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いっしょに食事をするだけの簡単なお仕事です。

作者: 葵陽

「恭子はお見合い結婚したそうです。」「さて、一番年上は何歳でしょう。」「ブーケトスもそんな感じ。」の続きです。


お読みいただければ、幸いです。

女性は原始、太陽であった。

 それは、男にはやり遂げ得ない子孫を産むという大業を成し遂げるからだという。

『男は女を大切にしなさい』とは元来、男のできないことを為し得る女性への尊敬からくるものだった。しかしながら、妊娠女性を邪険にする世の動きもあった。妊婦を「気持ち悪い」と思う人間も出てきた。

それはつまり、「人間に子孫を遺す必要はない」という表れではないのか。

別段、それを非難するつもりはない。世界の人口は七十億人を超え、食糧不足も懸念されている。ここ最近の動きは、人類が無意識的に人間の数を減らそうと起こしているものに思えて仕方がない。

 人がそう思うようになったということは「世も末」ということだ。これらの結果、人類の数が減り続けて最終的に人間が滅亡したとしても、それは彼らが起こした行為の結末であることは間違いない。

 実に滑稽な結末だと、ワタシは思う。人は、人によって終末を迎える。


人が減った世の中は、存外に暮らしやすい。

ただ先人の言っていた通り、人は独りで生きてはいけない。

メシが不味いからだ。

独りで食べるメシは味気なく、不味い。

例え食べているのが自分の大好物だったとしても、である。

ワタシは食べる気を失くして、持っていたフォークをテーブルの上へ置いた。


ワタシの趣味は食べることだ。

鬱陶しいくらい人がいた昔は、休日を利用してよく全国を行脚し各地の名産料理を食べていたものだった。時には噂話に踊らされて、不味いものを食べることもあったが今の食事以上に不味いものではなかったと、思う。

自分の為だけに食材を調達し、自分の為だけに料理を作る。その味気ない工程も不味さの一因だが何よりも、広いテーブルを一人で占領し自分で作った料理を食らうことが途轍もなく空しく、哀しい。


イヌやネコを連れてきて、一緒に暮らしたこともある。人ではないが淋しい食卓が、少しは紛れるだろうと思ったのだが人以上に彼らは寿命が短く、すぐワタシは独りになってしまった。

 

食事以外なら、独りでも構わなかった。だが食事だけは、どうしても独りが嫌だった。

先程死んでしまったネコの墓を作りながら、ワタシは誰とも知らないものに願った。




「喜瀬川さま、わたしの孫たちをしばし匿っていただけないでしょうか。」

かの老人から電話がかかってきたのは、そんなときだった。

ワタシは二つ返事で了承した。




広いリビングルームにサワッと夏の風が入る。気が付くと夕方だった。


「お給金は出せない、というのは聞いたかい。」

その言葉に私は首肯する。

「はい、・・・そのかわり私と、私のきょうだいたちの衣食住を保障していただけるのだと御聞きしましたが。本当に宜しいのでしょうか。」

くぼうさまは顎に手を当て、考える仕草をした。


「ワタシは子供が嫌いではないよ、子供の相手をするのは苦手だがね。

積極的に関わりを持つことはしないけど、子供を殴ったり蹴ったり、空腹の子供を見るのはもっと苦手だ。」


「ですが・・・本当に家事手伝いのようなことでくぼうさまのお役に立つのでしょうか。」

私に割り当てられた仕事はほとんどが掃除や洗濯等の家事手伝いだった。

お給金を貰えないかわりに、仕事も軽いものを与えてくれたのだろうか。

これは、雇用ではなく「居候」に近い。

妹たちに至っては、家事手伝いすらできないほど幼い。否、やらせれば出来ないことはないと思うが。「私」と違って妹たちは生粋の箱入りだ、家事など基礎から知らないだろう。




「ええ、ワタシにとっては充分です。」

くぼうさまは、なんとなく嬉しそうだった。


定期更新、6作目。

後半が微妙に勢いが落ちます。

推敲する可能性もあります。


お読みいただけたなら、幸いです。

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