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小さな2人との交流

「今日からこの教会でシスターの手伝いをするようになった,ハセガワ・エイタだ。まだこの国のことも分からないことばかりだけど,宜しく!」と教会の前に集まった,子どもたちとシスターに向けて挨拶をした。できるだけ明るい声で,子どもたちに警戒されないように言った。


「お世話になるから,こちらもお願いしますといいましょうね。」とクリスが言い,「せーの」という掛け声と共に「お願いしますー。」と元気なことが返ってきたことは嬉しかった。

その後子どもたちの自己紹介を聞き,年長者であるシスターのヘレンさんからこれからの仕事のことなどを詳しく説明してもらい,自分の部屋や教会の内部の構造などを教えてもらい,食事をして,現在自分の部屋でゆっくりとしている。


外はもう暗くなっており,目まぐるしく変わった環境に早く慣れるために,明日以降の準備をしている。子どもたちは男女それぞれ1つ部屋があり,今は入浴という名の水を浴びをしている最中だ。実際には,生活魔法が使えるシスターヘレンとクリスで子どもたちの身を綺麗にしているということらしい。日本では考えられなかった状況だ。


「明日から本格的に忙しくなりそうだな……。」と独り言を言いつつ,自分の仕事で使っていたカバンの中に入っているものを整理していると,仕事で使っていた教材が出てきた。日本語で書かれた文字が非常に懐かしい。全く知らない世界にきて,別の言語が使われて,魔法というものが存在している世界『フェリア』で馴染むことができるのだろうか。と不安が頭に過る。「もう日本に帰ることはできないのかもな……。」と弱音を吐いていると,部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえた。


(シスターかな…?)と思いながらドアを開けるとそこには人が居ない。

「あれ?誰もいないのか。」と考えていると下でもぞもぞと動く気配がした。目線を下にやるとそこには,男の子と女の子がいた。アッシュとアンジェと呼ばれていた子たちだった。


「おっしゃんなにしているの?」と2人は6歳であるが,日本の子たちとは違い少し話すのが苦手なようで舌足らずな言葉で話しかけてきた。

「おっしゃんって……。」よく年齢などで適当に言われていたから栄太にとっては慣れている状況だが,『おっしゃん』と呼ばれると戸惑うと思いながら,目線を合わせ話をする。

「おっさんは,自分の荷物の整理をしていたよ。2人はどうした?」とあくまで優しく,冷たくならないようにゆっくりと話す。これは,仕事で培われてきた技術だ。


う~んと2人がどういえば伝わるか考えている。この姿はいつも感じているが非常に可愛らしい。そして,パァーと明るい顔になり,栄太のほうを見て言う,「寂しくないか確認しに来た!」と。


「おっさんはもう結構な年だから,そこまで寂しくなんかないぞ。」と言いながら,2人を部屋の中に招待した。「何もないところだけどどうぞ。」と言いながら。2人は嬉しそうに入ってきて,木でできたベッドの上にちょこんと座った。話を聞いていると,初めて教会に来た子どもたちは,最初周りと馴染めずにいるから,夜になると泣き始めることが多いのだと。

(確かに子どもの場合は,親が世話しきれずに教会に捨てられるわけだから,心細いだろうな。シスターは優しいけど,新しく来た子だけに意識を向けるなんてことはできないだろうし,子どもたちも直ぐには距離を詰めることはなかなかできないからな……。)

「だから,おっしゃんも夜が怖くて泣いているのかと思って,アンジェと一緒に様子を見に来た!」

「みにきたー。」と2人が明るく言う。

この子たちは,自分の辛い経験をしてきているのに,周りの子を気遣う優しさを備えていることに感心した。「2人は優しいんだな。」と頭を撫でてやりながら,話を聞いてあげた。


2人は同じ日に教会に来たらしく,3年間ここに居るらしい。親のことも顔を思い出せずクリスが母親だと思っているようだった。最初はなかなか馴染めなかったけど,周りの子たちが優しく接してくれたことと,同じ年の2人は一緒に行動することが多かったらしく,すぐに打ち解けって仲良く生活していると嬉しそうにアッシュが話してくれた。アンジェは少し人見知りがあるのと,上手く話すことができないためか,もじもじしながら,途切れ途切れになりながら話をしてくれた。

2人とも素直でいい子であるし,色々なことに興味があって積極的に話をしてくれたのが嬉しかった。


1時間ほど2人の話を聞いていると,コンコンとノックされ,クリスの声がした。

「エイタさんこちらにアッシュとアンジェはいませんか?」と2人を探しに来たみたいだ。

「ここに居ますよ。どうぞ入っても大丈夫です。」と声をかけ,ドアが開いた。

「2人ともエイタさんは今日ここに来たばかりで疲れているのよ。」と優しく言うと,

2人は「「おっしゃんと話をしてた!」」と声をそろえてクリスに向かってニコッと笑った。

「2人とも今日でエイタさんとかなり仲良くなったみたいですね。」と優しく言う姿は正に母親が自分の子どもに向ける姿を彷彿とさせた。

「でも,今日はもうおやすみの時間ですから,部屋に戻って寝ましょうね。」というと,

「「はーい。」」と声をそろえて返事をし,部屋から出るときにも「「おっしゃんおやすみ!」」と元気よく挨拶をして部屋に戻っていった。


「エイタさん,お疲れのところ2人がすみません。」とクリスが謝ってきたが,「別に気にしなくていいですよ。2人と話すのは楽しかったですし,慣れてくれたから嬉しかったですよ。」

「それは良かったです。あの子たちも私たち以外の大人と話すことがあまりなかったので新鮮だったから楽しくなったのでしょうね。」

「他の子たちとはまだ全然話せてないので,明日からお手伝いをしながら早く慣れてもらえるようにしていきますよ。」と栄太は張り切るポーズをしていると,クスクスとクリスが笑った。

「エイタさん。明日からよろしくお願いしますね。それでは失礼します。」と挨拶をして,ドアが閉められた。


明日からの生活がどうなるのか期待半分,不安半分を感じながら栄太は休む準備をしていった。




次話から新生活がスタートしていきます。

明日更新できるようにしていきますので,よろしくお願いします。

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