怪盗アルカディア 1
春と呼ぶには季節が進み過ぎた五月。そろそろ暑くなって来て、ブレザーを脱ぎ始める生徒も多く見受けられる。中には半袖で登校してるやつも。
連休が明けた魔術学院日本支部の生徒たちは、誰も彼もが浮かれていた。近づいてきた学院祭故だろう。織たちのクラスも、今頃は教室で出し物について話し合っているはず。
なぜその場に自分がいないのかと、首を傾げてしまう織だった。
「ほらほら! 守ってばかりじゃ勝てないぞ!」
「攻めさせる気ないくせによく言いますねッ……!」
邪魔な思考はすぐに霧散し、目にも留まらぬ速さで刀を振り続ける蒼へと、意識を集中させる。
織の防護壁は既にひび割れ、悲鳴を上げ始めていた。蒼の言う通り、このまま守りに徹していても食い破られるのは時間の問題だろう。
だから、この状況に一石を投じなければならない。その手段を、今の織は持っている。
右の瞳がオレンジの輝きを帯びる。映し出されるのは数瞬先の未来。防護壁を解いた織は、蒼の振るう刀を全て紙一重で避ける。
「上手く使えてるじゃないか!」
蒼の言葉に、織はなにも返さない。ただ攻撃を避け続けるだけだ。相手の動きが分かっているのなら、最小限の動きだけで避けられる。それでも身体強化を解けないあたり、油断はできないが。
未来視を常に発動させながら攻撃を避けつつ、織は更に右手へと魔力を集中させた。可視化された魔力は西洋剣の形を与えられ、それを右の手にしっかり持つ。
未来視の予測通りな蒼の動きに合わせて体を動かし剣を滑らせれば、蒼は後ろに大きく転移で下がった。攻撃が当たらずとも、距離を取ってくれたのなら僥倖。織が剣を投擲すれば、剣は形を変えて網となり、蒼の体に覆い被さった。
もちろん、その程度で蒼を拘束できるわけもない。剣閃が迸ったかと思えば、網は細切れに斬られていた。
だが、それも織り込み済み。斬られた網はその先端を尖らせ、鋭い鏃となって蒼に襲いかかった。
「甘い」
蒼が展開した魔法陣、防護壁は鏃に貫かれてしまうが、どういうわけか残りの鏃が全て消えてしまった。いや、吸収されたのだ。
なぜ忘れていたのか。その魔術は、小鳥遊蒼が創り上げたものだというのに。
「連鎖爆発」
「まずっ……!」
多数の魔法陣に囲まれる織。そこから逃げ出そうと魔力を練るが、遅い。
なす術なく、大爆発の餌食となった。
◆
「うん、及第点かな。未来視は上手く使えてるし、魔術に関してもだいぶ上達した。魔法剣からの連携は良く出来てたと思うよ。僕じゃなかったら、そもそも網に引っかかって終わりだ」
「そりゃどうも……」
死ぬかと思った。
蒼に怪我を治してもらったが、それでも精神的な疲労がどうにかなるわけではない。常に迫る死の恐怖。未来視と魔術を同時に使用することによる集中力。そして最後にもらった一撃。
織が疲弊するには十分だ。
そもそも、未来視は事前の準備に使用するのがいいのであって、今みたいに戦闘中に発動するようなものでもない。
朱音は問題なく使ってそうだが。
「やっぱり、織は伸び代が大きい。このまま修行を続けてれば、そのうち愛美くらいには強くなれるよ」
「だといいんですけど」
「なにか不安でも?」
「いや」
不安なんてない。人類最強からお墨付きをもらったのだ。本来なら喜ぶべきなのだろう。
だけど、そのうち、ではダメなのだ。織は今すぐにでも力が欲しい。それは叶わないと分かっていても、願わずにはいられない。
愛美や朱音、家族の力になりたいから。
「焦るのも分かるけどね。グレイの行方は未だ分からず。でも向こうからの襲撃もあった。だから今日、こうして呼んだわけだけど」
「そういや、まだ今日の目的聞いてませんでしたね。まさか戦うだけで終わりってわけじゃないでしょ?」
放課後、さてこれから文化祭について話し合うぞというところで、織は蒼に拉致された。魔法陣の展開すらないいつもの転移で、気がつけば学院の外、富士の樹海にいたのだ。
ある程度察した愛美が周りに説明してくれていると信じているが、マジでビックリするので本当にやめて欲しい。
蒼との戦闘は、織にとってもありがたいものではある。未来視を実戦で使う場合の使い分けや、魔術との併用など、確認したいことは山ほどあるから。
おまけに蒼は織と同じくらいの実力まで、力を絞ってくれている。こうして終わった後は、総評までくれる。師としては当然なのだろうが、それらしいことなんて滅多にしてくれない蒼がここまでしてくれた。
ただ、その見返りを考えると怖いところがあるが。
「もちろん、君の今の実力を測るのも目的の一つさ。さっきも言ったけど、君はこの短期間でとても成長している。以前言った課題は殆どクリアしてるしね」
「術式構成の速度と、近距離での対処法ですか」
「そう。正直、予想以上だよ」
さすがの織も、その実感は持てていた。
以前までの織は、戦い方を知らなかった。魔術に関しても、実戦で用いた経験なんて殆ど皆無だった。
しかし、今は知っている。一ヶ月半の生活の中で、多くの戦いを経験してきた今の織は。生き残るための術を身につけている。
「それで、本題だけどね。君に一つ、依頼をしたいんだ」
「それは、学院の生徒として? それともうちの事務所に?」
「学院生として、だね」
虚空に伸ばした蒼の手。そこに突然、一枚の紙切れが現れる。相変わらずどういう原理の魔術なのか皆目見当つかないが、そこは特に考えることなく、織は差し出された紙を受け取った。
その紙を読んでいると、気になる単語が。
「……怪盗?」
「うん、怪盗。京都の安倍家、君も知ってる安倍晴樹の生家であるそこが、怪盗に狙われてるらしい。僕に回ってきた依頼なんだけど、この程度なら君でも行けると思ってね」
「仕事放棄じゃねぇか」
「気にしない気にしない」
呆れてため息を吐いてしまうが、それは笑顔で受け流される。
人類最強ともなれば他にも仕事は山積みだろうから、こういうことも多少なら仕方ないのだろうけど。
さてはて、しかし。京都の安倍家とは。
そう聞くと真っ先に思い浮かぶのは、とある有名な陰陽師だ。まさかとは思うが、友人であるあの男はその一族とでも言うまい。
「そう言うわけだから、頼んだよ。連れて行くメンバーは君も合わせて大体四人くらいがいいかな。選出は任せるから」
「いやいや、この怪盗って部分をもうちょい教えてほしいんすけど」
「あー、それね」
というか、そんなやつが出てくるのであれば、それこそ探偵としての織に頼むべきだと思うのだが。探偵のライバルは怪盗と、相場が決まっている。
「安倍家は陰陽術の大家でね。安倍晴明は織も知ってるだろう? その一族なんだよ」
まさかのまさかだった。晴樹がそんなに凄い家の出身だったとは。
「で、その安倍家に保管してある晴明の遺品の一つが、今回狙われてるんだ」
「遺品? 平安時代からずっと残してきてるんですか?」
「うん。陰陽術なんて最近は廃れてるから、結構な値打ち品でね。おまけにそいつが禁術扱いされてる。晴明の名前も手伝って、金に換えたら結構な額になるよ」
「はぁ……」
イマイチ実感の湧かない話だ。魔術と陰陽術の違いも分からなければ、禁術とやらがなんなのかも知らない。しかも安倍晴明なんて、織が生まれるよりも千年は昔の人物。そいつの遺品だなんて言われても、その価値がわかるはずもない。
「禁術って言うのは、学院が指定した使用禁止の魔術でね。決められた魔術師以外は、その術式に触れることすら禁じられている。世の中に害を齎すものだよ」
「……これ、結構やばい案件なのでは?」
「大丈夫大丈夫」
この仕事が蒼に回っていた理由を察してしまった。恐らく、というか確実に、蒼は禁術の使用許可が降りてる人間の一人だろう。本来なら織のような凡百の魔術師に回していい仕事ではないはずだ。
なら連れて行くのは桃がいいか。でもまた寝てる可能性もあるし……。
「で、その怪盗なんだけど。もう調べはついてるんだよ。と言うより、海外の魔術師では割と名の通ってるやつらでね。男女二人組の魔術師、ジュナス・アルカディアとルミ・アルカディア。そう名乗ってる」
「そいつらから予告状が届いたと?」
「予告状もだけど、安倍家が占星術で予見したんだ」
「占星術? 陰陽術じゃなくて?」
「これも陰陽術の一つだよ」
曰く、天文学を用いた魔術、らしい。織の未来視ほどの精度ではないが、その術で未来を予見できるのだとか。
「その辺りの細かいことは、実際に現地で見てみたらいい。勉強になるはずだ」
「まだ引き受けるとは言ってませんけどね」
「残念。君の名前で学院には依頼を受理させてるから、拒否権なんて最初からないよ」
「このクソ野郎!」
「じゃ、そういうわけで後は頼んだ」
「あ、待て!」
織の言葉など完全に無視して、蒼は音もなくその場から消えた。
一人樹海に残された織は、とりあえず愛美に連絡するためにスマホを取り出して、帰り道が分からないことに気づいて嘆くのだった。
◆
なんとか学院まで帰ってこれた織は、誰を連れて行こうか悩みながら学院内を歩いていた。依頼書に書いてある日付は今日だ。つまり、メンバーを集めてからすぐに出立しなければならない。
愛美に連絡したところ、彼女も来れるとのことだったので、転移に関しては問題ないのだが。
「桃はやっぱり寝てたし、誰にするか……」
先程桃の私室を訪ねたのだが、彼女は部屋の中で死んでいた。最近はグレイの探知を任せきりにしていたし、どうもまだ終わっていないようだから仕方ないか。
それにしたって、相変わらずカッターシャツ一枚だけで寝るのはやめてもらいたい。
「一応晴樹にも声かけてみるか……」
今回の依頼主は晴樹の実家だ。なら、彼に声をかけるのは当然だろう。もしかしたら既にその話も知っていて、実家から呼び戻されたりしてるかもしれないが。
問題は、あと一人をどうするかだ。
考えながら歩いていると、依頼書の張り出されてる掲示板の前まで来ていた。その掲示板の前に、ツインテールを揺らす小さな後ろ姿が。
「んー、どれにしよっか? 最近金欠だし、どうせなら報酬がいいやつにしたいけど、そうなると魔物退治とかになっちゃうもんねぇ……え? 望むところって……私は全然望まないんだけど……碧に任せきりになっちゃうし」
独り言らしき声をぶつぶつと漏らしているが、それは断じて独り言などではない。文字通り、自分と会話しているのだ。
学院の生徒はそんな光景に見慣れているのか、付近にいるやつらは誰も彼女を不思議な目で見ていない。
その小さな肩をトントンと叩くと、こちらがびっくりするくらいに体を跳ねさせて、ちょっと罪悪感を抱く織。
「ぁ……織さんか。驚かさないでくださいよ」
「悪い悪い。そんなにびっくりするとは思わなくてな」
ホッとした顔で振り返ったのは黒霧葵。風紀委員の後輩だ。仕事を探してるようだし、丁度いい所で見つけてしまった。
「葵、仕事探してるんだろ? 丁度俺も、一緒に行けるやつ探してたんだ。よかったらどうだ?」
「どんなのですか?」
「それは後で説明する。報酬もそれなりに弾むぞ。俺も合わせて四人だから、一人当たり大体六十ってとこだな」
「六十⁉︎」
途端、葵の顔付きが変わった。金に食いついたとかではなく、いやそれもあるんだろうが、中身が変わったのだ。
葵から碧に。
「行く。行くわ。決まりよさっさと行きましょう」
「落ち着け落ち着け。てかいきなり変わらないでくれ。こっちが困惑するから」
「落ち着いてられるわけないでしょ六十万よ⁉︎ しかも四人で行くのに、一人当たり六十万!」
つまり、報酬の総額は二百四十万なのだが。碧は理解してるのだろうか。報酬が高ければ高いほど、依頼の危険度が増すことに。
風紀に所属していて、十人以上の生徒をたった一人で無力化してしまうほどだ。実力は確実に織以上だと思うが、そう簡単に決めていいことなのだろうか。
どのみち、これから晴樹にも声をかけに行かないといけないから、今すぐにというわけにもいかないのだが。
「とりあえず、後一人に声かけに行くから。お前も付いてくるか?」
「そういう事なら交代ね」
一度目を閉じれば、また変わる。今度は碧から葵へ。忙しないやつだなぁと思うが、見ていて飽きないのも事実。
次に目を開いた葵は、少し申し訳なさそうな顔をしていて。
「すいません、碧が……」
「いいよ。んじゃ行くか」
微苦笑を浮かべつつ答え、織は葵を伴って自分の教室へと向かった。
教室には既に殆どの生徒が残っていなかった。文化祭についての話し合いは終わったのだろう。幸いにして愛美と晴樹はまだ残ってくれていた。というか、愛美が晴樹を捕まえてた。
「やっと来たわね」
「おい桐生。自分の嫁、ちょっと暴力的すぎんか」
そんなことを言われても知らないので、首根っこを掴まれている晴樹は無視しつつ、織は晴樹を解放した愛美と葵に詳しいことを教えた。
蒼から仕事を頼まれたこと、その依頼主が晴樹の実家で、怪盗から予告状が届いたこと。
愛美には軽く説明していたが、蒼に無理矢理頼まれたというところどため息が。葵に至っては今からでも拒否れないかと、その表情が語っていた。恐らくはこの場から逃げ出しても、金に目が眩んだ碧に強制連行させられるだろうが。
「つーわけだから、晴樹も付いて来てくれ」
「怪盗ねぇ……俺も実家から話は聞いとるけど、別に俺いらんのちゃうか? その二人おったら十分やろ」
晴樹が指差したのは、愛美と葵。晴樹も二人の実力はよく知っているのだろう。
「俺もそう思うけどな。俺も合わせて四人で行けって、先生から指定があったんだよ」
「実家には顔出したくないんやが……」
「お前それが本音だろ」
安倍晴明の一族ともなれば、かなり大きな家なのだろう。であれば、それなりに面倒ごともあるのかもしれない。
が、織がその辺りを配慮する必要などないのだ。晴樹がいた方が、仕事はスムーズに進むかもしれない。ならば連れていかない選択肢なんて、最初から存在していない。
頭をガシガシと搔いた陰陽師は、やがてため息を一つ落とす。
「分かった。せっかくの学院祭前やけど、俺も帰ってこい言われとるしな。ついてったるわ」
「よし、決まりだな。んじゃ一旦解散して、一時間後に校門前集合で」
◆
一度事務所に戻ってきた織と愛美は、これから向かう依頼について朱音に話していた。
「怪盗?」
「安倍家の禁術が狙われてるらしいわ」
「あー、あれかぁ……」
「知ってるのか?」
ソファでアーサーをもふりながら聞いていた朱音は、疲れたような表情を浮かべる。
この様子だと、未来でもその禁術は知れ渡っているのだろうか。
「禁術って言っても、あんまり大したことないやつだよ。発動されたら辺り一面に呪いを撒き散らすくらい」
「十分やばいじゃねぇか……」
「問答無用ってわけじゃないんだよ。それなりの防護壁があれば防げるし、範囲は広いけど威力としてはそこまで、って感じかな。父さんでも防げると思うよ。仮に呪いにかかっても、すぐ解呪出来る。ただ……」
「ただ?」
「対象を一点に絞られると、ちょっとやばいかもね」
やっぱりやばい奴だった。朱音にも付いて来てもらいたいところだが、今回は晴樹がいる。彼はルーサーとしての朱音しか知らないし、朱音も知り合い以外の魔術師と会うときは仮面を付けているから、今回は連れて行くのが難しい。
「それって要は、盗られた後の話でしょ。私達の仕事は、盗られないようにすることよ。可能なら捕まえて、それが出来なくても追い返すくらいはしないと話にならないわ」
「珍しく弱気だな。お前なら絶対捕まえる、くらい言いそうなのに」
なんなら、絶対殺す、まで言ってしまいそうだ。そして実際、愛美はそれが出来てしまう。
おまけに今回は愛美だけじゃなく、葵もいるのだ。織と晴樹は戦力として数えない。戦闘になれば、この二人に任せきりになってしまうだろうから。
だが、愛美はやはりどこか弱気で。力なくため息を吐くのみ。
「その怪盗、私も何回か戦ったことがあるのよ」
「そうなのか?」
「ええ、先生にお願いされてね」
またあの人か。今回の仕事を織に任せたのは、そのあたりも絡んでるのかもしれない。
「かなり強いわよ。二人のコンビネーションも鬱陶しいんだけど、特に女の方。あれは私よりも速い」
「愛美よりもって……」
「異能持ちなのよ。自分の体を光に変えられる異能。正直、使われたら手の施しようがないわ」
体を光に変える。そして愛美よりも速いということは、光と同じスピードで動くということか。
そんなの、愛美の言う通り対処のしようがない。瞬きする間もなく盗まれて終わりじゃないか。
戦慄する織を他所に、朱音は呑気な顔でなおもアーサーをもふりながら、簡単に言ってのけた。
「じゃあ異能を使われる前に倒すしかないね」
「いや、そんな簡単に出来るのか?」
「出来るよ。私達の体術なら出来る」
愛美と朱音が使う、あの特殊な体術。速さよりも早さを重視している動き。必ず初手を取れるあの体術なら、たしかに可能性はあるかもしれないが。
「なにより、葵さんがいるんでしょ? だったらもっと簡単に終わるんじゃないかな」
「葵の異能を使わせようってことね?」
「うん。碧さんの方なら、結構えげつない方法を取るかもだし」
あの二人の異能は情報操作。具体的になにをどこまで出来るのかを織は知らないが、それにしたって朱音の口調には絶対の自信がこもっている。どうしてそこまで言い切れるのだろう。
そんな織の疑問は、口にするよりも前に朱音が答えてくれた。
「怪盗は探偵のライバルなんでしょ? でも、だからこそ。父さんと母さんが負けるわけないじゃん。コンビネーションがいいのか知らないけど、それなら二人が負けるわけないし」
ニッと笑顔を浮かべる朱音は、本気でそう思っているのだろう。声には微塵も疑うような色がない。
愛美と顔を見合わせて、同時に笑みが零れる。
娘からこう言われてしまえば、負けて帰ってくるわけにはいかなくなった。とんでもない異能を持ってるのかは知らないが、娘に期待された親の力とやらを見せてやらねばなるまい。
「そんじゃあ、余裕で勝ってくるとするか」
「ええ。怪盗なんて、探偵の引き立て役でしかないってことを教えてやりましょう」
不敵に笑った愛美が学院までの転移陣を開き、二人は事務所を出た。
事務所に残った朱音は、それからとんでもないことに気づき、一言。
「今日の晩御飯、どうしよ……」