提案
「長かった・・・。」
栄太は心の底から呟いた。
一か月に及ぶ奉仕作業がついに終わったのだ。
様々な作業があった。首都のごみ拾い・兵舎の掃除・馬小屋の掃除などなど。
今まで経験したことがないような肉体労働だったため,足腰や背中が悲鳴をあげている。
また,寝床として与えられた場所は,簡易な藁で作られた布団?のようなものだったため,ゆっくり体を休めることもできなかった。
「こんなに下働きの作業をしたことはなかったな。」
腰をさすりながらポツリと言った。
「これであの大臣から言われたことは終わったが,別のことを言われないだろうな…。」
そんなことを心配しているところに大臣の個室に呼ばれた。
コンコン。ドアをノックして返答が有った後にドアを開けた。
「失礼します。お呼びでしょうか?」
部屋に入ると,真ん中にデスクと本棚だけがある部屋の中で,大臣は窓から外の様子を眺めていた。
「ハセガワか。楽な姿勢で聞きなさい。」と言いながら,大臣はデスクにある椅子に腰かけた。
「一か月間の奉仕作業ご苦労だったな。体調は問題ないか?」
「腰と背中の痛みがなかなか治まらないですが,概ね問題ないです。」
「君はこの一か月間で何か気になったことはあるかね?」と大臣が言う。
(気になることね…。色々気になることがあるが訊いても良いものか?この人性格が悪そうだからあんまり関わりたくないんだけどな・・・)
「君が気になったことを言ったからといって,何かをさせたりはしないから安心しなさい。」とまるで心の声を読んだかのように大臣が言う。
ビクッと体を動かした。
「そこまで言うのでしたら,率直な意見を言いますね。」と切り出し気になった内容を伝えた。
大きくまとめると俺が気になった点は3点だった。
①大人でも文字を読める人は限られている点
②孤児のような子どもが多く居る点
③学校というものが見た限り存在していない点
この国のこれからの発展を考えたときにこれで成り立っていくのか不安になることを正直に伝えた。
「そのようなところが気になっておったのだな・・・。確かに大人でも限られた裕福な家庭の人間しか文字を読むことはできない。それも貴族や商会の仕事に携わっている者たちに限られる。」
「だからといって国民が不満を持っていると訳ではないのだからそこまで気にすることではないだろう?」
(確かに俺が見た人々は満足げな様子で仕事に取り組んでいた。文字が分からないからといって生活に大きな問題はなさそうだが,だからこそ気になる。)
「他国でも状況は同じか我が国よりも状況は悪いところも多いと聞く,我が国としてはこれから少しずつ改善していこうと考えている。」デスクの上に肘をついて手を組みながら大臣考えていた。
「君に言って大きく事態が変わるわけではないのだが,貴重な意見を言ってもらえて助かった。」と大臣は椅子から立ち上がり頭を下げた。
「そんな大層なことを言ったわけではありませんので,そのように頭を下げないでください。」
予想外の行動に栄太は焦る。
(この人は性格が悪いだけで,国ことを第一に考える為政者なんだな・・・。)
「私にできることなら協力をしますので,このような状態で国に帰るあても・・・」と話しているときに,大臣の顔がニヤッと笑った。
「それでは,貴方に是非してもらいたいことがあるんだよ。」
(しまった。全ては俺に何か仕事をさせようとしてこんな話をしていたのか。面倒なことを頼まれなければいいが。)
「どんなことですか?」と恐る恐る聞いてみる。
その内容は・・・。
実生活が忙しかったため更新が遅れてしまいました。
できる限り早めに更新していきたいと思いますので,よろしくお願いします。
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