17.慣れた道
「僕行きますねキリシマさん。そっちはよろしくお願いします」
「了解だ。こちらは任せておけ。貴様もぬかるなよ」
令嬢・シャーロッテの館、裏門側にて。二手に別れ行動を開始する。
二人の計画は単純明快だ。
バーレッドが使用人に扮装してNPC達の目を引き付けている間に、キリシマが館の地下にある洞窟奥の金庫へと忍び込んで現金や金目の物を頂戴してくるという非常に解りやすいやり口。
(奴らの目は節穴なのか?)
キリシマの催眠魔法で眠らせた見張り番を花壇の奥に隠し、燕尾を翻して高い生垣を軽々飛び越えるバーレッドの背中を見送る。
NPCらしからぬ軽やかで派手な動きを見せたにも関わらず、シャ―ロッテの取り巻きや執事たちは誰一人も気付かずに彼を使用人として認識しバーレッドを受け入れてしまった。
突入前に彼が暗殺者職を経由して得た潜入スキルを使用していたからなのであろう。
だがそれでも不自然だ。とキリシマは思う。この無防備さはゲーム世界と今もさして変わらないとでもいうのか。
あっという間にNPCたちの舞台に溶け込み、居眠り中のシャーロッテの隣を他の使用人と交替して会話をしはじめたバーレッドを横目で見送ってキリシマも行動を開始する。
シャーロッテの館は館の建つ地上階と洞窟の地下との二重構造になっており、ゲーム時代から小規模なダンジョンとして期間限定イベントの度に使用されていた。初心者でも二・三年イベントに継続して参加すれば慣れてくるし、攻略サイトを調べて単純なマップを見ながら進めば迷うこともない。
地上は装飾華美な内装の館の廊下、先ほど通過してきた裏門と玄関。今回のキリシマの持ち場は地下だ。
入り方もいたって単純。
廊下の肖像画の裏にあるスイッチを押すと、
「フッ。ここだな。たわいもない」
地下のおなじみ使い回しダンジョンへ到達できる仕組みになっていた。
独り言を言いながら暗がりに降りるキリシマ。コマンドから道具、松明を選択して手に握ると自動で火が点った。ゲーム時代と変わらないオレンジの明かりに安心感を得る。




