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八十九の曲〜決意に、傷など要らない〜

この前、原作者が小説家になろう!始めたって書きましたけど原作者=友人です。

その時だった


「………ナ、オ…私ハ…モウ負ケナイ、アナタノタメ二……変ワル…強ク…ナルカラ」


エディンの手元に光が集まり出し、何かを形作る。それは剣のようであった。

だが、少し離れたユーリ達には何も聞こえなかったし、見えなかった。そう、エディンの言葉けついはナオにしか向けられていなかったのだ。


「よし!ウチらも行こう!」

「おう!」


周りの剣を全て抜き終え、仲間と共にユーリは走り出した。


「イラナイ…ナオ以外、君以外…何モ!!!」


エディンの叫びと共に剣が光の中から姿を現す。剣は闇のオーラを纏い、そして使役者の感情を露わにしていた。


「……何、アレぇええ?!」


その剣のオーラに思わずユーリ達も足を止めてしまう。だがエディンの相手をしている天使は冷静かつ沈着に言い放つ。


「おやおや…“破壊の剣”とは貴方も堕ちたものですねぇ…」


天使はそう言って薄く微笑んだ。


「ナオ…アナタハ私ノ希望…アナタハ私二光ヲクレタ…今度ハ私ガ…“守ってみせる”」


エディンは天使を睨みつけ、地を蹴った。天使に向かって剣を勢いよく斬りつけるが天使はそれをひょいと、軽々かわす。剣が放つ波動がポツポツと残っていた魔物を斬り裂き、ただの肉の塊へと変えて行く。


「全然、当たってませんよ!」


天使がエディンを嘲笑うかのように叫ぶ。エディンは聞こえていないのか歪んだ顔をし、呟いた。


「ナオ…私ノナオ…オネガイ…モウ一度…私ト一緒二…歌オウ…?モウ…私ハ…………………………一人ジャ、歌エナイ」

「…でしたら…二度歌えなくしましょうか?」


天使に剣を振り続けるエディン。例え、天使に嘲笑われようとも、例え、傷付いても、彼女はナオを助けようと必死だ。それはとても健気で残酷だ。

それを見てユーリは武器の柄を握り締め、決意した。


「……行こう、ウチらも、エディンと戦うの。ナオを助けなくちゃ」


それに真っ先に反論したのはソラリスだった。


「待てユーリ!見てなかったのか?!今のあいつは正気を失ってる。ナオ以外、敵味方関係なく攻撃してくるんだぞ?!」

「そうだよーそんな人と戦うって危ないくないの?」


真剣な面持ちでソラリスが言い、それに続くようにオメガも反論を述べる。みんなも少々、戸惑っているようにも見えた。


「…僕が言うのもなんだけどさ、姉さんはナオしか見えてないよ。連携取れるとも限らないほどに正気を失ってる。戦ってたらこっちに攻撃を仕掛けて来るかもしれない。そうしたら、今度はこっちが傷付くんだよ?!」


ヴァルムも反論する。その言葉は悲しみに溢れていた。なんだがヴァルムの片目が赤黒く見えるのは気のせいだろうか?

ユーリはゆっくりと彼らを振り返り、言う。


「ねぇ、ソラリス、ルル、ヴァルム、アルファ、オメガ、シータ、ガンマ…仲間って、何?同じ思いを持って、支え合って…そういうものでしょ?だったら…エディンも同じだよ、仲間だもん。ナオを助けたいって思いはウチらと同じだもん!!傷付くなんて恐れてたら終わるもんも終わらない!ナオを助けたい…それだけで十分でしょ?!」


誰よりも真剣な面持ちと思いを叫ぶユーリ。それに気づかされたように彼らは、『ブラックローズ』は告げる。


「呆れますね。まっ、そこをナオと共に買ったんですけどね」

「う〜ん、なんかやる気出るねぇ」

「主様の為に僕たちは従うよ!」

「もちろん、ナオを助ける為にねっ!」

「……ハァ、全くお前は」

「相変わらず、だね」

「さあ、行こっユーリ…うんん、副リーダー!!」

「!うん!!」


さあ、ナオを助けに参上しましょうか。


ユーリは仲間と共に駆け出す。


「ソラリスとルル、オメガは後方支援!アルファとシータ、ガンマは右側から、ウチとヴァルムは左から!」

「!避けて!来るよ!」


時々来るエディンの攻撃をかわしながら、仲間に指示を出す。


(ウチは、ナオのようには何一つできない。でも、ウチには…ウチにしかできないことがあるっ!!)


一人、神の言葉通りに歌うナオを見る。こちらを見ることは決してない。

それでも


「ウチの友達を…仲間を返せぇええ!!」



ユーリは叫びながら仲間と共に天使に向かって跳躍した。


ウチは【闇の戦士】。君の影で君を守る【語り部】。ウチを信じてくれた。“奏でろ”と言ってくれた、あんな「力」を持つウチを…受け入れてくれた!だから…その大切なウチの友達を…大好きなあの子を取り戻すんだ!!


「ナオォオオオ!!」


***


「ウガッ?!」


オメガの銃弾が天使の翼に被弾し、シータとガンマの武器が天使の両足を傷つける。アルファの剣が天使の胴体に大きな一撃を与え、ヴァルムとユーリ、エディンの強烈な一撃によって天使は膝をつく。そこにソラリスとルルの束縛する魔法が天使に向かって放たれ、天使は2人の魔法陣と魔法のリボンによって自由を奪われた。ついに全員は天使を抑え込むことに成功したのだ。天使は悔しそうに顔を歪めつつもこちらを睨みつけている。傷だらけなのは両者共に変わらない。「やった…っ」とユーリが小さく喜びを呟いた。


「エディン、今だよ!」


その言葉が正気を失った彼女に聞こえているかはさだかではない。ユーリの声は喜びに満ちていたが他の仲間は今だ緊張した面持ちをしていた。


(これでナオを助けられるかも…!)


その喜びを嘲笑うかのように天使がフッと小さく嗤った。


「本当に人は愚かですねぇ…トドメを刺すまで気を抜いてはいけませんよ…?」

「?どういうことだ。言っとくが俺達の魔法は一分しないと解けない。なんせ魔力馬鹿のルルお手製のまじないと俺の捕獲魔法だ…逃げることはできないぞ」

「フフ…それはそれは…良いことを聞きました。それでは皆様…位置変換ポジションチェンジ


その瞬間、ユーリと天使の足元が光り出した。そして一瞬のうちに


「え……ええええ?!」


2人は入れ替わった。気づけば天使は彼らの魔法の檻の外。そして檻の中には…お察しの通り


「ユーリ!!」

「っ?!どういうこと?!」

「あんな魔法…知らないよ!」

「チッ、侮ったか」

「ねぇソラリス!早く出さないと!」

「だから一分しないと無理なんだよ!!…クソッ!」

「嗚呼…恐ろしいことに…」


ユーリは体を捩ったり、武器を使ったりしてなんとか逃れようとする。がさすが信頼しているソラリスとルルの魔法。外れる事はない。


「ナオヲ…奪ッタ…神ヲ私ハ許サナイ。私ノ邪魔ヲスル奴モ許サナイ…!」


そしてソラリスの言葉通り、敵味方がわかっていないエディンは天使とユーリが入れ替わったことなど気にも留めず、一歩、また一歩と剣を手に近づいてくる。


「嗚呼、『スズティナ』見てごらん。やっぱり人は愚かだ。君以外は…ね。こんな世界、捨てて当然、正解だ。さあ、もう一度歌って?今度は、一緒に歌おう」


楽しそうに目の前の光景を眺めながら、神は歌い終わったナオに囁く。ナオはコクリと無表情のまま頷き、再び歌い出す。それに今度は神も声を重ねる。


「……嗚呼、ナオ。マタソンナ歌ヲ歌ワサレテ…カワイソウナ…ナオ……私ガ今、助ケルカラ…」


ジャキリと音を立て、剣がユーリに向けられた。滅ぼされる敵を見据え、エディンは叫び声と共にユーリに向かって駆け出す。


「ウア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!」

「ユーリッ!!」


ソラリス達も必死で駆け寄るが、距離がありすぎる。間に合わない…!


「コレデ…ナオハ……!!」

「イヤァアアアアッユーリィイイ!!」

「姉さん、止めて!!」





















位置変換ポジションチェンジ


…そして、鈍い音が響いた。


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