表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/71

期待

 「千代、そなたの他に家中にて古典や和歌に造詣が深い者がおったとは知らなかったぞ」


 唐突に我が夫の弾正左衛門が言った。はて、なんのことか検討もつきませぬが…


 「殿、いきなりどうしたのですか?わらわにはなんのことかさっぱりわかりませぬ」


 「すまぬな。いやなに、下男の与助が庭を清めていたら桜の木の下で何やら文字らしきものが書いてあるの見て気になったようで小物頭の金介に聞いてみたところ(唐衣着つつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ)と書かれてあったそうだ。それを沢玄和尚に聞いたところ伊勢物語にある在原業平公の和歌だったそうだ」


 「まぁ、そんなことがございましたの…確かにそれはそれは…書いた者は風雅を知る者と見受けまする」


 「そうであろう。太田道灌殿の山吹の例もある。我が家中に古典を知るものがいるならば誉れなれば教えを請うことは恥ではない」

 「そうですね。ただ、私の知る範囲ではやはり検討もつきませぬが…ただ、今日は仙法師らをお松の子や平手の家の子らとともに庭で遊ばせていたのですが…そのような事をしている者はわらわの知る範囲では知りませぬ…」


 「そうか…まさか子らが知る訳がないからのぉ…まぁ、ともかく家の者には誰か見当が付くものが居らぬか聞いておいてもらってみる。お主も一応聞いておいてくれ」


 「わかりました…あと、古典本格的にお学びになさるのならわらわも実家より本などを取り寄せられぬか働きかけてみせまする。」


 「すまぬな。忝ない」


 しかし、不思議なこともあるものですね…子らが居なくなった後にでも書いたのだろうか…何がともあれ実家に文をやらねば… 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ