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幕間 訓練教養

  1480年文明12年 10月 塩畑城 評定の間


 分家である弾正忠家の足軽共の訓練を手伝えと我らが主のご嫡男 織田五郎寛定様に命じられ参ったがどうやら他にも見知った顔がちらほらおるな…んあれは


 「おい、富之助!久しいな。お主、よく弾正忠様にお仕えできておるか。わしもこたびは手伝として参ったぞ。なんでも足軽を雇ったとか。どこぞがきな臭いのか?」


 「金左衛門の叔父上!お久しゅうござる。おかげさまで弾正忠様よりご嫡男である仙法師様の側仕えとなりました。此度の足軽の件も仙法師様のご発案にございます」

 

 そう言うと信勝(溝口富之助)の叔父である溝口金左衛門義勝は興味深そうに口を開いた


 「我が主や風聞で漏れ聞いてはいるがやはりとびきり変った童子であるようだな仙法師様は…商人達に話を持ちかけては様々物を作り銭を集めているとは聞いていたが」


 「そうなのです。お側に侍るようになってからというもの様々な文物を作るために童子とは思えないような考えと行動で銭を集めさせられたり職人を集めたりしておいでです。しかし、今回は銭を使って足軽を集めるとは…」


 「最も、それらを遊楽に使うのではなくこの様に足軽などに使うとあらば少なくとも武士なお考えをお持ちなのだから、今までの行動を考えればとんでもなく計算高いお方なのだな」


 「しかし、なんにつけても我らにはその行動や考えが予想がつかないので何とも難しいのです…」


 「ははは!それが我ら仕える者の定めよ。お主も一端の侍らしくなってきたではないか!」


 そうこうしている間に我らを含め五十名ほどの者が揃ったところで小姓が先触れとして上座に侍り弾正忠様の到来を告げた。


 面を下げ礼に伏していると弾正忠様と一人の童子が足早に着席し早々に面を上げるように言われた。

 面を上げるとそこには凛とした表情をなさっている弾正忠様と幼児特有の紅顔ながら厳しい視線で我らを観察している我が主を彷彿とさせる童子が居た。


 「皆の者、参上大儀。此度は足軽共の訓練をそなたらに実施してもらうする為に集まって貰った。詳細は我が倅 仙法師より説明する」


 「各々方、此度は我ら弾正忠家が先日より新たに募っている足軽の訓練をお頼み申したい。ついてはまず選別を行って貰いたい」


 仙法師様は近くの小姓に何やら合図をした。すると我らに何やら冊子が配られ一枚目を開き見るように指示された。


 「まず、一枚目に選別の基準を書き表したので、それぞれご質問がある様ならば応えます」


 すると以下のような事が書かれていた。


   選別ノ儀 勝手次第条々


 一、その者の顔を叩きその様子を観察する


 ニ、観察を加味し伍を作らせる


 三、威圧・恫喝・罵倒を行う


 四、その場で理不尽な懲罰を行う。その際は連帯させ懲罰を実施


 五、その際に途中で姿勢を維持させる 


 などと書かれており、夫々にやり方ややるべき具体的な行動が絵付きで説明されている…ただの百姓や流民にこんな事をしてどうするのだろう…そう思い疑問をそれぞれがぶつけていった。


 「一については叩くことでその者の気性を知る。睨むならば勝ち気であろうし場合によっては反抗的だ。逆に怯えるようなら心の弱い者だ。それらを見極めニを行ってもらいたい。当然出身の村落等も加味してほしい。そしてそれから三だが、一を更に踏み込ませその者の心を測ると同時に四につなげることで考える力と己らしさを消してゆくのだ。そして五で身体能力と精神力を試すのだ」


 何ということだ…我々は雑兵と言えども人間を犬畜生に堕とせというのか…


 「それらを試し観察した上で耐え抜いた者を選んでくれ。数は問わぬ。耐え抜いた後に宴をし夫々を労うつもりで、自分や父上も参加する予定だ」


 何という露骨な飴と鞭なのだ…仙法師様は修羅や悪鬼のような御心をお持ちなのだろうか…


 「選別後の訓練内容についてだが二枚目を見てほしい…」


 う〜ん、普通であるが何というか密度が違うというか…そもそもこれ自体は我々も参加なのか!なんたること!!


 そうして、集められた武士達は明日からの予定を見て苦々しい顔持ちとなりながら評定は続いていくのであった。

 



 

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