五十六の曲〜鏡の世界の塔〜
遅くなりましたすいません。
スランプ気味です…展開は思いついているのにぃいいい!!!
「でやぁい!」
変な声をあげてユーリは石畳みの床に着地した。ユーリが背後を振り返ると鏡の表面が歪み、向こうにいるみんなが見えなくなり、自分が入って来た入口は壁と同化してしまった。
此処は鏡の中。だが何処だかは分からない。四方八方が石畳みなので何処かの建物だろう。ユーリは冷たい石畳みの壁を手で触りながら暗く長い廊下を歩く。
「よし!」
ユーリは突然、大きく深呼吸をすると大声で叫んだ。
「ナオぉおおおおおおおお!!!!!」
ナオを助けにヴァルムの城へ行った時のように叫ぶが石畳みの廊下に彼女の声がこだましているだけだ。ユーリは仕方なく、歩き出した、その時
「グァアアアアアアアアアア!!!!」
「?!」
その不気味な雄叫びと共に天井から(上が高すぎて見えないが)数体の魔物が落ちて来た。大きな熊の魔物とそれに付き従う熊よりも一回り小さい兎の魔物が数体。ユーリが一人で倒すのは苦しい数だ。
「なんで?!えええ?!メンドクサー!!」
ユーリは嫌そうに叫び、2本の刀を持った。そして群れの中に走り込むと兎の魔物を一体倒す。すると熊の魔物が爪を振り上げる。ユーリは熊の魔物の足の間に入り込み、右足を斬りつけながら移動。そのまま残った兎の魔物達に向かってスキルを放つ。
「回転大斬り!」
グルグルと回って2本の刀を使用して兎の魔物達全てを倒すと動きの遅い熊の魔物がやっとこちらを向いた。ユーリは回った反動で酔っ払ったおっさんみたいな千鳥足のまま、魔物に刀を向ける。魔物は隙あり!とユーリに猛突進する。
「うぐっ?!」
ユーリは受け身もまともに取れずに硬い壁に背中をぶつけた。ユーリは壁を使って立ち上がるとしっかりと2本の刀を構える。魔物と対峙し、ユーリは駆け出すと大きく跳躍する。魔物も大きく爪を振り上げる。
「でやぁあああああ!!!」
「グァアアアアアア!!」
ーードサッと魔物が倒れた。
ユーリはプルプルと顔を振って返り血を払うと刀を手にしたまま、何処までも続く廊下を走り出した。
仲間を、友を探してーー
「ーーーーーーーー」
***
「黒幕って、誰なんだろうね」
唐突にルルがユーリが入って行ってしまった鏡の表面を軽く突っつきながら言った。
「ルル?」
「だってそうじゃん?ユーリが言う通りに黒幕がいるんだとしたらそれは誰?カミサマ?だったらなにが目的なの?」
ルルの問いにヴァルムが考え込む。
その通りだ。もし仮に神が黒幕だとしたら目的は?自分を救うこと?明らかに可笑しい。あの神が何故、異世界の彼女達を使ってまで行うというのだ。
「…もしかして、ナオとユーリが来るのは不可抗力で別の目的なんじゃ?」
ソラリスが発言する。
ヴァルムを救うために2人は呼ばれた。黒幕だってそこまでは予想しないだろう。つまり、2人は不可抗力。だとしても目的は分からない。
「……何処からがそうなんだよ…!何処から僕達は黒幕?に踊らされて!」
ヴァルムが叫ぶ。考えたって分からないものは分からないのだ。と、ルルが2人の方へ顔を向け、言った。
「黒幕なんていないかも」
「どういうことだ?ルル」
「元々、黒幕が存在すらしないって可能性だよ。ユーリは“ナオが倒れたのは黒幕が原因だと思う”って断言はしてない。仮定だよ?ユーリが黒幕と思ってしまうほどの何かを感じ取ったのかもしれない、ナオが何かに気づいて鏡の中に入ったのかもしれない…そういう可能性だってあるんじゃない?」
ルルの仮説にヴァルムはうーんと腕を組みながら言った。
「結局、謎は深まるばかりだな…」
「黒幕かどうかは知らんが、ナオとユーリを連れて来、ヴァルムの復讐相手であるカミサマが何か知ってそうだがな」
謎は深まるばかりで、闇の底が見当たらない。黒幕なんて存在しないかもしれないし、存在するかもしれない。真実も、嘘も、全部まだ、姿を現さない。まだ、ピースが揃っていないと言って現れない。いや、ピースでもないかもしれない。
謎の共通点は……【神様】?




