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第275話

「ハアァーー!!」


 顎に攻撃を受けてよろける伸。

 そのスキを逃さず、バルタサールが襲い掛かる。

 コンパクトに腕を畳んでの連打だ。


「ぐっ!?」


 攻撃を食らうわけにはいかない。

 そのため、伸はガードを固めて必死にバルタサールの連打を防御する。


『くそっ! これじゃあ……』


 反撃をしないと、このままズルズル押し込まれてしまう。

 しかし、バルタサールの攻撃がコンパクト過ぎて、反撃したくてもタイミングが訪れない。

 無理に反撃をすれば、かなりの確率で連打の集中砲火を食らって大きなダメージを受けてしまうことになる。

 そのため、攻撃をガードする伸は焦りを覚えていた。


「シッ!!」


「っ!?」


 ガードの上からでも、かなりの衝撃が伝わってくる。

 それによるものか、連打の中の1つが両腕を畳んで防いでいた伸のガードを僅かにずらした。


「もらったー!!」


「がっ!!」


 バルタサールは、空いたガードの隙間に向かって思いっきり右拳をねじ込む。

 その攻撃が、伸の顔面にヒットする。


「ハアァーーッ!!」


「ぐっ!! がっ!! ごっ!!」


 直撃を受けて後退させられた伸に向かって、バルタサールの連打が襲い掛かる。

 ダメージにより、伸の反応が遅れる。

 そのため、連打を防ぐことができず、伸は攻撃を受け続けた。


「しぶといっ!!」


「うぐっ!!」


 顔面に向かっての連打。

 それが伸にヒットしているが、伝わってくる感触から芯に効いているとは思えない。

 というのも、反応が遅れつつあるといっても、伸が僅かに急所からずらしているからだ。

 相当集中しているようだが、顔面への攻撃に意識が向きすぎだ。

 そのため、バルタサールは空いているボディーに向かって拳を打ち込む。

 それが腹に突き刺さり、伸の上半身が僅かに前のめりになった。


「くたばれっ!!」


「っっっ!!」


 前のめりになる事でがら空きになった伸の顔面目掛け、バルタサールは渾身の右ストレートを打ち込む。

 それが直撃した伸は、猛烈な勢いで吹き飛んで行った。


“ドンッ!!”


「…グ、グフッ……」


 吹き飛んだ伸は、そのまま会場の壁にぶつかることで止まる。

 強かに背中を打ち付けた伸は、そのまま座り込み血を吐きだした。


「…うぅ……」


 立って戦わなければ殺される。

 その思いから立ち上がろうとする伸だが、体が思うように動かない。


「……動けないようだな? それもそうだろ……」


 ここまで自分を追い込んだ時点で敵ながら天晴と言いたいところだが、所詮伸は人間だ。

 いくら魔力による身体強化をしているからと言って、魔族の自分とは肉体の耐久力が違う。

 最後のラッシュを受けてまだ戦えたとしたら、魔人並みの耐久力の持ち主と言わざるを得ない。

 伸が立ち上がれない様子を見て、バルタサールは納得の言葉を呟いた。


「……どうやら他の奴らはやられたようだな。チッ! オレガリオまでもか……」


 伸が立ち上がれないことを確認し、バルタサールに余裕ができた。

 その余裕から、バルタサールは他の魔人たちの様子を探知魔術で確認する。

 すると、生きているのは極僅か。

 予想以上に名家の者たちが配下を配置していたことで、数的不利な状況だったことからこの結果は仕方がないが、転移魔術が使えるオレガリオまでも殺られていることに、思わず舌打ちがでた。


「まあいい、今日の所は伸という世界最強の人間を始末できたことだけで良しとするか……」


 自分をここまで追い込めるような人間が、この世界にいるとは思えない。

 貴重な転移魔術の持ち主だが、手に入らないのなら諦めるしかない。

 そう考えたバルタサールは、右の拳に魔力を集め始めた。


「ハアァーー!! くらえ!」


“ズドーーーンッ!!”


 止めを刺すため、接近したバルタサールは伸に向かって魔力を集めた右拳を思いっきり振り抜いた。

 それにより、周囲に轟くような大爆発を起こした。






◆◆◆◆◆


「ハッ!!」


「ギャッ!!」


 柊家当主の俊夫が刀を振り下ろす。

 それにより、魔人の首から血が噴出し、物言わぬ躯へと変わった。


「……フゥ~、終わったか……」


 魔人の1体を仕留めた俊夫は周囲を見渡す。

 多くの魔人の出現に戸惑いはしたが、柊・鷹藤をはじめとした名家の者たちがこの会場近くに配下の者を配置していたおかげで対応することができた。

 それにより、魔人たちを殲滅することに成功したようだ。

 魔闘師たちにも被害はあったが、この場に生存している魔人はいなくなった。


“ズドーーーンッ!!”


「「「「「っっっ!?」」」」」


 魔人の殲滅成功し、一安心していた俊夫をはじめとする魔闘師たちだったが、その気持ちを吹き飛ばすような爆発音と振動が伝わってきた。


『……あっちは、新田君の行った方向……』


 音のした方向に目を向けた俊夫は、すぐに伸のことが頭に浮かぶ。

 魔人の中でも一際異質な魔力を纏っていた者と共に、伸が移動した方向からの爆発音だったからだ。


「死なないでくれよ……」


 もしかしたら、先程の爆発音は戦いが終わった音なのかもしれない。

 あれほどの魔人相手となると、いくら伸でも勝てるかどうか分からない。

 心配になった俊夫は、爆発音のした方向へ思わず走り出した。



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