第十九話 長い一日の終わり
「マークさんお帰りなさい。薬草はちゃんと買い取ってもらえましたか?」
アーニャさんがこちらに声をかけてきた。ちょっと控えめなのは店主に小言でももらったのかもしれない。
「ああ。アーニャさんに言われた通り処理したおかげですべて買い取ってくれたよ。ありがとう。」
俺は彼女に礼を言う。
「どういたしまして!。私時折抜けてるって言われるから、役に立ってうれしいです!」
彼女は心底うれしそうに笑った。
「ところで、宿をとりたいのだけど、ここはまだ開いてるかな?」
「ええ、ちょうど一部屋個室が開いてます。お昼も話しましたけど、一泊銅貨20枚です。朝食付きなら22枚でできますよ!他の食事はメニューを見てくださいね。何泊泊まられますか?」
俺は少し考えてからとりあえず1週間宿を借りることにした。食事は食べてから決めよう。
「今は手持ちが金貨しかないから、これを崩してほしい。大丈夫かな?」
「わわ!金貨ですか!?マークさんどれだけ薬草とってきたんですか!?すぐに両替してきます!」
彼女は驚きながら、金貨を受け取り、カウンターの奥へと入っていった。待つこと数分。彼女は落とさないように慎重にお盆にお金をのせて出てきた。
「おまたせしました。こちら宿代を引いた銀貨9枚と銅貨60枚です。お確かめください!」
銀貨と銅貨を数えながらアイテムボックスへ放り込む。どうやら銅貨100枚で銀貨一枚。銀貨10枚で金貨1枚の価値になるようだ。金貨一枚はそれなりに価値があるみたいだな。
「手間をかけてしまったな。ありがとう。」
「どういたしまして!お部屋は階段を上がった右突き当たりの201号室です。それにしてもマークさん沢山薬草集めしたんですね!」
「いや、薬草はたいした値段ではなかったんだが、魔物を倒したお金が大きかったんだ。」
「ええ!?魔物が出たんですか?あそこらへんは滅多に魔物が出ないんですよ。だから初心者におすすめだと思って勧めたんですけど・・・」
彼女はひどくショボンとした。
「ああ、最近の魔物が増えてるらしいから仕方ないだろう。なんとか倒したし、気に病むことじゃない。むしろ報酬が増えてありがたい限りだ。」
どうも女性がしょんぼりとしているのは落ち着かない。俺は彼女を少し励まし、気にしていないことを伝える。
「ううぅ・・・ありがとうございます。」
彼女は少しどんよりとしながらも立ち直ったようだ。
「ああ、それより部屋はもう入ってもいいかな?少し疲れたのでな。あと資料なんかも借りられると聞いたけど俺も借りて大丈夫かね?」
「はい。お部屋に入ってもらって大丈夫ですよ。こちら鍵になりますね。資料は二階の図書室にありますのでご自由にみてください。ただ貸し出しはできませんので必要ならメモをしてくださいね。紙とペンはここでチップ25枚で扱っています。」
「ああ、ありがとう。取りあえず休ませてもらうよ」
俺は彼女から部屋の鍵を受け取り、2階の部屋へと向かった。
「案外広いな。10人くらい泊まれるみたいや。203、202、201、おっここやな。」
ガチャリとドアを開けると中は四畳ほどの部屋で机とクローゼット、ベットが付いていた。
「おお、ええやん。ベットもついてんのや」
ボン、と音を立ててベットへ座る。柔らかい感触にご満悦になりながら今日を振り返る。
「本当に長い一日やったな。麦畑に放り出されて、怪物に追いかけ回されて、薬草とって、ひまわりと戦って。まるで何日もたったみたいやなわ。ああ^~疲れたわぁ・・・」
俺はそのまま、服も脱がず、ベットに横になる。柔らかいベットに包まれた疲れた体にすっと眠気が襲ってきて、俺はすぐにいびきを立てて眠ってしまった。