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手強い14歳

 ある日の授業中,それは突然起きた。


「…んもう無理!分かんない!」


 一人の女の子が突然,怒気を含んだ声を上げる。


 栄太が低学年の子たちに教えているときに突然聞こえたその声の主は,クリスから教えてもらっていたエレンだった。


 エレンは14歳で,計算などは苦手な女の子。年齢的も反抗期に入っているらしく,時々こうして「できない。やりたくない。無理。」と言ってはクリスを困らせる子だ。


(やれやれ、また始まったか…。これで3回目だな。)

 教会の授業が始まって1月ほど経っているが,途中で不機嫌になるのは3回目だった。


 クリスがどうにか宥めているがなかなかおさまらない。どう扱っていいのか途方に暮れていたので,栄太は助け舟を出すために2人に近づいていく。



 どうやら,計算を工夫するやり方が良く分かっていないようで,工夫せずに真正面から計算をして間違っているのを指摘されているようだった。


 現在は,低学年の子たちは足し算・引き算をマスターして,掛け算を練習している段階で,高学年の子たちは足し算・引き算・掛け算・割り算は一通りマスターして,計算をより早く正確にするための計算の工夫を練習している。

 

 エレンは基本的な計算はゆっくりだがまあまあできるようになってきたばかりで,新しい知識が入れようとすると,途端に拒否反応を示すような子だった。



「エレン,どうしたんだ?」

「……」

「黙っていても分からないから,教えてほしいな。」

「……」


 男の教育者としてこの年齢の女の子の扱いはとても難しい。距離を間違えればそのまま嫌われてしまうし,優しくしすぎると増長してしまう。栄太は顔色を見ながらできるだけ他の子と同じように話していく。



「どこが良く分からないのか?」

「……計算。」

「…計算のどこ?」

「……全部。」

 目を合わせずに答える様子を見て,若干栄太の笑顔が引き攣る。(ここで感情的になっては言っても駄目だ。冷静になれ。be coolだ。)と内心苛ついているがそこは見せずに根気強く聞いていく。


「計算は大分できるようになったじゃないか?全部で分からない訳じゃないだろ?」

「……」

「今日間違ったのは…。この問題か。確かにこの問題は難しいからな。大丈夫簡単に計算する方法を教えるぞ。」

「……」


 計算方法を教えていく。

「この25×84を暗算でする方法だが,どう考えるんだっけ?」

「……」

「…質問を変えよう。まずは覚えてほしい計算がある。2×5は?」

「…10。」

「正解だ。次は4×25は?」

「……100?」と自信なさげに言う。

「やるじゃないか。そうだな。4×25は100だ。もう一つ行くぞ。8×125は?」

「…えっと,1000かな?」反応が少しずつ早くなってくる。

「凄いじゃないか。そうそう。合っているぞ。この計算を使うと便利な問題がいくつかあるから,この3つの計算は頭に入れておこう!」

 エレンから少し笑みが出る。自信がついてきた証拠だ。


「じゃあ,最初の問題に戻ろうか。25×84。この問題は3つの計算のどれを使えばいい?」

「う~ん。4×25?」

「そう。4×25を使う。そのために84を分けていく。84は4×いくつ?」

「それは,21!」

「OK!良いぞ。その調子だ。そして25×4は?」

「100!」

「あとは答えを出すだけだ。いくつになるか?」

「100と21だから…。…分かった2100!」

「正解!エレン自分の力で解けたじゃないか。そうだよ・そうやって解いていくと暗算で答えを出すことが出来るんだ!」と大げさに褒めると。

「えへへ。」と満更でもないように嬉しそうにする。


「それじゃあ,この問題はどうやって解く?」と促して練習をさせてみた…。





 練習をさせてみると,どの問題も正解することが出来た。

「あたし天才だわ!計算なんて楽勝ね!」と手を腰に当て,胸を張ってドヤっと得気な顔をする。

(なんとか授業内に気持ちを戻すことが出来たか。)とホッと溜息をつくと,

「せんせ~い。あたしもっと計算頑張りたい!他にもないの~?」と少し甘えた様子で聞いてくるが,

「今日はここまでにしよう。授業終了時間にもなったからまた今度な。」と言って素早く距離を取る。

「えぇ~。」と頬をぷくっと膨らませて残念だ。と表情であらわしたが軽くスルーして,授業を締めた。


 終わった後でも,栄太を追いかける視線があることをスルーしてその場を後にした。




いつも読んでいただき有難うございます。


登場人物が増えてきて,会話でのやりとりに緩急をつけていきたいと思いますが,

まだ全然ですね。笑

次回も明日更新を目指していきますので,よろしかったら読んでください。


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