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対面 後

 和尚からの質問に答えてから和尚も自分も思考の海に溺れていると父と共に隻眼の威厳ある壮年の武士もののふがやってきた。

 

 「和尚、何があったのだ?我らを呼び出して」


 「大和守様、弾正左衛門殿。こちらの仙法師君がイロハ歌を書きたとうちの小僧が見たらしく騒いでおりました。それの真偽を確かめるため話しかけたところ仙法師君は筆談にて応え真であると確信を得たところなのじゃ」


 「なに!仙法師が?!いったいどういうことが」


弾正左衛門は戸惑いながら自分を見る。また、大和守…即ち自分の祖父らしい人は一層厳しい顔で自分を見ながら言った。


 「仙法師よ、儂はそなたの祖父である大和守敏定である。」


 (初にお目にかかります。弾正左衛門が子 センホウシにございます)


 「ふむ。お主は己の名の字を知らぬのか…どれ、こうじゃ(仙法師)」

 

 ほう、自分の名のセンホウシは[仙法師]であったか。どうやら弾正忠家の幼名は某法師という感じでつけておるのであろう。

 「ところでお主、イロハ歌を知っているとな。以前に左衛門の家の木の下にて伊勢物語の和歌書いた者がいると聞いた。もしかしなくともそなたか?」


 (その通りにございます)


 「ならば他にも、古典や和歌などを知っておるのか?」


 (はい。自分が自分という意識を持ってからすぐに己が何者であるかを考えた時には不思議とそれらの知識が浮かびました。ただ、やはり自分が何者であるかはわからないのです)


 「左様か、是非もなし…そなたはこれから己が何者であるかを見つけ悟り創り上げていけばよい。それはともかく、そなたの知識を我らにも分けてもらい。まずは、知っているだけの古典を纏めて見せよ」

 

 (わかりました…が、自分は楷書しか知りませぬ。行書や草書など知りませぬ。故に、まずは手習いをしたく思います)


 「それもまた、妙な話よ…しかし、そもそも そなたのような歳で文字を操るということに比べれば些細な話よ。わかった今より、始めよ。明日からは人を遣わし手習いをせよ。良いな」


 (承知しました)


 それからというもの戸惑う父母と和尚を連れて話し合いながら来た道を戻っていった… 




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