賭博 前
1480年文明12年 9月下旬 海東郡 蜂須賀村 蜂須賀屋敷
さて、簡潔に今自分の置かれてる様子を伝えるならば…賭場であからさまに無頼なヤクザ者に、しかも明らかに血走った様子の…囲まれている だ。
時を少し遡ろう…自分は萩原川などの小河川だけではなく尾張・伊勢・美濃の大動脈である木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)の水運における影響力をこの頃拡大している蜂須賀彦右衛門正成を懐柔に出かけた。
泥合戦で仲良くなった童子の村の者に聞けば近くの蜂須賀村なる村落にこの付近を治める蜂須賀の頭の屋敷があるとのことを教えてもらえた。ただ、自分のような子供が近寄るべき場所ではないと強く諌められた。
しかし、そんなことで諦める筈もなく政則と信勝を連れて行くこととなった。なんでも事前に風聞を聞いたところ水運の水夫や無頼者、浪人に足軽などが入り乱れ屯し(たむろ)賭場となっているとのこと。そういう者共ならばと、清酒ととあるものを手土産に赴いた。
屋敷に入ると何やら厳しくピリピリした独特の雰囲気のなか家人かも怪しい者にぞんざいに通され待機させられた。しかし、通された部屋はそこらかしこで絶賛勝負中の無頼者達がしのぎを削る部屋であり、自分の姿をみて威圧をし嘲笑う者に晒さらされるのであった。そんな雰囲気と様子に珍しく政則が怒気を発し信勝も苛つく一触即発な雰囲気が立ち込めた。
そして自分はそんな空気を蹴破るように言葉を発したのであった。
「おのおのがだ!失礼する。我は仙法師と申す者だ。この場をとりしきられる親方様にご挨拶とご一献差し上げたい。さぁ!!」
すると屯していた中から大柄でいかにも厳しく強面の男が口を開いた。
「おう。俺がこの場を取り仕切ってる小六って者だ」
「改めて失礼する。自分は仙法師だ。この場に似つかわしくない風体であり以て場に水を指してしまっており失礼する。されど我々もまた志ありて参った故平にご容赦を。ついては手土産として清酒なる酒を持って参った。皆様方に振る舞いたいがまずは親方様にと思い一献献上いたしたい」
「うむ!その心がけや良し!一献頂こう」
そう言い一献差し出すと気風よく飲み干し、返盃しこう言った。
「大変美味であった。仙法師よ、さぁ」
そう言われ信勝に目配せをし盃にごく少量を注いでもらった。
「若輩者なれ御免!」
そう言い自分も飲み干したのであった。そして…
「もう一つ、献上したき品と儀があり申す」
そういうと政則に品を並べてもらい、自分が説明をした。その品とはズバリ「トランプカード」である。そこの皆には絵数札と言い説明し、ゲームを提案した。それは、「ブラックジャック」だ。ブラックジャックは配られたカードの合計点数を21点、もしくは21点により近づいた方が勝ちとなるゲームだ。また、細かいルールをカードを手に取り実例を示して説明していった。
それから、見ていた無頼の者を募いチップとして銭をそれぞれ配り実際にやって貰った。そして、その様子を小六に見て貰いながら言った。
「どうでしょう。新たな勝負事として献上したいのですが」
そうして、少しずつ白熱しプレイヤーが変わっていくゲームを見つめ小六は口を開いた。
「ああ!面白い。確かに胴元としての観点からも上等な勝負事と思うぜ。ただな…お前にここまでしてやられるのは漢が廃るってもんよ。大体この勝負を掴んだ!サシで勝負をしよう。そうしたら、俺は俺のできる範囲で何でもしよう。ただし、負ければお前を追い出した上に二度とこの場には立てないようにする。どうだ?やるか?」
「ああ!受けて立とう!【蜂須賀殿】!!」
今日から通常通り本業が始まったので不定期更新となります。
鋭意努力するつもりですが次にまともに更新するのは今日より45日後とお思いください。