八十二の曲〜黒騎士と不完全とエースの話〜
ユーリが目を開けると四方八方が黒に覆われた空間が広がっていた。その空間にナオがご自慢の大剣片手に立っていた。
「ナオ!」
ユーリが嬉しそうに名を叫ぶと彼女は穏やかに微笑むと言った。
「君の願い事は全て叶えられた。もう、幸せになっていいんだよ」
「?」
ナオの視線に後ろを向くと彼女によく似た少女が悲しげな表情でナオに向かって手を伸ばしていた。
「なんで…そんな事言うの?私は…私の願いは…友達が居ることなのにっ!」
少女…ナオの話から予測するに彼女がエディンであろう。彼女が叫んだと同時にナオはガラスの破片のようにパリンッッ!と割れて散った。
「ナオ?!」
ナオが消えると彼女も消えた。一瞬、血迷ったような瞳をしていたのは気のせいか。
再び、真っ暗な所で独りになったユーリ。と今度は背後からシクシクと泣く声が聞こえた。ユーリはゆっくりと泣いている主に近づく。
「どうしたの?」
「みんなが遊んでくれないの…いっつも笑っててウザいって…!」
「っ!」
過去の自分か。ユーリは直感で分かった。
ヒトの感情が分からなかったユーリは遊んでいると彼女は周りに合わせようと笑っていた。が笑顔がウザいなど、と言われ、いつも裏切られては独りばっちだった。その頃だった。ナオと出会ったのは。
ユーリは自分の過去であろう子の背に手を置き、言った。
「大丈夫、君にはかけがえのない友達が出来るから」
「…ホント?」
そして告げる。彼女にもらった言葉を言う。
「“全部吐き出していいんだよ。嫌いになんてならないから。大丈夫、無理に笑わなくていい。俺も一緒に」
「背負うから”」
その声と共にユーリの視界が誰かによって塞がれる。ユーリには分かっていた。この声も、この言葉を贈ってくれた友達も。
「ナオ…」
「ユーリ」
『私』が欲しかった言葉をくれた黒騎士。
ナオは後ろからユーリの視界を塞ぎながら言う。
「犠牲とか関係ない。友達であるからこそ、言葉は通じる。だから『白い』お前に頼みたい。不吉な『黒い』俺じゃ出来ないから」
「……こんな「力」を持つウチでもいいの?ナオの力になれるの?」
「なれるから、だから、大丈夫」
ツゥ…とユーリの頬を何かが伝った。
こんな「力」を持つオレでも君の役になれるのなら、いいだろう。盛大に語ってみせましょう。怒りと憎しみと復讐と…全ての“感情”を持って【語り部】として、【闇の戦士】としてこの舞台で
「歌って、歌って…奏でるんだ。平和を求む少年…俺を祈る姫の家族へ」
「嗚呼、その役目、引き受けましょう。黒騎士様」
君を守る。
ユーリはナオの願い事に答えると粒子となって消えた。そこに残ったのはドレス姿になりつつあるナオと“霧”のみ。
ナオは“霧”に向かって言った。
「俺はこれでもユーリのことはわかってるつもりだぜ?こんな、完全前に呼ぶだなんて、無茶ぶりすぎやしないか?」
それに“霧”は言う。
『あいつはやってくれる。それにはお前さんの言葉、命令が必要だっただけ。今頃、完全な【身代わり姫】となってるんだろう?』
「わかってるじゃないか。まぁ、期待してもいいかな…ねぇ…****」
ナオは暗い空間を仰ぐとこちらも粒子となって消えた。残った“霧”は今まで見えなかった足を暗い空間につくと両手を前にかざす。とそこに儚い光を放って刀が現れる。
『…どうか、止めておくれ。【光】、【闇】、【姫】、【復讐者】、【魔女】、【処刑人】、【霧中者】、【狂信者】、【血傷双子】…』
その刀を持ち、言う。
『………あのーーーー』
2日くらい投稿していなかったので。




