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18.ダンジョンの思い出

「さて……」


シャーロッテの館の地下ダンジョンへはイベント解放時にしか訪れることはなかったが、キリシマの覚えが正しければ大して強い敵は出現しない。

地下水路に繋がっているためそこから迷い込んだネズミやスライムのような下級のモンスターが時折出現するが、大方は角付き兎よりもレベルが低いか同等のものだ。

翼蛇の杖の仲間内でも加入初期にキャロや飛鳥たちがレベル稼ぎのために進んでイベントに参加し、先陣を切ってこのダンジョンを攻略していた様子を思い出す。

意気揚々と自分の前を歩く若い初心者プレイヤー達は、キリシマたち玄人にとって新鮮な楽しみでもあった。

飛鳥はLSOで遊ぶ前にMMORPGを題材にしたウェブ小説をいくつも読んでいたらしく、キリシマやバーレッドの言葉をきいただけで用語などを理解して飲み込みも早かったが、キャロは全くの初心者で弓使いのDPS職にも関わらず敵に突っ込んではよく壁役のスクルージに手を焼かせていた。


「やばいですねえ。今のキャロ、先釣りって言うんですよね? スクルージさん」

「そうそう。他のパーティでやらかしたら嫌われるぞ?」

「えーっ! 知らなかったんだもん! 仕方ないじゃないですかあ!」

「ははは……」

「次から気を付けます! ゆるしてくださあい!」


スクルージやバーレッドはそんな彼女らを優しく根気強く教育し、みな楽しくメンバー同士が助け合い一丸となってクエストを駆け抜けていたものだ。


(こういった初心者向けのマップにいると思い出してしまう。懐かしいな……他の皆は無事にログアウトしていったのだろうか……)


思い出を振り返っていると皆の顔が浮かんでくる。ゲームの終わりとともに離れていった仲間たちは今頃どうしているのだろう。

現実に帰っていった友人たちの声が聞こえたような錯覚が起きる。

キリシマはその声に漠然とした不安を拭い、広い石床の道を進んでいった。



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