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塩畑城攻防 後

1480年文明12年12月大晦日 海東・中島郡 塩畑城


          織田良信


 昨日の戦闘の後に日が暮れてから敵陣ではひと悶着あったようだ。服部左京進率いる服部党が慌てて彼奴らの領地の方へ繰り出して行った。察するに仙法師達率いる足軽衆が予定通り荷之上城を落としたのだろう…

 その動揺の隙を突いて小規模の夜討ちを城主である俺自ら仕掛けかなりの戦果を上げた。これで、味方とは言え服従したばかりの蜂須賀党にも我ら弾正忠家ひいては大和守家の武威を示せたに違いない。

 彼ら蜂須賀党も昼の攻防においては粘り強く強靭で効果的な連携を以て戦闘にあってくれたことが確認でき、つくづく彼らを服従させれたことは大きいと思いながら我が倅 仙法師に並々ならぬ将たる器を感じた。親馬鹿なのであろうが鳶が鷹を生むとはまさに事よ…まぁ最も、我が父から俺が受け継げなかった才をより濃く出てくれたのかも知れぬ。


 さて、夜が明け敵方も夜襲への備えから開放された故に盛んに炊煙を上げながら今日の戦闘へと備えている。こちらも遅れを取らぬように食事を取り、持ち場や装具を確かめた。

 すっかり朝日が登り朝の柔らかな日差しの中敵陣ではまたもや動きがあった。囲みを解けない程度の人員を残し敵方は清須の方へと陣を向け物見を出していったようだ…察するに予定通りのようだ。あとは仙法師達と清須の本隊を待つだけのようだ…


       清須城外 織田仙法師


 我ら足軽衆は岩倉城を制圧後に清須衆たる本家らと連絡を取り岩倉城を受け渡した。そして、揃っている人員より逐次塩畑城へと進撃するように具申をしたのだが…我が祖父の嫡子で時期当主の織田五郎久定(後の寛定)が何かと理由を付け塩畑城へと兵を送りたがらない様子であった。対面し話を聞く限りはなぜか自分を含め弾正忠家、ひいては我が父上が嫌われて疎まれている感触で、隠しきれておらぬ悪意を感じた。

 その様な有様であったのでどうにか、本家の旗印だけを借り受け我ら手勢だけで行くこととなった。尚、人足衆も連れて行こうとしたがすごい剣幕で拒否された…

 ともかく我らは塩畑城へと向った。途中の村々の百姓にできれば武装をしてもらいできない者も含め銭で雇い旗印を持たせ整然と塩畑城へ行進してもらった。

 三宅川の手前で百姓達に整列してもらいイ小隊より物見を出し敵方の様子見させた。敵方もこちらに気付いてる様で敵陣はこちらにジワリと押してきながら先鋒がゆっくりと向かってきているとのことであった。

 それを以て足軽衆を集め激を飛ばした。

 

 「皆の者!敵方はこちらに気付き陣を押している。幸いにも敵方は百姓らを清須方と誤認しているのか我らが小勢であるとはわかっていないようだ。これより我らは敵方へと最終の結を下す!各々の不屈の気力体力以てしてこれに当たる。我らが【小筒】を以て敵を爆ぜ散らかしいるのを合図に城衆と挟撃する予定だ。勝利は目の前だ!一心不乱に駆け抜けよ!例の壺の隠し所に火をかけた者には銭百貫!伊勢守の首を上げた者には銭二百貫だ!何一つ迷うことなく伊勢守の首を目指そうぞ!」


 そう口上し鬨の声を上げたとともに一挙に敵方へと躍り出た。敵方も我らを先鋒と思い一当て程度と思ったのか槍衾を取った。そんな密集している中に幾人かが火がついた【小筒】を敵に投げかけ次の瞬間には轟音と爆風共に敵が乱れたその隙を我らが切り込み突喊していった。

 

         塩畑城 織田良信


 東より戦闘の騒音が聞こえ次の瞬間には雷かと思うほどの爆音が鳴り響いた。それをきき俺は辺りの者に指示を出し敵方へと駆け抜けた。

 敵は先鋒が崩れ潰走しているのを見て立て直そうとしている様子だったので我らの突撃に更に動揺が増したようだった。そうして我らも事前に仙法師から渡された【小筒】を投げ入れ轟音と爆風と共に切り込んで行った。

 敵は一瞬だけ堪えた様子ではあったが次々と切り込まれ堪えても【小筒】の爆風にされされもはや組織的な抵抗ができないでいて、統制も取れていないようだった。

 我らはともかく伊勢守の首を目指し切り縫って行くと馬の下敷きなっている見目のよい装具をした武者にであった。盛んに逃げるなや助けろと声を上げている様子でよく見れば織田伊勢守敏広 その人であった。


 「おい!逃げるな!我を助けよ!お主らの主は儂ぞ!」


 「伊勢守殿とお見受け致す。御首頂戴致す!御免!」


 「そ、そちは敏定が倅!ま、待て講和じゃ!話を…」


 馬廻り共に槍で突き刺した後、首を取った…自分から和を破っておいて図々しい奴だ…などと思いながら鬨の声を上げ首を掲げ敵に投降を促した。


 ここにおいて戦は終結した。それは澄み渡る冬晴れの日であった。




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