10.終わったはずの
「バーレッド。おい、貴様! バーレッド! バーレッド・ハーキン! 目覚めよ我が同朋!」
感触を確かめるように肩を揺すり、目の前で倒れている人物の意識を引き戻すキリシマ。 何が何だかわからないといった様子でおり、普段の涼しげな顔をしている余裕がない様子で髪を振り乱し声を大きくしていく。
「き、キリシマ……さん……?」
呼び掛けに応えて目を覚ましたバーレッドも事態を読み込めておらず、ぼんやりとした視界の真ん中に慌てる男の姿を入れて名前を呟いた。
ピントが合ってくると、どうやら彼を起こしたのはセピアブルーの長髪を乱しぴょこぴょこのアホ毛だらけになったエルフの青年。
あまり趣味が良いとはいえないドクロやニワトリやユリのマークのシルバーアクセサリーを胸にも手首にも腰にもジャラジャラとさげている。
ダサいいで立ちはまさにゲームの中で散々見ていた仲間、翼蛇の杖のギルドマスター・キリシマだ。
「ああ。よかった。意識はあるようだな、バーレッド。我が参謀」
「どうしてキリシマさんが? 僕らLSOからログアウトしたはずじゃ……」
「うむ。LSOは終了した。……正確には、した……はずだったのだが」
「えっ?」
バーレッドが目覚めるまでよほど慌てていたのだろう。髪の乱れだけではなくキリシマの顔には大粒の汗も伝っていた。




