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五の曲〜夜襲と謎の月明かり〜

真っ暗な夜に輝く星と月の元、魔物を大量に引き連れた者達がニィと口元を歪めて嗤う。



「さあさ」

「今夜もまた始めましょう」

「我らが仕えし」

「偉大なる」

「「次期魔王候補者及び魔王軍第六部隊隊長、『****』様のために」」


***


ねぇ、なんで無視するの?


「こっちこないで」


なんで?


「ウザいから」


なんで?ずっと友達だって…


「うるさい!」


ーーーーーなんで?ねぇ……友達じゃなかったの?ねぇ……


『ーーーおーーーんーー』


ねぇ……嘘つきは誰なの?ねぇ…


『ーーーーなーーーーみーーー』


ねぇ…答えてよ!!


「なおみん!!!」

「!!!」


真っ暗な闇の中からナオはユーリの声で呼び覚まされた。ナオはベットから飛び起き、冷や汗を垂らす。


今、自分は何を思い出していた?あんな思い出……いらないのに!!


「なおみん大丈夫?うなされてたよ」


ユーリが心配そうにナオを覗き込む。ナオはユーリに言われ、額に感じるモノに触れる。汗だ。大量の汗。その汗がどれくらいナオがうなされていたかを物語っている。


「嗚呼…大丈夫。ところでどうした?」


汗を拭き取り、先ほどのアレを忘れるようにユーリに問いかける。ユーリは心配そうにナオを見ながら窓を指差した。


「外の様子がおかしいの。宿のおじいちゃんは夜静かだよって言ってたのに」


ユーリが言う。とても不安そうだ。ナオはベットから降り、窓からそっと外を伺った。


「?!」

「え?!何?!どうしたの?!」


ユーリがナオが驚き、窓から飛び退いたのでどうしたとテンパったように両腕を上下にブンブンと動かす。


「……ユーリ!武器持って身支度整えろ!」


ガッと部屋の真ん中に置かれたソファから自身の大剣とマント、そしてベルトを持ち上げ、準備する。そして仕上げにポーチからリボンを取り出し、ポニーテールに結べば完璧だ。武装準備が完了したナオ。ジャラリと『ブラックローズ』を示す我らが紋章が揺れる。


「え?なんで?!」


ユーリが呆然としながらもナオの指示に従い、ソファから自身の刀2本とマフラー、ベルトを持ち上げ、準備する。右手首に巻いたシュシュで髪を結びお団子にする。ユーリも武装準備完了だ。

大剣を構えながらナオは深呼吸を数度繰り返すと扉をダンッ!と蹴って開けた。それにユーリが「え?!」と再び驚く。


「なおみん何してるの?!てかどうしたの?!ねぇ!」


ナオはユーリの問いに答えず、部屋から顔だけを出して左右を確認する。と首を引っ込め、ユーリを振り返って言った。真剣な顔付きで少し焦ったような声色で言った。


「魔物の襲撃」


それに血の気が引くのを感じた。


***


「キャアアアア!!!」

「おい!妻は?!妻はどこだ?!」

「助けてぇえええええ!!!」

「ママぁぁパパぁぁどこぉお!!」


外に出るとそこらじゅうで炎と黒い煙が上がっていた。女、男、老人、子供と様々な村人達の悲鳴が夜に響いていた。魔物が村人を喰い殺し、潰し殺し、絞め殺している。地面には血だまりと死体が広がっている。プンプンとここまで死臭が流れてくる。

ナオは鼻を左腕で押さえる。


「酷いな…」

「う……うぇえええ!!」


残酷な光景にユーリは吐き気を抑えられず出してしまった。それにナオがユーリの背をさする。


「大丈夫か?」

「うえ…なんとか…ヤバイ、見るのは魔物の残骸だけでいいのに…うぇえええ!」


魔物の残骸は何回もゲームでも裏側ここでもある程度がんばって見てきた。が人の死体は…ドラマで見たとしても本物はキツイ。


「大丈夫かい?」

「あ、宿のおじさん」


ナオがユーリの背をさすっていると宿のおじいさんがやって来た。おじいさんは無事のようで元気な姿だ。ナオの代わりにとユーリの背を優しく、ゆっくりとさすり出す。


「うう…すいません……人がこんなんになるなんて……気持ち悪い…」

「大丈夫大丈夫。お前さんは『冒険者』、強い子だ。打ち勝つんだよ。世界は混沌に、残酷に満ちている…」


さするおじいさん。少しずつ、いつも通りに戻っていくユーリ。ナオも気持ち悪かったのだがおじいさんの言葉で落ち着いて来た。


「ふぅ…はぁ…ありがとうございます、おじいちゃん!ウチ、落ち着きました!」

「いいんだよ…一つ、頼まれてくれないかい?」


ユーリが笑っておじいさんにお礼を言うとおじいさんは2人にお願いした。2人はえ?と首を傾げる。


「今、生き残っている村人は全員、ワシの孫達が誘導し、避難させた。これ以上、被害が出ぬように魔物を始末してもらってもよいかな?」


今度はおじいさんが首を傾げて問う番だった。生き残りを避難させたおじいさんの孫達もすごいがそんなことを自分達に頼む彼もすごい。

2人はキョトンとし、顔を見合わせた。


「俺達が…ですか?」

「嗚呼、倒してくれないかい?『冒険者』のお嬢さん方。お嬢さん方は最強だ」


おじいさんがニッコリと笑って2人の頭を撫でる。

俯いていたユーリがポツリと呟く。


「やる」

「ユーリ?」

「村をこんなんにしたんだよ?許せない!……こんなことが裏側ここでもゲームでも起こってるんだよ?今ウチにそれを止める力が、原因を止める力があるならウチはそれを最大限に使って助けたいの。助けられなかった人達の分も」


真剣な瞳で、強い眼差しで、強い意志で強く言うユーリ。それにナオも同じ思いで頷く。やれることなら最大限にやってやろうじゃないか!自分の意志のままに、本能のままに!


「やる。やるよ、おじさん。俺達に任せて早く逃げてくれ」


『冒険者』の意気込みに、その意志の強さにおじいさんはうんと頷き、ポン、ポンと2人の頭を順番に叩いて自らも避難する。


春嵐六花はるあらしろっか雪凍ゆきとう!」


おじいさんがいなくなったのを確認し、ナオは構えた大剣に雪をまとわせた。そしてブンッ!と大剣を振った。大剣にまとっている雪は家々の炎を凍らせ、魔物も数体凍らせ、パリンッと音を出して倒す。ギロッと魔物の目が2人を夜の中、射抜く。凍った炎がランプ代わりとなって2人と魔物を照らす。

数十体もの魔物が2人を狙う。


「行けるかユーリ?」


背中を合わせてナオがユーリに問う。大剣の柄を握り締めるナオ。ユーリはクスリとその質問に微笑し、2本の刀を抜き放つ。


「任せてよなおみん…いーや、ナオ!」


その答えにナオも微笑する。と戦闘態勢に入る。足に力を入れ、準備は満タンだ。


「行くぜユーリ!」

「OK、ナオ!」


2人は飛び出して来た数十体の魔物に向かって切りかかった。

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