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一歩

 祖父 織田大和守敏定 に命じられ、知りうる限りの古典や和歌について纏めることとなった。しかし、一字一句総てを思い出せるわけではないので、母の伝などを頼り、手習いがてら写本をするとともに内容について注釈や一部口語的直すなどして書き下しを行う形で纏めていった。とは言え、まだまだ体は赤子なので眠くなれば寝るとしている為か遅々として進まなかった。


 それから、約一年程かけ何作品かの注釈本と書き下し本を書き上げていった。その間に祖父は守護 武衛(斯波)治部大輔義寛公と共に越前・朝倉氏討伐に向かったらしい。ただ本人は在京し討伐軍の後方支援や幕府・公家衆などとの渉外に忙しいらしい。

 それらとの付き合いの為に古典等の教養を身につけることを欲したのだろう。

 そして、一時的に帰国したとの知らせを受け、祖父の居城である清須城に献上する運びとなった。


 1480年(文明12年)5月   清須城 城内


 「面を上げよ。仙法師並び千代殿、久しゅう。献上の品、真に大義である」

 

 上座に座り生真面目そうに一つの鋭い眼光をした敏定は言った。


 「御義父上、お久しゅうございます。仙法師、挨拶なさい」


 「おじじさま、おひさしゅうございます。まずは、いって としてのかずではありますが ごしょもうのしな、けんじょういたします。これよりもつづけて けんじょういたせるように はげむしょぞんです」


 言い上げると、いくらか厳しい顔から緩めた表情で自分を見つめている。


「ふむ、しっかりとし口上もまた見事である。仙法師、ついては褒美を与えようと思うが希望はあるか?」


 ほう、褒美か…領地や兵力といった直接的な権力に関わるものが欲しいが、そういったものを望んでは殊更に警戒されるだろう。そもそも、あったところでこのなりでは使いこなせるとは思えぬし…しかし、力が欲しいのも事実だ。よし!


 「おそれながら、おじじさま。センホウシはゼニとひとかめのみずあめがほしゅうございます」


 「銭か…武士もののふなれば銭に執着にするのは良くはない。ましてはお主のような年頃からな。しかし、此度は特別に与えよう。また、水飴とな…これもまた高価な品ではあるが良かろう」


 「ありがたきしあわせにごさいます」


 「お主は、子供なのか、はたまたそうではないのか見極められぬところがあるが…水飴とは中々に子供らしいところがあるではないか。儂も初めて食べた時には感激したものだ」


 これは…織田の血筋は甘党のようだな。かの信長公もまた甘党であったそうだしな。信秀公は辛党ではあったのであろうが、これもまた、瓜や柿なども好んだことからも織田は甘党だな。


 その後は今後の製作予定を簡潔に説明したりや必要な備品等の話を母が申でたりして謁見は終わったのであった。




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