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教会での日々

 教会の一日は朝が早い。日の出前に起き,子どもたちの食事の準備。教会内にある畑で収穫の作業や畑の整備。その後は,子どもたちを起こして,朝食。朝食が済んだ後は,教会周辺の掃除。掃除が終われば夕方までは,子どもたちと過ごす時間になっている。そんな日々を1週間ほど続いたある日。


「毎日の作業が半端なく多いですね。クリスさん。」

「これが収穫時期になると収穫作業で一日が終わることもありますよ。」

「そんなに大変な作業を今まで2人でしてたんですか!」と栄太が驚くと,

「何でも慣れですよ。」と,笑みをこぼしながらクリスは答える。


(こんな重労働を毎日しているのに笑顔を絶やさずに過ごせるのは凄いな。俺も早く慣れて力になれるようにしないとな。)


「それでも,エイタさんも凄いですよ。普通この量の作業を聞いたら嫌になるはずなのに,嫌な顔せずに作業をしていますもの。」

「いや~,自分の場合は顔とかに出さないように今までしてきたので,その癖で嫌なように見えないだけですよ。実際,聞いたときは心の中で面倒だなって思いましたし。」と2人で作業をしながら雑談をする。少しずつであるが,クリスとの距離も縮まってきていると思う。

「自分は生活魔法とかも使えるか分からないですから,クリスさんたちが羨ましく感じるときのあるんですよ。」


 生活魔法は,どんなに才能がないものでも使える一般的な魔法であり,種類は照明をつけるものや,少量の水を出すもの,小さな火を起こすものなど多岐にわたる。使えるようになるには,市販されている魔法書を購入して,読むだけというお手軽な覚え方だ。


 しかし,栄太自身はまだ国民として認められていないこともあり,どの魔法が使えるかの適性検査もできていない。また,国民であれば,自身の持っている才能【スキル】についても判定することができるらしい。この判定で良いスキルを持っている子たちは,特別に学校に通うことができたり,特別な職業に就くことができるようになる。実際に,この教会からも何人かはスキルのおかげで良い職につくことができたらしい。


 もちろん,貴族の子になると,小さいうちから能力開発に勤しんで,様々なスキルを持って学校に通い,王宮の仕事に就くことがほとんどで,貧しい家庭の子どもたちはなかなか職に就くことが難しく,親の仕事を代々引き継いでいくことがこの国では当たり前のようになっている。


 できれば,どんな子どもたちでもある程度の教養を身に着けて,まともな職に就けるようになることが望ましいことだと思う。聞いた話によると,田舎のほうや,他国ではまともな職に就くことができない者は奴隷として売られたり,能力不足の状態で,冒険者となり帰らぬ人となることも日常茶飯事のようだ。


「子どもたちに基本的な教養を身に着ける場があればな……。」とため息交じりに独り言を言う。

「エイタさん,何か言いましたか?」

「いやいや,ちょっとした独り言ですよ。」

「そうですか。疲れたなら言ってくださいね。休憩を取らないと途中で倒れたりしますからね。」

「ですね。今が昼時のようですし,一度休憩しましょうか?」と提案すると,

ちょうど,正午を知らせる鐘がなった。クリスは少し驚いた様子で,

「そうしましょう。」と言って,昼食休憩を取る。


「そういえば,」とクリスが疑問に思ったことがあったみたいなので,聞いてみる。

「どうしてエイタさんは昼食時だと分かったんですか?こちらで生活しているのはそれほど長くないのですよね?」

「自分の場合は日の動きで予想をしているのですよ。大体正午になるぐらいに日の位置が一番高い位置にくるので,それを確認しながら時間を大体把握していますね。まぁ,こちらにきてから日が浅いので時間が細かく分かるわけではないですけど,どれくらいの時間作業をしているとかも分かりますよ。」と言うと,「へぇ~」っと,感心したようにクリスが言う。


 この世界でも,地球と同じように1日が大体24時間で日が出ている時間と,月のようなものが出ている時間に分けられている。季節については詳しく分かっていないが,この国では今が日本で言う春のような季節なため,非常に過ごしやすい。違いも多くあるが,似ている部分も多くあるため,生活リズムが大きく崩れることもなかった。


「エイタさんは故郷では学者さんみたいな仕事をしていたんですね。色々と詳しいですし,話し方も丁寧です。」

「そんな立派な職業ではないですよ。自分の国では,そんなに尊敬されることもなかったですし,話し方は色々な人と話すことが多かったこともあり,丁寧に話そうと意識はしていますね。」


 2人で話をしていると,教会の入り口に馬車が止まった。そこから降りてきた人物は,栄太が苦手とする人物だった。



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