Side Story:兄弟の3日間〔1日目〕
最新話更新です!本日はおまけのお話、キーンとディルの2人だけの3日間のお話です!是非最後までお読みください!
キーンは袋を強く握りしめた。
(ユン君の実験が上手くいっていればいいんだが…。)
その直後、全身をものすごい痛みと衝撃が襲った。そしてキーンは息絶えた。が、キーンのスキル【冥土の土産】によって、ディルは袋の中に入った石もろとも、粉々に破壊された。
そして2人の魂は、同じ場所で再び復活した。キーンが目を覚ますと、目の前には兄の顔があった。キーンは武器を取ろうとしたが、
「キーン…本当にすまなかった!!1人にしてしまった上に、お前を殺し、お前の仲間も傷つけた!だが、どういう訳か俺もお前も生きている…。頼む…もうお前を殺す気などない!だから、俺を殺して生きて帰ってくれ!それが今できる精一杯の償いだ…!」
頭を地につけ謝罪する兄を見て、武器をしまい、哀れんだ目で彼を見た。それと同時に、ユンの実験が成功していたことに気づき、安堵した。
「兄さん…それは違うよ。」
ディルはゆっくりと頭を上げた。
「俺は…ずっと楽しかったんだ。兄さんと一緒に居られた日々が。食べるものがなくて、盗みを働いた時も、バレてものすごく怒られた時も、酒屋で働いてた時なんかしょっちゅう客と喧嘩したもんだな。覚えてる?俺が酔っ払いに殴られた時に兄さんがやり返して店がめちゃくちゃになったの。あれは酷かったな…。兄さん、魔法まで使っちゃうから警備隊までやってきて…。結局仕事は辞めさせられたんだっけ。」
呆然とするディルを横目に、ハハっとキーンは笑った。
「でも、そんな日々がすごく楽しかったんだ。今でも思い出す…。」
しばらく沈黙が続いたが、ディルが口を開いた。
「辞めさせられたのはその後だよ。」
さっきまで聞いていた、冷たく哀しい声とは違う…懐かしいその声にキーンはドキッとした。
「あの後、酒屋の壊れたものを弁償しろって店長に言われて、こっそり酒を売って弁償したらそれがバレて…今度こそクビになったんだよ…。」
キーンは嬉しさやら懐かしさやらで胸がいっぱいになり、大きく息を吸い歯を食いしばった。
「そうだったそうだった!でもあのオヤジ、体はでかいくせに心はちっちゃくて、元々壊れてたのまで弁償させようとしてきたよな。ほんとムカついた!むしろ辞めれて清々したかも。」
2人は自分の目から涙が出ていることにも気づかなかった。夕日で真っ赤に染まった空に、明るく、優しく、暖かい2つの声が混ざり合い、広がっていった。そして、その声は次の夜明けを迎えるまで続くのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました!長い時間の作った2人の溝は、少しづつ埋まろうとしています…!是非次回もお読みください!




