決心
「やっぱりそんなに優れた人間ではないよな……。」自室でポツリと独り言を言う。
今日の昼間に鑑定をしてらったが、持っていたスキルは『計算』・『話術』・『演技』・『観察眼』・『環境把握』・『思考力』が仕事として利用できるレベル。他には『統率』・『遊戯』・『意思疎通』など、大臣の言葉を借りれば、平凡極まりないスキル構成らしい。
その中で人材として必要とされるスキルは『計算』と『話術』の2つ。『統率』はもう少し技量が高ければ,商人や部隊を率いるものとして重宝されるレベルだったらしい。
勿論,魔法の適性に関しても一般人よりも少し適性が高いレベル。こっちのほうは,正直言って期待をしていなかったので,予想よりも上を行っていた分喜ばしいこともある。
「この結果を見てからのあの反応はきつかったな。」と昼間のことを思い出す。
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「うーむ。このスキルと魔法適正だと教会で手伝いをしているほうが幾分かマシというものだな。」
大きなため息と共に大臣は言った。
予想では,あのような仕事を任せたかったとか,どこの出身か分からない者は能力が低いとか散々なことを言っていたが,方針が決まったのか「よし」と言って,栄太を見て
「よし。ハセガワはこのまま教会で手伝いを続けて,何か別の仕事が見つかった時にはこちらから紹介するとしよう。それでよいな?」と大臣は言った。
「自分としては,決定権はなさそうなのでそれで異論はありません。」
(能力が高い人材であれば待遇も良くなるけど,話を聞く限りでは能力が低いことは明らかだから何を言っても今は何も変わらないだろう)と心の中で諦めた。
大臣の予想を下回る結果だったこともあり,そのまますぐに大臣は王宮へと帰っていった。
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その後は,今日中にしなければならない作業を分担し,なんとか終わらせて食事などを済ませて現在に至る。
「正直期待もしていなかったからそこまで落ち込んではいないけど,シスター2人の生暖かい目は流石に堪えたな。」と昼以降の2人の少し哀れみを感じる表情を思い出した。
「まっ、今までしてた仕事を考えると妥当なスキルが発言していると考えれば,救いはあるのかな?」
薄暗くなった部屋で今日説明されたことを反復する。
・スキルは先天性のものと後天性のものがある。
・大人になっても一部のものは新たにスキルを獲得するものもいる。
・10歳から15歳の間にスキルを新たに習得するものが多い。
・スキルの有無で職が決まってしまう。
・魔法の適性は先天性。
・魔法は訓練次第で扱える魔法が増えることがある。
以上のことが今回分かったことだった。
「これを考えると10歳から15歳の子どもたちは重要な時期に立たされているわけだ。自分の就きたい職業に就くこともできない子も沢山いるわけだな……」
日本とは状況が全く違う。なりたい職業は基本だれでもなれる。そのための努力をしなければなることができない職業も多々ある。しかし,スキルがなくてもその職について後でスキルを身に着けている者も沢山居ただろう。勿論,スキルがなくて挫折し別の道へと進んでいった者も少なくはない。
どちらが良いのだろうか?自分の身の丈に合った仕事勧められその仕事を生涯していくことと,挑戦をして自分のやりたい道へと進んでいくことは。
そして,教会に居る10人の子どもたちの顔を思い出す。あの子たちは就きたい職はないのだろうか?あの子たちは今のままで大人になったときに幸せなのだろうか?こればかりは本人たちを目の前にして,話をしないと分からない。良くないのは大人の判断で勝手に決めつけて,道を狭めてしまうことだ。
また今まで,色んな人たちを見てきた経験を思い返しながら栄太は自分のしたいことを考えていく。
「上から言われたことをそのままやっているのは俺の性に合わないよな。明日2人も俺のやりたいことを話してみるか。」と決心をし,明日の朝自分の前職のことも含めて話をしようと考えつつ,栄太は床に就いた。
これから,子どもたちの交流が始まります。
キャラクターがごちゃごちゃにならないようにしようと思いますので,
良かったら次回も読んでください。