開校
開校日,天気は晴れ。絶好の授業日和だ。
栄太は,満足そうに外を見た。
「いよいよ,今日からスタートだ……。準備大変だったな……。」と今日までの準備期間のことを思い出す。
「大変だった分実りあるものにするのがこれからの課題だな!」と気合を入れる。
フェリアでの1週間は地球の1週間と同じ7日間。太陽・火・水・風・金・土・月の曜日で太陽の曜日が地球の日曜日と同じものだった。授業をする日は火から土の曜日の5日間。月の曜日は教会の行事などが入ることもあるため休みにしている。それに,急に勉強する時間を確保するため,子どもたちのモチベーションが下がってしまうのを避けるためでもある。
「今日は午前中に計算の授業があるな。」と部屋にある授業のスケジュールで確認する。
授業は火・風・土の曜日は計算。水・金の曜日は読み書きの授業を行う。始めたばかりのため,生活に必須なスキルを身につけさせて,その後年齢に応じて内容を変えていくということも3人で決めていた。最初の授業内容は全年齢同じ内容から始めていく。計算は数の数え方から始める。
「しまった。急がないと遅刻してしまうな。」と急ぎつつ,部屋を後にした。
――――――
「よし。みんな揃っているな。」と子どもたちの顔を見て確認する。
「今日から,みんなには生活に必要な読み・書き・計算の力を鍛えていきます。」できる限り丁寧口調になるように話していく。
「この3つの力は書類に書いている内容を正確に読むことで,みんなが大人になった時に騙されにくくなるという点で非常に便利なものです。そして,大人でも計算があまりできていない人たちが多く居る中で,計算が早く正確にできる人は重宝されて,仕事でも困らなくなります。そうなることで,みんなが大人になって充実した暮らしができるようになるために授業を行っていきます。良いですか?」と訊くと
「「「わかりましたー。」」」と幼い子たちが大きな返事をする。他の子たちも首を縦に振ってくれた。
ホッと息を吐いて,話を続ける。
「計算は俺が中心に担当して,クリスさんに補助をしてもらいます。読み書きはクリスさんが中心に担当して,俺が補助をしていきます。分からないところや気になったところはどんどん聞いてできるようにしていこう!」
質問は気になった時にする。これは非常に大切だ。勿論生徒が多く居て,理解度の差があった場合は,その場で聞くのは授業の進みを止めってしまうため厄介なものだが,今はみんな同じスタートのため問題は少ない。むしろ,“素朴な疑問”というものは学ぶ上で非常に大切だ。“素朴な疑問”に答えることで,子どもたちの興味・関心が分かることと,どこが気になっているのかが分かる。そして,1人の子どもが疑問に感じていることは他にも同じところで気になっている子どもたちが居るということにもなる。それを説明することで,理解が深まっていくし,質問ができなかった子たちが「こんなことも聞いても大丈夫なんだ!」と感じて,授業の活気が増す。非常にありがたい状況になるということだ。低年齢の子たちは質問をすると思うが,年齢が高くなっていくと質問するのが恥ずかしいと思う子も少なくはない。全員がある程度同じレベルでできるようにするためには,最初は質問を自由に出させて,ゆっくりになっても良いように進めていくほうが後々楽になるというものだ。
教えるときに注意しないといけないのは,教える側が満足をするのではなく,教えられる側が満足しなければいけないということだ。
「子どもたちの眼を観て授業をしろ!」これは,前の会社でも意識をしていたことだ。
常に子どもたちの様子・反応を観て言葉を選ぶ。これが俺の授業スタイルだった。
「よし。それでは計算の授業を始めていこう。」
そういって,授業がスタートした。