第十八話素材買い取り
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俺が通路を通って見かけた部屋のドアを開けるとそこは解体場なのか、物置なのか分からないそこそこ広い空間が広がっていた。
「いらっしゃい。冒険者殿。」
その部屋の先に、背の高く、筋肉のある男がカウンターから、俺に声をかけてきた。見かけによらず、紳士的な態度だ。
「こんにちは。こちらで薬草の買い取りと薬草集めの依頼達成が報告できると聞いたがどこにだしたらいい?」
俺は男のいるカウンターへと向けて、歩みを進めながら尋ねた。
「薬草ならこちらのざるに入れてほしい。枚数に関してはこちらで数えるから、すべて出してくれ。」
おれはアイテムボックスから薬草をすべて取り出した。六〇枚の葉っぱがざるいっぱいに盛られる。
「いい量があるな。これなら10人分は堅そうだ。すぐ数えるから待っていてくれ」
男は手袋をはめ、薬草を素早く数えていく。俺は暇なり部屋の中を見ながら待った。落ち着いてくるとこの部屋は解体場の血のにおいと乾燥した薬草や革の匂いが漂っており、その混じった匂いが異世界情緒を醸し出している気がする。
「全部で六〇枚だな。すべていい状態だ。冒険者はしばしば強引に引きちぎったりしたやつをもってくるからな。丁寧にしてくれてありがとう。」
男はそう言いながら薬草を奥の棚に置く。そしてカウンターの引き出しからお金を取り出し、6〇枚の銅貨を俺に渡した。
「これがあんたの薬草の買い取り代金だ。受け取ってくれ」
「ありがとう。金がないから助かったよ。」
俺は受け取った銅貨をアイテムボックスにしまい、礼を言いながら立ち去ろうとして
「あっ、そういえば魔物を倒したんだが、こちらは魔物の買い取りはしているのか?」
むけかけた背を男に戻すと俺は魔物がボックスに入っていたことを思いだし聞いてみた。
「ああ、大抵のものは買い取っているな。素材がツールの原料になるし、需要があるからな。草原で薬草集めだったのだろ?ヒルか蛙か?」
男はそう言って俺を右手の解体場スペースへと案内した。
「いや何か植物のような変なやつでな。ひまわりの化け物みたいなやつだったよ。今出すぞ。」
俺はアイテムボックスからひまわりの魔物を取り出し、解体場スペースへとおいた。4メートル四方の解体場スペースが半分ほど埋まり、死体がごろりとそこに出された。
「・・・こいつはランドアーチンじゃないか。滅多にいない強力な魔物で、普通、魔力の濃い遺跡の地下や水路に生息しているが、こいつが平原に出たのか?そこそこの冒険者が4人パーティで倒す相手だぞ?」
男は険しい顔でランドアーチンをみている。
「平原にこんなのが出るとなると最近の魔物が増えたのと何か関係があるのだろうか。まあいい。よく倒したな。どこら辺でこいつに会ったんだ?」
「ああ、俺が薬草を丘の向こうで刈り取っているときに遭遇した。こちらを見たら、恐ろしい勢いで頭を振り上げて襲いかかってきたからな。俺はこの武器でなんとかやっつけたんだ。」
そういって俺は剣なたを見せた。
「なんだそれは?鉄の武器じゃないか。あんた魔法は使えないのか?よくそんなのでランドアーチンに勝てたな。」
男は驚いたようにこちらを見てきた。
「いや魔法は使えるぞ。鉄の武器だとなにかいけないのか?」
「鉄の武器は魔力を阻害する。常識だろ。そんなの使うのは高度な魔導師がトレーニングのために使うか、術不能者の一般人だけだぞ。あんたは高度な魔導師にも一般人にも見えないな。すごいがっちりしてるけど」
「とくにはやってないけどトレーニングはやってます。そうだったのか。悪いな遠くから来たもんで常識に疎いもんでね。」
俺はごまかしながら、男に答えた。
「そうか。冒険者にはいえないことや言いたくないことの一つはあるものだ。だから俺たちも詮索しないから安心してくれ。さて、こいつだが・・・そうだな。体の方からは木のツールが10は作れそうだし、いったいどうやってやったのか分からんがこいつの頭は大きな破損もなくいい状態だ。特殊なツールも作れそうだから金貨三枚でどうだろう?サンダリオの北にあるグリフィンのツール屋まで持って行けば金貨五枚で取引できるだろうが、ここからだと距離があるぞ。」
男はランドアーチンを調べながら、俺にこういった。
「そうか。今はまだ遠出する気にならないから、ここで売るとしよう。その値で買ってくれ。」
「ありがとう。じゃあ今金貨を持って来るから少し待ってくれ。えーっと・・・」
男は俺を見つめて言葉に詰まる。
「マークドワンだ。そちらは?」
「冒険者組合公認買い取り人のダーライオだ。マークドワン殿少し待ってくれ。金貨は金庫にはいっているもんでね。今とってくる。」
ダーライオンはカウンターの奥にあった扉を開けて部屋へと入っていた。俺は倒した魔物ランドアーチンをみた。恐ろしい魔物だった。どうやら俺は初戦で強い魔物と戦ったようだ。よく生きて帰れたものである。だが、おかげで得たものも大きい。これでしばらく調べ物ができる余裕ができた。この世界について俺は知らなさすぎる。少しでも常識、魔物、魔法について知らねばなるまい。
「おまたせ。さあ金貨三枚だ。受け取ってくれ。」
ダーライオンはこちらに向けて三枚の金色の硬貨を差し出した。
「ああ、ありがとう。じゃあ早速、そこの酒場で宿を取るよ。」
「そうするといい。あそこは冒険者向けなのに静かで、飯もうまいからな。」
俺はダーライオンに軽く礼を言い、酒場へと戻っていった。