かうであろう森の入り口付近から序盤、チュートリアルの終了を示すセーブポイントに触れてからまた先、最奥の隅まで何処でも見られる雑魚モンスターだ。

危険度もレベルも相当低く、バーレッドやキリシマのような玄人(ベテラン)が手こずるようなランクの敵ではなかった。

自ら巣穴をつついて怒らせ、わざと追い回されるように仕向けない限り二人の前になど現れない。

それがわかっていながら、二人が兎達を狙ったのには相応の理由(わけ)がある。


「……どうでした? キリシマさんの方は」

「他愛ない。そして遜色もない。暴れ足りないくらいだ。もう一段レベル帯の高い場所で狩ってみてもよかったかもしれんな。今からでも別のエリアへ馳せ参じてみるとするか?」

「あはは。僕も問題なく動けていました。でも、まだ二人で連携を取るのにも慣れていないですし……もう少しゲームの中でも現実と同じ感覚で体を動かすのが上手くなってからのほうがいいでしょう」


険しい顔をしていながら調子に乗った発言をするのはキリシマ。不敵な笑みを浮かべて獣皮を放り込んだ袋を掲げている。


──バーレッドの冷静な言い分から知れる通り、この世界はゲームの中。仮想空間の世界。

そして、この二人の玄人プレイヤーは突如としてバーチャルリアリティに取り残された者達という異質な存在であった。


背景として散々見てきた景色も、自分達の装備している衣服や武器も彼等には覚え自体はある。

……あるのだが、今までと今とでは若干勝手が違う状態で二人とも手探りでいるのだ。


「とにかく一旦ここまでにして街に戻りましょう」

「うむ。翼蛇の(カルドケウス)参謀の貴様が言うのなら我も素直に従うのが道理だ」

「キリシマさん……その喋り方やめません? 今はもうゲームじゃないんですよ? 僕達、変な事件に巻き込まれてるのかもしれないですし、ここはもっと真剣になって……」

(ノー)だ。我はキリシマ・ウィンドグレイス。悪辣外道(あくらつげどう)に裁きの杖を振るう誇り高き蒼森(もり)の民。他に名乗る名などない。そして言語道断。我にはここが現実である」

「はあ……そうですか。まあ、疲れたらいつでもやめていいですからね」


胸を張るオシャレ大臣の言葉を受け流しているうちに獣皮はすっかり二人のマジックバッグへと収められていたのであった。






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