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第274話

「ぐっ!」


「がっ!」


 伸とバルタサール、両者の左拳が相手の顔面を殴りつける。

 攻撃を受けた両者は、後方へと弾かれる。


「ハァ、ハァ……」


「フゥ、フゥ……」


 両者共に服はボロボロになっており、顔や体の至る箇所には傷や痣ができている。

 疲労から息を切らしながらも、両者は相手のことを睨みつける。


「ハァー!!」


「ガァー!!」


 少しの睨み合いの後、両者同時に動き出す。


「がっ!!」


 お互いの距離が詰まり、先に速度で勝る伸の右フックが当たる。


「うぐっ!」


 攻撃を受けながらも放ったバルタサールの左ボディーが、伸の腹に突き刺さる。


「ハッ!!」


 ボディーを受けて一瞬動きが止まった伸に向かって、バルタサールは追撃となる右ストレートを放つ。


「っ!! シッ!!」


「がっ!?」


 右ストレートをダッキングで躱し、伸はそのまま飛び膝をバルタサールの顎にお見舞いする。

 膝が入ったバルタサールは、仰け反るようにしてたたらを踏んで後退する。


「ハッ!!」


 チャンスとばかりに伸が追い込みをかける。


「フンッ!!」


「っ!?」


 距離を詰めてくる伸に向かい、バルタサールは仰け反りを利用してバック転をしながら蹴りを放つ。

 いわゆるサマーソルトキックだ。

 それに気付いた伸は、何とか腕をクロスして直撃を回避する。

 しかし、そのガードでは攻撃を抑えきれず、伸の両腕が跳ね上がり、完全に無防備な状態になってしまう。


「ハッ!!」


「ぐあっ!」


 隙を逃さず左ストレートを放つバルタサール。

 それが、無防備になっている顔面に直撃し、伸は後方に吹き飛ばされた。


「ぐうぅ……」


 吹き飛ばされ、何とか受け身を取った伸は、すぐに立ち上がろうとする。

 しかし、蓄積したダメージにより立ち上がるまでが鈍い。


「ハアァー!!」


 何とか立ち上がり、中腰姿勢の伸の顔面目掛け、駆け寄って来たバルタサールは飛び蹴りを放ってきた。


「っ! ハアッ!!」


「ごっ!!」


 バルタサールの跳び蹴りを、伸は体を捻ることでギリギリのところで回避する。

 そして、その捻りを利用して、そのまま後ろ回し蹴りをバルタサールの横っ腹に打ち込んだ。

 それにより、バルタサールの口から血が飛び散る。


「このっ!!」


 蹴りを受けたバルタサールは、口から血を垂らしながらも、伸に向かって左拳を伸ばしてくる。


「シッ!!」


「がっ!?」


 反射的に出されたバルタサールの左ストレート。

 それを右手で受け流し、そのまま懐に入った伸は左フックをバルタサールの顔面に打ち込んだ。


「ぐうっ!」


 これまで通り、バルタサールは殴られつつも反撃に出る。

 振り回すようにして、バルタサールのロングフックが伸へと迫る。


「ハッ! ハッ! セイッ!!」


「がっ! ぐっ! ごあっ!!」


 バルタサールの攻撃を躱しながら、伸はステップインする。

 そして、がら空きになっているバルタサールの顔面に、右・左とワンツーを放ち、力を込めた右ストレートを打ち込んだ。

 それが全弾命中し、バルタサールは吹き飛んだ。


「ぐ、ぐうぅ……」


「ハァ、ハァ、ハァ……」


 ヨロヨロと立ち上がるバルタサールを、伸は息を切らしながら見つめる。


「ハァッ!!」


「っ!!」


 少しの休憩を取った伸は、体勢を整える前に追撃を加えようと距離を詰めようと動き出す。

 それを見たバルタサールは、左手から魔力球を放ち、伸の接近を阻止しようとする。

 直撃するわけにはいかないため、伸はそれを咄嗟に横に跳んで回避する。


「ハッ!!」


「ぐっ!!」


 魔力球を躱して体勢の崩れた伸に向かって、バルタサールが突っ込む。

 距離を詰めると同時に、右ストレートを打ち込んできた。

 伸は、それを左腕でガードすることで防ぐ。


「ハアァーー!!」


「ガアァーー!!」


 そこから両者は攻防を繰り返す。


『どうしてだ?』


 殴り殴られ、蹴り蹴られの攻防を伸と繰り返しながら、バルタサールの頭では疑問が浮かび上がっていた。


『魔力で勝る自分が、どうして伸と互角なのだ?』


 伸の魔法陣攻撃によって、負った傷の回復に大量の魔力を消費することになった。

 しかし、それでも魔力量では自分の方が勝っていた。

 魔力量のみで勝敗が決まるという訳ではないことがあるが、それは魔力量の差がそれほど大きくない場合の話だ。

 伸と自分では、魔力量は1・5倍近くの差があった。

 そもそも魔人としての身体能力が高い上に、 身体強化に使用する魔力は自分の方が上。

 それなのに、戦いを続けているうちに互角になってきている。

 むしろ、自分の方が若干押されてきているように思える。

 その理由が、バルタサールには理解できないでいた。


「ハアッ!!」


「がっ!?」


 互角の攻防だったが、その均衡が崩れる。

 顔面を殴られたバルタサールが、苦し紛れに振った右拳が、伸の顎に直撃したのだ。


『ここだっ!!』


 運も実力の内。

 今までそんなことを思ったことはないが、今はこの言葉が思い浮かんだ。

 魔王にまでなった自分が、運に頼ることになるなんて思いもしなかった。

 だが、今はそんなことどうでも良い。

 このチャンスを利用して、伸に大打撃を与える。

 そう考えつつ、バルタサールは伸へと襲い掛かって行った。



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