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 ふんふん…彼の生臭坊主は歴史に名を残すだけあってその行いには含蓄深いものだ。何せ、他宗派である経豪法主すらその奇行とも取れる行いを法話として話す程なのだから。

 尤も、行い自体は誤解を生むような事柄が多い故に時に非難を生む事もある。ただ、その当事者とならねばこの様に面白おかしく話す事でただ堅苦しい法話とならぬからこそ、最も世俗的なれど逆に最も仏教的哲学に富む故に禅師の魅力となるのであろう。

 

 そうこうしているうちに、辺りに程よい味噌の香りが立ち込めた。すると、半蔵が法主へ合図を送ると程なくして法話を締めた。なるほど…人々の集中力を見計らい締めるとはできる僧侶とはこういうことなのだろう。

 その様に感心しながら、人々が炊き出しにありついているを眺めていると経豪法主が輪を抜けて近寄ってきた。

 「仙法師殿、炊き出しの喜捨改めて御礼申します。彼様に乱れた世なれば民草も喰うに困るのは必定なれば、また多くの要らぬ争いが起きてしまいまする…」


 「げに法主の申す通りと思います。故に、小力なれど炊き出しの行を開く場があり、行えた事を嬉しく思います」


 「ほう…仙法師殿は幼いながらも彼の一休禅師が申していたように実に立派な心掛けをお持ちであられる。左様に、慈愛ある御心なれば拙僧の弟子となりませぬか?名を残す僧と成れるでしょう」


 弱ったな…僧侶ってのは少し美辞麗句や綺麗事を行えば清純派を増やそうとでもするものなのか僧へ誘ってきやがる…逆に言えばそれだけ清純派を気取れる僧が減っているとも言える…正に末法の世だな…


 「いやいや、禅師にも誘われましたが辞退させていただきます。愛あれど力なくば救うこと能わず。乱世は力なくば生き残れませぬ故に…されど力だけに溺れれば必ずやその歪の報いが己に帰って来ましょう。故に力あるものは愛を忘れてはいかぬと心得ております」


 「むむむ…もはやある種の悟りの境地に至っているかのようの武士ぶり…惜しいですが仕方ありませぬ。これよりもその心意気を失わない事を願っております」


 ふぅ…上手くかわせたな、力愛不ニって真理な上に便利だな〜


 「しかし、先程仙法師殿が申されたように世は乱世…衣食足りねば礼節を知ることもできず、そしてそれを教えるはずの僧侶らも貧すれば鈍する様に貧すれば野垂れ死に残るは富たる徳なき僧の皮を被った餓鬼のみにございます。そして恥ずかしながら我らもこの通り貧しております…拙僧の悪き耳といえども仙法師殿ら織田様方が朝廷や幕府への多くの御献金あそばされたことはよくよく聞こえまする。どうか…何卒幾ばくかの喜捨を願いたいのですが…」


 そう言うと大衆の面前で土下座とな…流石は浄土真宗…権力者への取り入り方が凄い。口で攻め理を説き情で靡かせんとする…そしてこの為に多くの人を集めたのか!大衆の前では断れぬしその量、額も武家としての格が問われる故に見栄をはらされる…

 計算通りと腹の中では思っているだろうよ。しかも悪いと言いながらも明らかに謙遜である。耳があることを露骨に主張する…やはり武家以上に侮れんな


 「ははは…法主、その様に成されては我ら面目が立ちませぬ。元より承知しております故にどうかお顔をお上げ下され…但し、条件があります…それは決して法主に不利益ではござりませぬ」


 「忝ない!真有り難きにございます…拙僧にて出来うることならば何なりともいたします!」


 そう言い切ると経豪法主は慟哭とも言える声を上げた。その様子に釣られるかの様に周りの信徒は泣き喜びながら辺りをざわめかした。


 「どうか面を上げて下され!!喜捨等に関してこれからの事を相談させていただきたい。どうか場所を変えて詰めましょうぞ」


 その様に言い経豪法主を落ち着かせながら場所を変えたのだった。




遅筆で申し訳ないです…

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