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出仕 後

  1481年文明13年 2月初旬 山城国 洛中 小川御所


 御台所 日野富子と将軍 足利義尚に有名な和歌の解釈や漢詩と本朝古典との関連について話していると廊下よりドタドタと足音が近づいて来てその音の持ち主が顔を出した。


 「富子よ、仙法師は余が招いたのだぞ!独り占めしようとするでない!!」


 自分のお気に入りの玩具を横取りされた幼児のような態度で来たのは大御所 足利義政 であった。


 「ややわぁ〜、独り占めなんて。我が君こそ独り占めしようとしたんやないか。こんなおもろい子を」


 と日野富子が切り返し悶着をし始めた…仲良くしろよ…いや、これはこれで仲がいいのか?

 そんな事を考えていると大御所様の近習に手招きされ別室にて落ち着くのを待つこととなった。


 「招いて置きながら遅くなり面目ない。余がもっと気を回すべきであった…」


 「いえいえ、滅相もございませぬ。半ば公式ではないとしても上様にお目にかかれた故、望外の誉れにございます」


 「そう言ってくれると余としても儂としても面子が立つというものだ。すまんのぉ…そういえば、献上の品があっと聞いている重ねて大義である」


 「はは!もったいなきお言葉にございます。ただあちらはあくまでも【幕府】への献上でありまして…自分の従者に後で目録を渡すように申し付けますが聞けば大御所様に至りましては居を移すとの【お話】を耳にいたしましたので【大御所】様自体への献上し仕りたい儀がございます」


 「おお!中々耳聡いではないか!そうなのだ…この小川におっても少なからず此度のような事が起きてしまう…外の争いに辟易していると言うのに内輪の争いともなるとな…それに義尚のこともある…儂がおると気も遣うであろう…」


 「心中お察しいたします…つきましては手始めに金一貫及び銭一万貫を献上致します!」


 「おお…なんと…詳しくは聞いておらぬが【幕府】への献上よりもだいぶ多いのではないか?なにゆえ、この隠居如きに大層なものを…何が望みぞ?」


 そう言うと今までの少し疲れた平凡な中年男性から確かな覇気と威圧を感じる為政者への顔付きへと変わった。


 「はは!正直に申せば、我が主君たる治部大輔様の尾張下向への許可と根回しへの協力。また下向した際の諸々政策への白紙委任。そして我ら【弾正忠】家自体にたいして東海における西軍勢力追討の【御内書】を賜わりたく存じます」


 そう申すと難しい顔付きとなりながら思案し始めた。そして、続けてに口上した。


 「また、自分個人としてではありますが…大御所様のお考えあそばされお造りになる【大御所】を見てみたく思いこの度は献上させてい頂きます。それ故にこれっきりではなく継続して献上させていただく所存にございます」


 そう言うと、元の平凡な中年男性の雰囲気と顔付きへと戻り唖然としたかと思うと笑い始めた。


 「そうかそうか!やはりそちはただの稚児にあらず。ものをよくしり好む余らのような数寄がわかる者よ!!そして何より正直じゃ!ますます気に入ったぞ。よくわかった!宜しく取り図ろうぞ」


 そう言うと近くに来いと呼ばれ遠慮がちに近づき目の前まで近寄りこれからの【大御所】計画への構想を共に喜々として話し合うのであった。




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