食事
クリスの元に向かった栄太はそこで,これから行う仕事などの打ち合わせを行った。
そのとき,「今日の夜お時間ありますか?」とクリスから予定を聞かれたことに驚く。
「明日お休みの日なので食事を外で一緒にいかがですか?」と懇願するような目で美女から誘われる。
その表情にどぎまぎしながらも,至って冷静に「特に予定はないので大丈夫ですよ。」と答えると,嬉しそうな表情をして,「それでは,子どもたちの夕食が済み次第行きましょう。ヘレナさんに外出することを伝えておきますね。」と言って,その場を後にした。
「2人で行くってことはデートなのか?いやいや,俺みたいなおっさんで良いのか?」と呟きつつ,栄太は地に足がついていない心地で仕事に向かった。
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その夜
子どもたちの食事が終わった後に,ヘレナさんに一言言って教会から出た。
「明日はお休みの日ですから,今から満喫しましょうね。」
「そうですね。ところで,何処に向かっているんですか?」
「低価格ですけど,美味しく食べられる場所に行きます!」
教会での仕事は住み込みだが,外出については相談すれば簡単に外出することができる。
仕事であるので,給与も毎月支給されているが,栄太は授業の準備などで忙しかったため,必要な買い出しなど以外のプライベートな外出はしたことがなかった。
それを心配したクリスが今回外食に誘ったということらしい。
「着きました。ここです。」と一軒の店についた。看板には大熊亭と書かれた酒場だ。
中に入ると沢山の人で賑わっている。案内されたのはテーブル席で,そこで食事とお酒を頼む。
食事と酒が運ばれてきたので,乾杯をしながら食事をする。
どの料理も味付けがしっかりしていて,食が進む。特に,この店おススメのベーコンとほうれん草のパスタは今までに食べたことがないくらいの旨さだった。
「どうですか?このお店の料理は?」
「これは美味しいですね。今までに食べたことがない位ですよ。このお店には良く来るんですか?」
「月に一度行くか行かないか位ですけど,友人たちと来ますよ。エイタさんはあんまりお酒は飲まないのですか?」
「あんまり飲まないですね。情けない話ですけど飲むとすぐに眠くなってしまって何もできなくなるんですよ。あとは,前の職場は家でする仕事も多かったので,飲むと仕事ができないので自然と飲まなくなりましたね。」
そんな当たり障りのない会話をしながら食事を楽しんだ。デートと言うよりは,仲の良い同僚と気兼ねなく食事と会話を楽しむといったようだった。
2時間かけてゆっくりと食事・会話を楽しみ2人で教会に帰る途中で,公園に立ち寄った。
公園と言っても,広場と座るベンチがあってゆっくり過ごすことがメインの場所だった。
「夜になると涼しいですね。」とベンチに腰掛けたクリスが言う。
「昼間が暑い分,夜の涼しさは助かりますよ。」とベンチの横に立って栄太は答える。
「エイタさん。見てください。沢山の星が見えますよ。」
栄太が顔を上げると,沢山の星が空で瞬いている。日本では田舎でないと見ることができない満点の星空がそこには広がっていた。
栄太はその星空に吸い込まれるように見入っていた。そして,ポツリと呟いた。
「星空を見るのは久しぶりだな。」
「えっ?どうしました?」
「いえ,星空を見るのが久しぶりで見入ってましたよ。忙しいとなかなか見ることがなくて,どうしても下を向いてしまうんですよ。」
「確かに忙しいと周りに目を向けることができなくなりますね。」
「こんなに素敵な星空を見ることができたのもクリスさんの御蔭ですね。」と感謝の言葉を言うと,
急な言葉に反応できず,クリスの頬が赤く染まる。「そんな大げさですよ…。」と答えていたが,内心嬉しそうだ。
「ゆっくりできたことですし,帰りましょうか?」とクリスが立ち上がった時に,風がビューと吹く。
クリスの髪がや服が風になびいて1枚の絵画のように美しく映る。本当に綺麗な人だなと思いながら,視線が合ったが,クリスは柔らかい笑みをこちらに向ける。思わず顔が熱くなるが,極めて冷静に「そうしましょうか。」と言って,クリスから視線を外しつつ歩きだす。
今日は本当にいい日だった。明日も頑張るか。と思いつつ教会へと帰った。
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