初陣 出陣
1480年文明12年12月末 未明 塩畑城
夜が深まりきり新月による闇が覆う。辺りを放射冷却によって身に刺さる冷たさが支配する中、自分の寝床に静かに政則が声を掛けた。
「仙法師様、伊勢守家軍勢岩倉城に集結との由にございます」
「うむわかった。足軽衆と蜂須賀一党に陣触れだ。直ぐに大野城に遣いを送れ。清須と父上にも知らせておけ。人足衆は清須にとどまりそこで指示を仰げ 行け」
政則は承知すると直ぐ様部屋より駆け出て行った。自分も起き上がり女中を呼びつけ湯漬けを所望し、味噌玉と乾飯の入った袋と厚着を用意させ鎖帷子を着た。
ドタドタドタと足早な音立てながら母である千代がやってきた。
「仙法師!何故そなたが出陣せねばならないのです。戦はお父上様に任せなさい」
「母上、自分とて武士の子です。そして何よりこの戦は我が家の存亡がかかっております。そのような戦に将が引き篭もり震えていては勝てる戦も勝てませぬ。将が先頭に立ち指揮をとってこそ将が将足れるのですから では御免」
半刻(一時間)ほどで武装を終えた足軽衆と伍長を務める武士が揃った。武装の点検行わせと背負子母衣を身につけた一番体格の良い武者に背負ってもらい船着き場へと向かった。
船着き場に着くと既に蜂須賀党による川船が揃っており党首の小六が兵を率いて整列していた。
「小六!参陣大儀。状況を報告してくれ」
「おう!現在岩倉城に尾張上四郡の国衆と美濃の地侍にどこぞからの陣借共も集まりその数凡そ8000と受ける。あとは統制次第を整え、陣借衆を一門衆に統制させ先陣とさせるらしい。また、河内の服部党も足軽を集めるために既に村々に陣触れ出しているようだ。夜明けには両軍勢はこの城にぶちあたるだろうよ」
「宜しい。皆の者!我々足軽衆は直ちに萩原川を下り津島へと前進!事後、夜明け前に佐治駿河守率いる佐治水軍と合流。その後素早く移動し機を計り服部党根拠の荷之上城へと進軍しこれを攻略 足軽衆は以上
蜂須賀党は水夫以外は塩畑城に入場し持ち場を確認し防衛に当たれ!水夫衆は別命次第河内に参集せよ 以上!!」
其々が威勢よく返答をし小六と目配せをし頷き合った。
「皆の者!家党御身の興亡はこの一戦にあり。各々耐忍奮戦せよ!いざ!!」
改めて鬨の声を上げ粛々と川船に乗り込んだ。辺りは川面から登る霧が立ち込め我々を包むように纏わり川を下って行くのであった。




