発覚
バタバタバタっ…何やら騒がしい、なんぞあったのであろうか。
「すまぬのぉ、騒がしい寺で。拙僧は少し様子を見て参る故、中座させてもらいますぞ」
「ふむ、和尚構わぬ。少し話も行き詰まっておったゆえ小休止しようと思っておった。できたら水でも所望したいのだが…」
そう代表して答えたのは尾張国守護代 織田大和守敏定であった。
「わかり申した。誰ぞに運ばせるよういって事図かっておきますぞ」
さて、騒がしい音は裏庭の方より聞こえてくるな…にしても、何があったのであろうか?小僧の智恩が女衆方に何ぞ粗相でもしたのであろうか?ん?バタバタバタ…足音が
「智恩何があった?説明するのじゃ」
「和尚!良い所においでなさりました。弾正左衛門様のお子の仙法師様が文字を書きイロハ歌を書いておられたのです。このことを仙法師様のお母上様に申しててから仙法師の様子を見て頂いたところこのような騒ぎとなってしまったのです」
「ほう?されど弾正左衛門殿のお子とあらば…赤子ではないか!?まことか?」
「まことにございます。私がこの目でしかと見ましたし、何より今も仙法師様は地面に字を書き筆談しておられます」
「にわかには信じられん。そんな仏の使いか妖のようなことが…ともかく、お主は御堂へ皆様分のお水を運んで参れ。あと、その際に仙法師様のお父上の弾正左衛門殿と祖父君の大和守様を呼んで参れ」
智恩は承知すると駆けて行った。にわかには信じられぬがあやつがあそこまで狼狽している様を見るに本当なのだろう。ともかく今は裏庭へ行かねば…