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特別授業

「それじゃあ,今日の内容はここまで。ありがとうございました。」

「「「ありがとうございました。」」」


 授業も終了したその後に,1人の女の子が寄ってきた。10歳のリザだ。

「せんせい,あのね。今日のないようで分からないところがあったの。」と質問をしてきた。


 栄太快く「いいよ。どの問題?」と分からなかった部分を聞き出す。

 

 今日は引き算をしてしたのだが,繰り下がりの計算になると良く分からなくなるとのことだった。


 実際の授業中も,34-8の計算を36としていた。

 10の位から引くことを忘れてしまうらしい。実はこのような計算をする子はとても多い。特に計算をならいたての場合は,1の位だけ注目してしまい,“10を借りてくる”という意味が分からないからだ。


「それじゃあ,数字でせずにこっちで考えてみようか?」と栄太は,持っていたおはじきをリザに見せる。


「先ずは簡単な計算からしていこう。8コから2コ取ると残りはいくつ?」

「う~んと,6コ!」おはじきを観ながら答える。

「いいね。正解だよ。それじゃあ,少し難しくするよ。10コから3コ取ると残りは?」

「10コから3コだから……」と言いながら,おはじきを並べて考えていく。

「あっ,分かった。7コ!」

「良くわかったね。そうだね。7コだね。」と優しく言う。

「じゃあ,今日勉強した内容にするよ。12コから5コ取ると残りは?」と言うと,分かってきたのか,素早くおはじきを使って,「7コ!」と答えた。


 具体的なものを使う分には問題はなさそうだな。と安心して,

「もう少し難しくしてみよう。できるかな?」と少し煽ってみると,「もうできるもん!」とやる気満々な表情で答えた。

「それじゃ,次からおはじきなしで答えようか。」と言って問題を数問出すと,少し時間はかかったが,全問正解することができた。


「よく出来るようになったね。これで今日の内容はバッチリだな。」と言って褒めてあげると,非常に嬉しそうな顔で,「やったー。」と答える。

 毎回思うが,子どもたちができたときの表情は本当に癒される。決して俺がそういう趣味を持っているからではない。


 その後はいつものように,リザのマシンガントークが始まった。

 最近流行っているのは,―――というものだ。とか,一番上のルークとどこかに行ったとか。夜女の子たちでよくおしゃべりするとか。全部を相手するにはなかなか大変だから,話半分で聞いていることが多い。それでも嬉しそうに話してくれるのをみると罪悪感を感じる部分はある。

(大人には,子どもたち以上に考えないといけないことが多いからな。ちゃんと聞いてあげたいけど,次回の授業の内容や,ほかの子たちのことを考える時間も欲しいから,申し訳ない)と心の中で謝罪をしつつ,適度に相槌を打ちながら,話を聞いていた。


 こんな風に少しずつ子どもたちが,栄太に接していきながら,勉強をしていくのが日常になりつつあることに満足しながら,リザと栄太は教会へと戻っていった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

教会のドアを開けると,

「おっしゃん。おかえりー」とアッシュとアンジェが出迎えてくれた。

「おう。ただいま。」と笑顔を向ける。

呼び方はそれぞれ子どもたちに任せているが,アッシュとアンジェは『おっしゃん』と呼び,レナとリザは『せんせい』と呼ぶ。他の子どもたちは『エイタ先生』と呼んでくれるので,最初と比べるとみんなそれなりに慣れてくれていると思っている。


「せんせいのとくべつ授業はとても分かりやすかったー。」とリザが言うと他の子たちがどんなことを質問したのか聞き,リザも嬉しそうに話している。

 リザが授業の内容を思い出して話していることが大事なポイントだ!勉強をしているときに,分かった気になることは多いが,実際に問題を解くと全くできない場合がある。それは,解説をただ聞いているだけで,どんな内容なのかを理解していない場合が多い。

いってみれば,自転車に乗るときに補助輪ありで走って,もう自転車に乗れると勘違いしているのと同じようなものだ。勉強は習った内容を自分の力で解けるようにならないと定着はしない。そのため,栄太は授業の内容を子どもたちの口で説明させることをしている。そうすることで,どこまで理解しているのか,勘違いして覚えていることはないかをチェックしている。それを始めたことで,子どもたちの自然と,今日習った内容や,特別授業をしたときの内容を聞くようになっている。


 栄太は少し離れた椅子に座り,リザが話している内容に耳を傾けながら,合っている場合はうんうんと頷いた。


 授業がある日はこのように過ごしていることに満足して,栄太は次の作業をするために,クリスの元へと移動した。



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