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四十八の曲〜君に向けて勝利宣言を〜



『此処にいたのか』

「…嗚呼、貴女か。どう、したの?」

『今日の“唄”に来なかったから心配してたんだ』

「あ、ごめんね。コレ、造ってて」

『ふーん…そう』

「気に、ならないの?」

『別に。君が造ってくれるモノだ。この世界にとってイイモノなんだろう?』

「…うん」

『ありがとう、さすが俺の****』


***


「?!」


ナオは飛び起きた。また、夢を見た。何を見たかも覚えていないがなぜか懐かしい感じがすることだけは覚えている。


「ナオ?どうした?」


その声に横を見るとヴァルムが心配そうに彼女を見ていた。近くの木の幹に背を預け、その腕の中には彼の剣がある。ヴァルムは見張りの役で起きていた。まだ、夜は明けていない。


ヴァルムはあの後、一応2人に謝った。それからは順調だったと思う。ヴァルム自身がルルやソラリスのように過去を話し出した。ナオはもちろんユーリも驚いたがそれよりも一番敵対していたルルがまた泣き出したことには彼自身も驚いた。それがきっかけで少しずつヴァルムは『ブラックローズ』に馴染んで行った。

だが、この世界の住人である彼らも知っての通り、『カミサマ』と『魔王』は倒してはいけない。


「ヴァルムの復讐は成功しない」


そう、一度ソラリスがキツイ表情で言ったのをナオは記憶している。その時、ヴァルムは彼と同じように怒りを露わにしたことがあった。以前のユーリのような早口でヴァルムは自分より背の高いソラリスの胸倉を掴んで言った。


「時期にわかる」


と。


それはナオにとって不思議だった。なんで時期なんだ、今じゃないのか。

分かればいいか。

ナオは考えることを諦めた。


「嗚呼、大丈夫だ」


ナオはそうヴァルムに答え、もう一度横になった。そして瞳を閉じる。瞳を閉じるといつものように意識が飛ぶ。何処に飛ぶのかは分かっている。自分が誰かも分かっている。

そう、瞳を開ければ、そこはーーーー


***


「………寝た…かな?」


ヴァルムは静かな寝息を立てて寝始めたナオを確認して、剣を地面に置いた。剣には以前までまとわっていた瘴気はない。自分でもよくわからないが消えていた。『あの歌』を歌った頃くらいに。


ヴァルムはユーリから分けてもらった腰のポーチからたくさんのガラスの、粉々になった破片を取り出す。ちなみにポーチは普通のでユーリの予備である。

ガラスの破片は何個か組合せが終わっているがまだまだ先は長い。ヴァルムは一つ一つ、丁寧に組み合わせて行く。


これらは全てナオが壊したモノだ。たまたま、ヴァルムがナオが何かを粉々に壊しているのを目撃したのだ。壊した時、ナオはとても悲しそうだった。ナオは粉々になった破片を名残惜しそうに、悲しそうに眺め、そこを後にしたのだ。ヴァルムはそれがナオにとって大切なものだと思った。だからその全ての破片を集め、作り直そうとしているのだ。せめて、自分ができることから、と。


「…なんだったんだろ、これ」


先が見えないパズル。だがヴァルムはゆっくりとその止まっていた手元を動かし始めた。

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