計画
教会の授業を始めて2週間がたった太陽の曜日の夜。栄太は今までの進み具合を部屋で整理していた。
栄太の予想よりも,子どもたちの勉強に対する姿勢は非常に良かった。
特に,年齢が高い子たち4人の子たちは躓くことなく内容を理解している。
足し算・引き算は暗算でできるようになっているし,掛け算や割り算についても筆算を教えると,すぐにできるようになっていった。
現在,理解が早い子たちは説明よりも練習を増やしていっている。そのため,毎週太陽の曜日の夜は,練習問題を作ることが多い。
練習問題をつくるのは非常に頭を悩ます。ステップを踏みながら,少しずつレベルを上げていかなければ意味がない。幸い,栄太は練習問題などを作る経験は豊富だったため,あまり悩まずに問題を作成していった。
逆に低年齢の子たちの進み具合は最初を比べてゆっくりになってきた。
発達の段階を考えると仕方がないことだが,足し算は問題なくできたとしても,引き算で止まる。
引き算を教えてできるようになったと思ったら,今度は足し算が疎かになってしまう。
これは良くあることだが,なかなか定着するまで苦労する。
今まで教えた経験からも,時間を少し置くと定着が良くなることから,進める速さをゆっくりにして,考え方が混ざらないよう,混乱しないように繰り返し練習させていく必要がある。
「焦ってもしょうがないか……。」とこちらは分かっていたとしても,同じ時間帯で勉強しているため,ほかの子がどんどん進んでいくと,不安になるのが子どもというものだ。
栄太が「今のペースでも大丈夫。」と声かけても,一番年齢が低い,アッシュとアンジェは「いや」と言って強情になってしまうため,授業が終わった後に特別授業も行うようになった。
「別の学年の子どもたちを一緒に見るのは,普通の授業することよりも大変だな。」と呟きながら,伸びをする。座って作業を長時間していたため,体が固まっていたようで,伸びをすると関節がゴキゴキと音を立てた。
「時間の授業はできる子たちはドリルの問題を解いてもらうようにして,俺は低学年の子たちの計算をもう一度確認していったほうが良さそうだな……。」
次回以降の予定を組みながら,一人一人の顔を思い出す。
授業が始まってからの今までの期間で少しずつ子どもたちとの距離も近くなった。
一番下のアッシュとアンジェは最初からすぐに懐いてくれて,授業内外でも分からないことや気になったことや雑談などを一番多くしてくれる。
9歳のレナは勉強よりも恋に恋する子みたいで,誰が好きだとか,問題についての質問よりも個人的な質問のほうが目立っている。それでも言われたことは素直に取り組んでくれる分問題はいまのところはない。
10歳のリザはおしゃべりが大好きな女の子で,授業中はそこまでないが,授業後はマシンガントークを炸裂させて,色々な子たちとおしゃべりを楽しんでいる。
……思い出していくと本当に個性的な子たちが多い。
「よし。次回の内容も決まったことだし,明日からまた頑張りますか。」と言って,栄太は床に就いた。