六十二の曲〜とどまることを誰が示すか〜
「何それ?ボク、知らなーい」
「俺も知らんな」
「僕も…言葉は聞いたことあるけど知らない」
「「え」」
3人の発言に2人は耳を疑った。知っていると思っていた。だって神様が言った言葉だし。しかし3人共…知らない?ヴァルムは言葉は聞いたことあるようだが有力な手掛かりにはならないだろう。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「気になったからー!」
ユーリが元気に答える。
「ヴァルム。お前は“言葉は聞いたことある”と言っていたよな?何処で?」
「何処って…姉さんが毎日歌ってる歌の歌詞にあっただけ」
「ふーん」
ナオはやはり、わからないか、とちょっと落胆した。
あのカミサマが自分達を連れてきた理由のもう一つだと思っていたが…わからないのならいいか。
「ナオは無理すんなよ?」
ソラリスが言った。ナオがそれに答える暇を与えず、ユーリとルルがナオを休ませようと奮闘したのは言うまでもない。
***
「♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜」
嗚呼、誰かの歌声がする。
もう、騙すのは…
「疲れたかな…」
***
誰もいなくなった塔の中。響くのは悲しげな歌声。
「♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜」
ーガララ!ー
歌声が響くたびに壁が何かによって斬りつけられ、ガラガラと崩れ落ちる。
歌声の主は真っ赤に染まったドレスと長い髪を引きずり、両手を組みながら歩く。その容姿は血がついていても美しい。
「♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜……アハハ…許サナイ…貴方ハ…絶対二…許サナイ…」
歌声の主の瞳には何も宿っていないようだった。
歌声の主は憎しみを滲ませた声を響かせる。
「貴方ハ…私カラ…奪ッタ……大切ナ、大好キナ……アノコを…!……私ハ……取リ戻スワ…アノコヲ……ネェ……カミサマ…?アハハハハハ!!!」
ピシリと鏡にヒビが入った。
***
一行はナオを心配しながらも先へ進むことにした。黒幕も、神様の目的もわからない以上、進むことしかできない。
一行はある村に立ち寄った。古びた、大きな教会が旅人の目を引く街だ。
「大っきいねー!」
「おいくらかな…」
「ユーリ、考えるとこ違う」
そんなこんなで一行は宿を探すため教会を後にした。
進めますよー!




