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八の曲〜運がないのに強いっていう〜

「ナオーウチら運ないねー!」

「そうだな」


武器を構える2人を囲んでいるのは数体の魔物。2人の逃げ道を塞ぐように立ちはだかっている。

あの村から何日か経った。がんばって初めての野宿もした。少しずつ慣れて来たと思ったらまた、これだ。魔物との対戦である。多分、あのめちゃくちゃマイペースなシータとガンマの差し金ではないと思われる。


武器を構え、ナオがユーリに言う。


「ユーリ、支援頼む」

「まっかせて!」


ユーリがナオの肩を叩き、笑顔で言う。それにナオはうんと頷く。

ナオは大剣を握り締め、魔物に向かって突っ込んだ。それを殺そうと一体の狐の姿をした魔物が空中で一回転をして頭上からナオに襲いかかった。


紅雨くれないあめ


ゴッと鈍い音を立て、狐の魔物は空中から地面に叩き落とされた。魔物は全身に紅い針のようなモノがたくさん刺さっており、それはスゥ…と魔物と共に消えた。

ナオはその正体にクスリと笑いながら大きなネズミの魔物と犬の魔物に大剣を振った。彼らは牙や爪でそれを防ぐとバッと振り、ナオを弾く。背後からナオに斬りかかろうと鹿の姿でツノが剣と化した魔物が迫る。それに影で(ただいま午後)気づいたナオはハッと顔だけで振り返り、顔をしかめた。が少し俯くと言った、嗤って。魔物を哀れむように。


「バカじゃないの?」


魔物の瞳がそれはお主だと不気味に青白く光ったがナオに攻撃は出来なかった。何故なら、


風吹雪かぜふぶき


ザシュッ!とユーリが一回転しながら魔物を仕留めたからだ。スタッと地面に着地し、ナオに背を預けるようにして立つと彼女に文句を飛ばした。


「な〜お〜み〜ん〜?ウチが支援するからって油断しすぎ!ウチのMPマジックポイントHPヒットポイントもなおみんのせいでなくなったらどうしてくれんの!(♯`∧´)」


今のユーリの頭上にアイコンが出たならばまさしく(♯`∧´)だろう。まぁ実際にナオには彼女の頭上に出た(ここでは)架空のアイコンも彼女の心情も手に取るように分かるのだが。だてに長年、チームを組んでいたわけじゃない。


「だって、ユーリのサブ職の一つはそれだろ?『ブラックローズ』及び支援職の最上級クラス、“アルティメット・アルティ”を持つ俺の友達あいぼう


ニヤリと笑って言うナオ。


“アルティメット・アルティ”はユーリが変更出来ないメイン職の代わりに極めた支援職の最上級クラスの職である。


サブ職はいつでも変更可能だが、条件がクリア出来ないと変更出来ない仕組みになっている。もちろん、サブ職にのみ上級職に変更可能だ。条件付きだが。そうなると実質、合計100つ以上の職があることになる。だがその100つ以上の職の頂点に輝く職がある。それが最上級クラスである。支援職の最上級クラス、“アルティメット・アルティ”や攻撃職の最上級クラスなど様々な最上級クラスが存在する。メイン職は最上級クラスになれないがサブ職に一つでも最上級クラスや上級職があるだけで大いに戦闘は変わってくる。だがしかし、そんな戦闘を変える最上級クラスを持つ者はプレイヤーに片手ほどしかいない。その片手ほどしかいない所持者の1人が『ブラックローズ』のユーリだ。


“アルティメット・アルティ”、支援職と呼ばれる“吟遊詩人ぎんゆうしじん”や精霊使い”などの全ての支援職の頂点に立つ最上級クラス。この職につくとありとあらゆるレベルの高い支援のスキルや魔法が使える。プレイヤー(アバターの体質にもよるが)によっては全ての支援職の支援スキルや魔法が使える。


それにユーリはクスリと笑うと背を預けるように立つナオに言った。


「なおみんもでしょー?“ヒーロー”持ちのウチの友達あいぼうさんっ!」


“ヒーロー”、攻撃職と呼ばれる“戦士”や“竜使い”などの全ての攻撃職の頂点に立つ最上級クラス。この職につくとその職限定のスキルを習得でき、全職最高の攻撃力を得ることが出来る。


最上級クラスの職の所持者が2人のいる『ブラックローズ』なのだ。

2人は残りの魔物に向かって足に力を入れる。


攻撃力上昇パワーアップ


ズゥゥン!!と2人を黄色とオレンジの光が包み、名の通り、攻撃力が上がる。

魔物が一斉に2人に襲いかかる。


「でやぁぁ!!」

「はぁぁ!!」


ナオの大剣が2体の魔物を薙ぎ払い、倒す。

ユーリの2本の刀が2体の魔物を切り刻み、倒す。2人は次々と魔物を倒す。ものの数分で魔物は全て、消えてしまった。


「倒したか?」

「うん、全部!」


2人は武器をしまい、笑ってハイタッチを交わす。そしてまた、道を歩き出す。


「ねぇねぇなおみん!次の休憩で回復いるよね?ケガしてなかったけど一応!」

「うんまぁ、お願いするよ。ていうかいつも思うんだがユーリは回復職持っていたか?アイテムじゃないじゃないか使うのは」


それにユーリはナオの前に躍り出るとえっへん!と胸を張り、右手で拳を作り、ドンッ!と左胸を叩いた。


「聞いて驚け!ウチのサブ職、“アルティメット・アルティ”には微弱ながら回復魔法があるのだ!!」

「……マジか」

「うん!“吟遊詩人”と“精霊使い”が回復魔法使えるんだ!ホントにHPヒットポイントが50くらいしか回復しない微弱なやつだけどね。少しくらいでも回復するならいいでしょ?なおみん、スキルとアイテムでしか回復出来ないでしょ?」


それにナオはまぁと頷くとユーリの横を通り、歩く。


「よろしく頼むよ。あと5km歩いたら」

「分かった!!てかえーーーー?!!5km?!長いよなおみん!!」


ユーリがナオの背中に向かって「イヤだー!!」と文句を叫びながらナオを追いかける。その文句にナオはクスリと笑った。

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