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披露

  1480年文明12年 7月 塩畑城 書院


 「ごだんしょうちゅうごめん。センホウシにございます。」


 そう言い、父 良信と可田屋勘兵衛とが談笑しているのが聞こえた書院に声をかけ入った。可田屋は会釈をし母は父のやや下座近くに座り、何故か自分は父の膝の上に「置かれた」…なぜだ…

 父には「あの…ちちうえ…」と不満を言おうとしたが父は満面の笑みで「ん?」とのぞき込まれなんとも言えなくなったので諦めるしかなしと意を決し可田屋に目を向ける。が勘兵衛のやつは生暖かい目で自分を見てやがる…気に食わん…


 「かんべいどの、なにがおかしいですかな。まぁよし。はなしがありますゆえこたびはこのようにあいなりました。しかして、これをみてもらいたくおよびしました」


 女中に声をかけ例の品を持ってきてもらい、父と可田屋に配る。例の品は朱色の盃にそれは注がれ置かれたのであった。それを父と可田屋は興味深そうに見ている。父の膝から降り父と可田屋を左右に見るところに座り直した。

 

 「ちちうえ、かんべいどの。これをおのみください。けっしてへんなものではありません。さきにもうしておきますがおみずでもありませぬぞ。ただ、このあつさのなかゆえじぜんにいどみずにてひやしてあるゆえかんろのごとくうまきものかと。ただいっきにあおりなさるな」


 そういうと、おもむろに可田屋から含み、それを見てから父も飲んだ。すると


 「仙法師様!これは実に美味なる酒にございます。この可田屋生まれてこのかたこれよりも旨き酒を呑んだことございませぬ」 


 そういい、父も驚いた様子ではあるが既に顔が真っ赤である。どうやらアルコールに弱いのだろう…そう言えば織田信長公もあまり酒を嗜まなかったようなので酒に弱い遺伝子があるのかもしれない。最も、織田信秀公は強かったらしいが…ただ、そもそも父まだ15歳(数え歳)なのでそういう問題も無いとはいえない。ちなみに母は17歳(数え歳)だ。


 「センホウシ…うまいなぁ〜この酒は…ひっく…まだぁあるのかぁ?」


 急いで女中を呼び、決して酒ではなく水と真桑瓜、水飴などで誤魔化してくれと頼み、母に介抱されながら下がってもらった。


 「しゅうたいをみせてしまいましたな。しつれいいたした。できれば、わすれていただくとありがたい…」


 ええ…はい…と可田屋答えながらなんとも言えぬ気まずい雰囲気となったが続けた。


 「のんでいただいたのは、しぶんがあたらしくかいはつした(清酒)なるものです。すみ きよらなるおさけであるゆえこうなずけました」


 「はぁ…実にみごとで美しきお酒にございます。して、どうしてこれを?」


 「このたび、ちちうえがなかじまぐんをへいていし つしましゅうとも わぎとあいなりました。ゆえに、しんぼくをふかめ よりわれらにきょうりょくさせるためにも このせいしゅをつかい りをもってかれらにあたりたいとおもいつくりました。」


 「深く遠いはかりごと、まるで古の司馬仲達もかくやとまさしく神童・仙法師様ございます。いやはや、この可田屋、感に堪えません」


 こやつも、酔ってるのではないか?いつもよりおべっかがひどいので胡散臭さが立ち込めまくっている。


 「まぁ、おちつかれよ。そして、これをつしましゅうにみせたいとおもう。そこでかんべいどの、つしましゅうとなかをとりもっていっせきもうけてほしい」


 そういうと先程の胡散臭さは立ち消え、この部屋に二頭の獰猛な獣の笑みが溢れた… 



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