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賭博 後

 「ほぉ〜…俺がいったい誰なのかを見抜いた上で賭けに乗るたぁ、お前その歳に似合わず肝が据わってやがる。気に入ったぜぇ!よし!始めるぞ」

 

 厳つい顔から一転して子供のような表情を浮かべながら豪放磊落に笑い声上げ、そして既に遊戯を終えた博徒を呼び取り仕切るよう命じた…


 勝負のルールは10ゲーム1セットの3番勝負。1セット終了時により多くのチップを保有していた者が勝ちとした。そして、勝負の結果…


 3番とも自分の勝ちとなった…

 

 「あぁ…負けたぜ!完敗だ!!一度も勝てないってのは計算外だった。何せこの賭け事の当たりの目のことわりは何となく掴んでいたんだがな…理屈じゃあなく運が俺に付かずお前に向いていたんだろうなぁ…」


 そう小六は心底悔しそうな表情で呟いていた。


 「潔し!では勝者の権利を行使する。もう一つの【賭け】に乗って欲しい」


 「お、おう?まだ他にも賭け事を提案するのか?」


 「いや、然に非ず。まずは【はなし】を聞いて欲しい」


 そう言い、場所を変え二人きりになり【はなし】を始めた。


 「まずは蜂須賀殿」


 「そう改まらなくともいい。俺はお前が気に入ったんだ。小六と呼んでくれ。俺達の仲間輩、蜂須賀党じゃあそう呼ばれてる。あとな、実は俺はお前に謝って置きたいことがある。実に失礼した。俺を俺と知って訪ねて来る奴らははっきり言ってほぼ碌な輩はいない。ヤクザ者に浮浪人や香具師、或いは俺と善からなぬことを企み利用しようとする者達だ。だからこそ見極める必要がある。だからあんな対応をして見極めさせてもらった。すまねぇな、しかし、見極めた上に俺とお前は【盃】まで交わしたんだ。少なくとも俺達の認識では既にお前は仲間だ。だから遠慮なんて必要ねぇぞ」


 「では改めて小六殿、こちらも一つ謝りたい事がある。はっきり言って先程の賭けは自分がイカサマをしたんだ。すまなかった」


 そう言うと、少し驚きつつも納得が至った表情をした。そしてタネを明かした後に続けた。


 「この様に、札に仕込みをしておいたのだ。しかしながら小六殿になら解ってくれると思う。賭けも戦も同じだ、【算多きは勝ち、算少なきは勝たず】だ。小六殿の事を事前に調べさせて貰った。小六殿も事前に敵を調べ上げ必要とあらば懐柔又は脅迫し以て戦に望み勝つ。そうして尾張だけではなく美濃や北伊勢に勢力を伸ばしていったということを…故に、自分も調べ策を練り今に至ったのだ」


 そう言うと突然小六は暫し待てと言い中座した。そして、暫く経った後、部屋に入って来た。そして、その姿は先程までの無頼者のような服装ではなかった。そこには正装し威風堂々たる侍となった小六がいた。そして…


 「これよりこの蜂須賀彦右衛門正家及び蜂須賀一党、仙法師様を主と仰ぐ所存!!」


 そして、口上を述べてから面を上げいたずらが成功した子供のような表情でこう言った。


 「我らが殿よ!どんな【賭け】だろうと俺達は乗ってやるぜ!!」


 「その粋や良し!これより励め!」


 そう言った後、改めて【賭け】について話したのであった。



  

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